“男でも女でもない私” 語り始めた「Xジェンダー」
自分のことを男とも女とも思えない。または、男でも女でもあると思う。心の性が男にも女にもあてはまらない”Xジェンダー”と呼ばれる人たちがいます。LGBTの中でも、これまでほとんど知られることがなかったXジェンダー。当事者たちが自分たちの思いを語り始めました。
ごらんの”女性”、27歳の時の結婚式の写真です。満面の笑顔。しかしこの時、自分が女性らしくふるまうことに生きづらさを感じていました。この人は丸山真由子さん(33)。心の性別が女でも男でもない、Xジェンダーです。
女にも違和感 男にも違和感
ごらんの”女性”、27歳の時の結婚式の写真です。満面の笑顔。しかしこの時、自分が女性らしくふるまうことに生きづらさを感じていました。この人は丸山真由子さん(33)。心の性別が女でも男でもない、Xジェンダーです。
現在の丸山さんです。髪を短く切り、Xジェンダーの人たちが集まる交流会を始めました。これまでの人生は男女という性別で分けられることへのつらさとの戦いだったと言います。
女の子になれなかった
女性の身体で生まれた丸山さん。取材に語ってくれたこれまでのエピソードです。
七五三の時。口紅をつけて化粧をされることが嫌でたまらなかった。小学生のころ、男の子ができるなら、自分も立って用を足すことができるはずだと考えて家のトイレで立って排尿してみたが、できなくて不思議だった。社会人になると、周りから「女性ならば色気を出さなきゃ。キャバクラで働いてみなよ」と言われ、フルメイクで店で働いてみた。
すると、いくら見た目は完璧にしても、周りの女性と同じようにはなれないと感じ、息苦しく、どうきも激しくなった。この頃、つらくてリストカットをしたこともある。
丸山さんは、幼い頃からこれまでを振り返り「『女性らしく』するのは義務だと思っていた。一生懸命、女性を演じていたにすぎなかった」と言います。
七五三の時。口紅をつけて化粧をされることが嫌でたまらなかった。小学生のころ、男の子ができるなら、自分も立って用を足すことができるはずだと考えて家のトイレで立って排尿してみたが、できなくて不思議だった。社会人になると、周りから「女性ならば色気を出さなきゃ。キャバクラで働いてみなよ」と言われ、フルメイクで店で働いてみた。
すると、いくら見た目は完璧にしても、周りの女性と同じようにはなれないと感じ、息苦しく、どうきも激しくなった。この頃、つらくてリストカットをしたこともある。
丸山さんは、幼い頃からこれまでを振り返り「『女性らしく』するのは義務だと思っていた。一生懸命、女性を演じていたにすぎなかった」と言います。
しかし、男でもない…
では、心が男性かというと、そうでもないのです。思い出すと女の子が皆持っていた赤いランドセルは、嫌ではなかった。毎月生理が来ると、心が女性に近くなると感じる。そして、そもそも男性になりたいという思いもないのです。
Xジェンダーを知る
丸山さんは、一緒にいて安らぎを感じられたという男性と結婚。しかし、妊娠を機に、性別への違和感を強く意識するようになります。周囲から「妊娠して肌がきれいになった」と言われると、気持ち悪さを感じるようになったり、産後の授乳も、大きくなった胸が自分のものと思えず「胸に哺乳瓶がついているような」違和感を感じたり。
そうした心のモヤモヤが晴れたのは、インターネットで「心の性別 ない」などと検索した時でした。そこで出てきた「Xジェンダー」という言葉。「心が男でもない、女でもない」人たちがいることを知り、自分もそうではないかと思い違和感の正体がはっきりしたというのです。
その時の気持ちを聞くと「Xジェンダーという言葉が自分を救ってくれた。これまで死にたいと考えたことも何度かあったが、生きていて良かったと感じた」と話していました。
その時の気持ちを聞くと「Xジェンダーという言葉が自分を救ってくれた。これまで死にたいと考えたことも何度かあったが、生きていて良かったと感じた」と話していました。
カミングアウト そして
