| プリズンホテル(1) ~夏~ |
プリズンホテル(2 ) ~秋~ |
プリズンホテル(3) ~冬~ |
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プリズンホテルはヤクザが唯一、心の底からくつろぐ事が出来るホテルを舞台にした物語。そのホテルは、ヤクザたちによって経営され、どんなワケアリの人物であっても来るもの拒まずのモットーでおもてなしをする珍妙なホテル。
ヤクザと言っても暴力的なところではなく、義理と人情を大事にし、何より筋を通すことに重きを置くヤクザ達。ホテルの注意書きには「不慮のガサイレ・カチコミの際には当館係員の指示に従って下さい」「客室のドアは鉄板、窓には防弾ガラスを使用しておりますので、安心してお休み下さい」等。
そして不器用でどこか時代がかった接客。「いったんゲソつけられたお客人は身内も同然。誠心誠意、命がけで尽くさせていただきやす」には思わずクスリ( ̄∇ ̄+)
キャラクターで面白いのは、従業員のヤクザたちばかりではない。仲居はフィリピーナ。
オーナー(親分)の甥で極道小説を書いている偏屈な小説化、有名ホテルたらい回しにされた支配人、職人気質の料理長、天才といわれるシェフ・・・その他来るもの拒まず』を貫いた結果、本当にワケアリな客ばかりが集まってしまい・・・☆
浅田次郎作品を知らない人でも納得の一冊。
続きは秋へ~
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前作に登場した主要キャラクターはもちろん今回も活躍し、それぞれの持ち味を発揮している。
なんといっても、この小説のいいところは、リアル、日常生活では、目上にあたる人であったり、地位が上だったりする人に対して、目下の人や社会的地位が低位に位置する人が活躍し評価を上げている点が、無礼講などない現実世界に浸った私たちは決して惹かれる部分なんだと思う。そして、前作にひき続き、そこが面白い。
今回も前回同様ストーリーは複数の宿泊客による事件を同時進行させて展開している。警察団体ご一行様、木戸先生ご一行、集金強盗、落ちぶれたアイドルとマネージャー。そしてオーナーと大御所女優。それぞれが微妙に交錯しながら話が進んでいく・・・。
警察団体ご一行様がヤクザの経営しているホテルにご宿泊?!これだけでも、何が起こるかとワクワクドキドキ♪ドタバタ騒ぎだけかと思えば、万年、巡査部長という老刑事がヤクザのドンと知り合いで酒を飲みかわす仲だったり、老刑事の定年の最後に大仕事を華々しく決めたり・・・。
浅田次郎が書く粋な人達
まだ2冊(冬・春)もあるよ♪
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ふとしたことから人里離れた山奥の【奥湯元あじさいホテル】に宿泊する というくだりからこの物語は始まる。このホテルは、仁義だの堅気だの極道だのといった言葉を使うコワい人たちが経営しており、別名プリズンホテルと呼ばれている。が、従業員たちは誠心誠意もてなししてくれる。
今回のテーマは【愛】かな。親の愛に気づかない子供、女性を愛することを畏れる小説家、自分の気持ちに素直になれない看護婦、山を愛してしまった男。そんな人達がプリズンホテルへと足を踏み入れ、自分の人生と向き合う。どんなネガティブな感情をも受け入れてくれる、そんな懐の深さに心が癒されるのかもしれない。
1つの巻を読み終えるとすぐに次の巻を読んでしまいたい衝動にかられるが、プリズンホテルが永遠に終わって欲しくないという願望も 。従業員達の心のこもったおもてなしに触れることで、宿泊客の心はじょじょに癒されていく。と同時に、読者の心も癒してしまうというなんとも不思議な感じ。
名残惜しいけど、次が最終巻~(ノ△・。) |
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| プリズンホテル(4) ~春~ |
憑 神 |
霧 笛 荘 夜 話 |
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ついに最終巻になりました(ノω・、)
物凄く楽しみで早く読み進めたい気持ちが7割、これで終わってしまうと思うともったいなくて大事に読もうと思う気持ちが8割。気持ち100%超え。
偏屈小説家、孝之介。今までは恋人や義母に暴言を吐きまくり暴力をふるったり。そんな彼を私は余り好きじゃなかった。でも今回の彼はちょっといいやつ☆
ひねくれた性格ではあるものの、何だかんだで周りの人を愛し、周りからも愛されてるんだな~と。
その孝之介が文壇最高のステータス「日本文芸大賞」にノミネートされた。選考結果をプリズンホテルで待つことにしたのだが・・・・。
懲役五十二年の老博徒や演劇母娘など珍客揃いの温泉宿で、またしても巻き起こる大騒動。
なぜ【夏】から始まり【春】が最後なのか。それは最後迄読めば分かる。情景が目の前に浮かんでき、「だから春が最後なんだ・・・」と思わせてくれる。
何度も何度も読み返して、既にこの本のカバーはボロボロになってしまっている(〃´・ω・`)ゞ
是非夏~春まで大人買いして読んで欲しい♪
お勧め過ぎてお勧め所が言い表せない物語。 |
表紙のイラストからユーモア溢れた人情話!!
