私大の授業料は高いのに…国の補助率10%割る!

今春お子さんを私立大学に進学させたご家庭では、授業料をはじめとした初年度納付金の高さに、改めてため息をついているころかもしれません。国公立ではないのだから当たり前だ……と思うかもしれませんが、本当にこのままでよいのでしょうか。

「速やかに2分の1」のはずが…

文部科学省が所管する日本私立学校振興・共済事業団(私学事業団)の最新調査結果が、私学関係者に衝撃を与えています。私立大学等の経常的経費に対する国からの補助金(経常費補助)の割合が、10%を下回ったからです。

1975(昭和50)年に制定された私学振興助成法には、私立大学等の経常的経費を2分の1まで補助できることが定められています。当時、参議院文教委員会では「できるだけ速やかに」2分の1とするよう求める付帯決議を行っています。

経常費補助金制度が創設された1970(昭和45)年度に7.2%で始まった補助割合は、10年後の80(同55)年度には29.5%にまで順調に上昇していったのですが、その後は予算上の制約から下降に転じ、1990年代からは10%台そこそこで低迷しながらも、じわじわと減り続け、2014(平成26)年度は10.1%に落ち込んでいました。それが2015(平成27)年度、ついに9.9%となりました。

私立大学の収入は、4分の3以上を学生からの納付金に頼っています。しかも支出は、人件費が半数を超えています。グローバル化やイノベーション(技術革新)への対応をはじめ、日本の大学がますます高度な大卒人材を社会に輩出するには、教育を充実させることが急務であり、教育の充実はほとんど教員に掛かっていると言っても過言ではありません。教育中心の大学は、研究大学のように、外部機関から研究費を引っ張ってくることも困難です。国の助成が期待できないとなると、ますます学生納付金に頼らざるを得なくなります。

文科省の調査によると、2014(平成26)年度の私立大学の初年度納付金は、前年度比0.1%減の131万1,644円でした。入学金を1.3%下げる一方、授業料は0.5%増で、3年連続の上昇です。今後も授業料は上がりこそすれ、下がることは期待できないでしょう。

「数が多すぎる」「行かなくてよい」で済むのか

補助割合が増えない要因は、第1には国の予算が増えないからですが、第2には、大学の数が増えていることもあります。ただ、短大も含めれば総数は減少していますから、「大学の数が多すぎるからだ」と単純に言うことはできません。今後の大学の規模をどうするかは、中央教育審議会で12年ぶりに議論が始まったところですが、今後の日本の発展のために大卒人材がどれくらい必要で、大学の適正規模についてどう考えればよいのか、改めて検討すべきでしょう。

何より「大学になど行かなくても、働けばよい」という時代ではありません。高卒就職市場は2000年ごろから急速に縮小し、それが大学進学率を押し上げた側面もあります。大学の数を減らせばよいという単純な問題ではありません。

もちろん、定員割れの私立大学が44.5%になるなど、規模にも課題があることは確かです。ただ、地方創生が叫ばれるなか、単に定員割れが多い地方の大学から潰していくだけではいけません。国の財政が厳しいことは確かですが、大学生の70%以上を育てている私立大学の教育を充実させるにも、財政基盤の安定は急務です。

※私学事業団「私立大学等経常費補助金交付状況の概要」(2016年度)
http://www.shigaku.go.jp/files/s_hojo_h28.pdf

※私学のデータ(私学事業団ホームページ)
http://www.shigaku.go.jp/files/gakkousutou28.pdf

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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