自分がXジェンダーとわかった丸山さん。去年1月、信頼する夫に、「自分は女でも男でもない」とカミングアウトします。離婚を覚悟していた丸山さんに夫は、「あなたらしくていいじゃない。ニュートラルなところがいいなと思って結婚したから」と言ってくれたそうです。
母親に真実を伝えたのもこのころでした。最初は「一時の気の迷いよ」と言っていたそうですが、今は「男だから、女だからではなく、人間としてみんなが生きられたらいいね」と言ってくれるようになりました。そして丸山さんは、Xジェンダーの当事者を集め、交流会を開くようになりました。
母親に真実を伝えたのもこのころでした。最初は「一時の気の迷いよ」と言っていたそうですが、今は「男だから、女だからではなく、人間としてみんなが生きられたらいいね」と言ってくれるようになりました。そして丸山さんは、Xジェンダーの当事者を集め、交流会を開くようになりました。
始まった交流会
先月の交流会に行くと丸山さんを含めて5人のXジェンダーの人が集まっていました。いずれも体の性別は女性ですが、心の性別について聞くと「男女どちらでもない」「性別の概念自体が受け入れられない」といった答えが返ってきました。
本田さん(仮名・30代)は、「昔から自分が女性に見られるのが不思議だった。思春期の体の変化が嫌で、男性になりたいのかと考えた時期もあったが、想像するとそれも違和感がある。『Xジェンダー』が一番しっくりくる」といいます。
また、ユズキさん(仮名)は、「昔から性別の意識がなかった。自分は人と違うと思ったが、どう違うかはわからず、自信が持てないまま育った」と話していました。
集まった人たちに共通していたのは、「男」「女」に当てはめられること、さらに「その性別らしさ」を求められることに違和感や苦しさを感じ、それを人に言えないまま生きてきたことでした。
本田さん(仮名・30代)は、「昔から自分が女性に見られるのが不思議だった。思春期の体の変化が嫌で、男性になりたいのかと考えた時期もあったが、想像するとそれも違和感がある。『Xジェンダー』が一番しっくりくる」といいます。
また、ユズキさん(仮名)は、「昔から性別の意識がなかった。自分は人と違うと思ったが、どう違うかはわからず、自信が持てないまま育った」と話していました。
集まった人たちに共通していたのは、「男」「女」に当てはめられること、さらに「その性別らしさ」を求められることに違和感や苦しさを感じ、それを人に言えないまま生きてきたことでした。
誰もが自分らしく生きられる社会を
今回、丸山さんは実名で写真を載せることも承諾して取材に応じてくれました。その理由を尋ねると「これからは自分にも家族にも誠実でいたいし、自分を偽って生きたくない。そして、自分の存在を通じて『Xジェンダー』のことを知ってほしいから」と答えてくれました。
世間で「当たり前」とされていることから外れると、つらい目に遭うことも多いのがいまの社会です。丸山さんもかつては周囲に求められるまま、「女性」として振る舞ってきました。しかし今は、自分に正直に生き、次の世代のためにも社会を変えていかなければという強い思いがあります。
「性には多様性があり、男女2つにはわけられないことを知ってほしい。いずれは性別のカテゴリーがなくなるくらい、誰もが自分にとって自然な形で生きられるような社会になってほしい」。
取材の中で、丸山さんがそう語ってくれた言葉が心に響きました。
世間で「当たり前」とされていることから外れると、つらい目に遭うことも多いのがいまの社会です。丸山さんもかつては周囲に求められるまま、「女性」として振る舞ってきました。しかし今は、自分に正直に生き、次の世代のためにも社会を変えていかなければという強い思いがあります。
「性には多様性があり、男女2つにはわけられないことを知ってほしい。いずれは性別のカテゴリーがなくなるくらい、誰もが自分にとって自然な形で生きられるような社会になってほしい」。
取材の中で、丸山さんがそう語ってくれた言葉が心に響きました。