・・・と思いきや、まさかの展開。
時は幕末、所は江戸。貧乏御家人の別所彦四郎は、文武に秀でながら出世の道をしくじり、夜鳴き蕎麦一杯の小遣いもままならない。ある夜、酔いにまかせて小さな祠に神頼みをしてみると、霊験あらたかにも神様があらわれた。だが、この神様は、神は神でも、貧乏神だった!なんと祈る稲荷を間違えたことから、彦四郎は貧乏神・疫病神・死神といった災いの神様を呼び寄せてしまう。
とことん運に見放されながらも懸命に生きる男の姿は、抱腹絶倒にして、やがては感涙必至(ノω・、)
私的には、どうしようもやるせなくて、でも主人公があまりにも輝いて見えて、受け入れるしかないんだな・・・と。単純なハッピーエンドじゃないのに、満足感はあり。
映画にもなっているが、やはり活字で読んで、リアルに想像できるのが浅田作品。
笑えて泣けて、泣ける物語。 |
地面を削り込んだ半地下と中途半端な中2階。人目を避け歩けば自然とたどり着く場所。それが霧笛荘。管理人室には灰色のパオを着た纏足の小さな老女。その老女は空いてる部屋を案内してくれる。
~港の見える部屋~ 生きることに疲れ、息を殺して死ぬ方法ばかり考える女。
~鏡のある部屋~ 世間がうらやむ社長夫人。クラス会をきっかけに自分を捨てようとする。
~朝日の当たる部屋~ ヤクザにしたって使い道がない男。いい加減なくせに妙に律儀な男。
~瑠璃色の部屋~ 田舎から上京。バンドで成功することを夢見ている少年と少年を応援してくれた姉の淡い思い出。
~花の咲く部屋~ 自分は、与えられた場所で与えられた水を飲みそれを幸せだと思い咲く花。
~マドロスの部屋~ 既定の未来から突然解放され、生きろと命ぜられた困惑の中、嘘をつき続けるしか生きる手立てのない男。
~ぬくもりの部屋~ 管理人の老女が住む部屋。別に人助けをするんじゃない。人間だったら誰でもすること。
人の幸せ,生きる誠実さ,人としてするべきこと,してはいけないことってなんだろう・・・と思い考える物語。
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| 椿山課長の七日間 |
沙 髙 樓 綺 譚 |
草原からの使者 |
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デパートに勤務する椿山和昭46歳は、初夏の商戦の最中過労により逝ってしまう。現世に未練を残す椿山は姿を変えて7日間だけ現世に戻ることを許された。そんな7日間のお話。
泣かす話だと思って最初は敬遠。でも、お役所的な死後の手続きがユーモアたっぷりで笑える。かと思えば読者を泣かせる場面も豊富に用意されていて申し分のない一冊だった。親が子を思う気持ち、テキヤの親分が子分を思う気持ち、おじいちゃんが皆の幸せを願う気持ち。多彩な登場人物の胸に秘めた想いがたまらなかった。
男も女も生きるって辛くって、正直に、誰かの為に生きるって、もっと辛くって、でもそれをやっている人ってとってもかっこよく…相変わらず「こんな人になりたい」と思う人が沢山でてくる物語。
死んだらどうなるんだろう・・・と不安になる事もあるかもしれないが、この物語を信じてみよう!と思う。きっとそんな訳ないけどそう信じた方が不安も消えるし楽しく思える。
「生んでくれてありがとう」の言葉、泣けた!
毎日を悔いなく!と思わせてくれる物語。
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『沙髙樓』と言う場所で開かれる秘密の会合のお話。
取り仕切るのは女装のオーナー。もちろんこの会は誰でも参加できるわけじゃない。参加者は皆各界の名士たち。中にはわけありそうな方もチラホラ。
この会合では皆胸に抱えている話を披露する。各界の名士ともなると、抱えるものも大きい。
会の掟は簡単。話す人は、嘘や誇張はだめ。あるべきままを語るり、聞く人は、他言無用。必ず胸にしまうこと。
どの話も濃密で不思議で、でも「私の知らないところではこういうことも起こってるんだな・・」なんて事までついつい思ってしまう。美しい日本語の中に、緊張感やリアリティが詰まった一冊。
会合が終わる頃には私も暖炉の前の椅子に腰かけてる気分に。話の深さになんだか気だるい雰囲気をまといながら。素敵な映画を見た後、エンドロールが終わってもなかなか現実に戻れないのと同じような感じかな。
短編集であることを忘れさせる物語。 |
『沙髙樓綺譚』の続編。続き物ではないので、こっちから読んでも大丈夫!
今回も全部で4つの短編小説をあわせたもので、それぞれが一人の話し手によって語られる。だがやはり、そこは浅田作品。バラバラに見える短編小説でも、不思議と小説全体の調和がとれている。
その役割を担っているのが、前作でも出てきた女装のオーナー・小日向君・および小説家である”私”の3人の人物。決して主役にはならないが、ところどころに登場してこの小説に微妙なアクセントをつけている。彼らが居ないとバラバラになってしまう4つの物語も彼らのおかげでみょうな統一感をもたらしている。
表題作の「草原からの使者」ではハイセイコーがダービーに敗れた実話をまじえて”人生とは運だ”と浅田節を披露。競馬と共に生きてきたと自ら公言しているする浅田氏ならでは。
正直な所、前作の方が好き(^▽^;)
人生とは何であるか?を問いかける物語。 |
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| オー・マイ・ガァッ! |
王 妃 の 館 (上) |
王 妃 の 館 (下) |
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ラスベガスのスロットで一攫千金してしまった3人の話。
日本史上最大のお気楽男、ファッション・メーカーの共同経営者にだまされ彼女にも逃げられた正真正銘のバカ、大前剛47歳。元スーパー・キャリア・ウーマン、現ラスベガス・ブールヴァードのコール・ガール、肉体以外のすべてを捨てた梶野理沙32歳。ベトナム戦争末期の鬼軍曹も、いまはただの飲んだくれ、エリートの妻に捨てられたジョン・キングスレイ―が、スロット・マシンで史上最高のジャック・ポットを出してしまった!
登場人物は、謎の老婆に若き石油王、元マフィア父子にヒットマンetc。爆笑のうちに、人生はルーレットのごとく回転していく。
コミカルな展開の中に潜むシリアスな想い。浅田作品に出てくる人物は、どんなに悪人に見えてもページが進むにつれてその人間らしさがにじみ出てきて、いつの間にか好きになってしまうような魅力に溢れている。
話は単純明快、オチも王道だけど、ラスベガスに今すぐ行きたくなるようなリズムのいい一冊。
純粋な小説ではなく、間にエッセイが混じっている。ご都合主義万歳♪
ラスベガス愛がぎっしり詰まった物語。
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この題名、表紙、お堅い話の気がするね。
でも、全然そんな事無い!!倒産寸前の旅行会社が企画した起死回生策で月末の手形決済を乗り切ろうと言う話。
その起死回生策とは・・・パリのヴォージュ広場で300年の伝統を誇る「王妃の館(シャトー・ドゥ・ラ・レーヌ)」は、世界中の観光客あこがれの最高級ホテル。この15室しかないホテルの知名度を利用し、「王妃の館」に滞在するパリ10日間149万8000円の超豪華「〈光(ポジ)〉ツアー」と、19万8000円の格安「〈影(ネガ)〉ツアー」を同時に催行するというものΣ(・ω・ノ)ノ!所謂ツアーの「二重売り」。
ツアーの参加者は、愛人と別れたうえリストラされたOLや人気作家とその担当編集者、心中を目論む老夫婦、フランス人の元恋人を探しに来たゲイバーに勤めるオカマ、カード詐欺師の夫婦などなど個性的な面々。もちろん遭遇する事は許されない光と影のツアーの面々。しかしこれらの登場人物たちは勝手に動き回るようになり予想外の事態に、ツアーの二重売り計画は次々と危機にさらされ、破綻していきツアコンたちを慌てさせる。一体これで、どうやって収拾をつけるのか。
浅田ワールド全開の物語。
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涙と笑いの人生ツアー、ついに決着へ!!
愛人と別れた上リストラされたOL。人気作家とその担当編集者。心中を目論む老夫婦。カード詐欺師の夫婦・・・。ひと癖もふた癖もある「光」と「影」のツアーメンバー達は、ドタバタ騒ぎとニアミスを繰り返しながらも、それぞれのパリ旅行を楽しんでいた。・・・かに見えたが、ついにツアーの二重売りがバレそうになって、さあ大変((((((ノ゚⊿゚)ノ 読んでいる方もハラハラさせられ、読み進むにつれて、ますます物語りに引き込まれていくことになる一冊。
さらに「王妃の館」に秘められた太陽王・ルイ14世の愛の行方へを絡めて、物語は17世紀と現代を縦横無尽に駆け巡る。思いっきり笑って泣いて、ついに感動の大団円☆
ちょっと強引だったりもするけど、登場人物が容易に想像できるので「あ~、アリカモ・・・」なんて思ってしまう。希望の光がともる終わり方で、みんなが前を向いて行く事を予感させてくれる、そんな素敵な終わり方。
何も考えたくない時に読むのがいいかもね。
登場人物が多いけど、すぐに思えられちゃうのも魅力☆
寝不足注意(一気に読めちゃう)の物語。 |
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| 鉄 道 員 |
地下鉄に乗って |
降 霊 会 の 夜 |
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あまりにも有名な短編集。
長編とエッセイでの骨太な手触りはそのままに、繊細な心の動きを緻密に構築してあるとしか思えない。心を揺さぶられる系の話がこれでもか!これでもか!と。生死を感じさせるちょっと切なくてちょっと怖くて、そのうえちょっと優しいお話ばかり。また哀しみから解放されたり、追い詰められた状況から脱することができたり。
短編だけど軽くない味わいの深い、それぞれに種類の違う沢山の感動がギュっ。ふたの付いた小鉢が並んだお膳みたいに次を開くのを楽しみにワクワクしながら読める。読んでいて気持ちがスッキリする。
『うらぼんえ』という短編を読んで、夜中に嗚咽が出るぐらい泣いた記憶がある。・゚゚ '゜(*/□\*) '゜゚゚・。おじいちゃん子・おばあちゃん子の人は絶対にボックスティッシュとゴミ箱は近くに置いて読んで欲しい。
これほどまでに完成された作品達を私は知らない。
感情を捕まえて離さない物語。
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戦後の新興企業の御曹司でありながら、複雑な家庭事情で家を出た男が、地下鉄にのって、自分の父親の生涯に触れる話。
永田町の地下鉄駅の階段を上がると、そこは30年前の風景。ワンマンな父に反発し自殺した兄が現れた。さらに満州に出征する父を目撃し、また戦後闇市で精力的に商いに励む父に出会う。主人公の真次が過去に行き父親と直に接する所は、物語の中心的な部分だけあって読んでいてもっと真次の父親の事を知りたいと思いながらページをめくる手が早くなる。最後に畳み掛けるように次々と話が展開していく。繋がっていく過去と現在。苦しすぎる、せつな過ぎる最後。
話の中身も感動するが、それ以上に当時の東京の街並みなどが想像できて、まるで自分もその場所に立っているかのような気持ちになる。
ココロが大きく揺り動かされる物語。 |
こちらも『ALWAYS三丁目の夕日』や『太陽の季節』を髣髴とさせる小説。
助けた女のお礼で降霊の儀式に導かれた初老の男。死者と生者が語り合う禁忌に魅入られた男が魂の遍歴の末に見たものは……。
心の中に閉じ込めていた過去の忌まわしき自分と向き合い、その結果、自分の勝手な解釈によって、周りの人たちの気持ちを傷つけたことも数多くあったと、気付かされてしまう。罰せられなかった罪ではあるが、それだけに心に重くのしかかってくる事実の数々に気づく。これはそのまま読み手にも当てはまる。いつの間にか自分の事を考えさせられている。
至高の恋愛小説でもあり、一級の戦争文学でもあり、極めつきは現代怪異譚!!
「罪がないとおっしゃるのですか。」「何をいまさら。忘れていたくせに。」は、心に痛い。浅田作品には癒される事が多いが、これは孤独が残る。リアルに。そこがお勧め!!
過去の自分を顧みる物語。
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| 天切り松闇語り(一) ~闇の花道~ |
天切り松闇語り(二) ~残侠~ |
天切り松闇語り(三) ~初湯千両~ |
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警察の捜査協力の引き換えにと、留置所に好き好んで入ってきたひとりの老人。その老人は、大正・昭和・平成と激動の時代を生き抜いた伝説の大泥棒『天きり松』だった。
彼は、華やかな大正ロマンの香る東京に活躍した盗ッ人一家の思い出を、『闇がたり』で小悪党や看守相手に語り始める。六尺四方から先へは届かないという低く抑揚のない夜盗の声音『闇がたり』。その不思議な声音に耳を傾ければ、舞台は留置場から松蔵の子ども時代へ…。
物語は、数えで九つの幼い松蔵が抜弁天の安吉に貰いうけられるところから始まる。
江戸と東京とがせめぎ立つ『大正』という時代を駆け抜けた、粋でいなせな闇の渡世の義賊列伝。天切り松に深く関わった人々の、義理人情と浪花節に溢れた生き様が語られていく。登場人物一人一人が、実に個性豊かで魅力的でカッコいい。大親分の目細の安を筆頭に、振袖おこん、説教寅弥、黄不動の栄治、百面相の常。盗人、スリ、強盗、詐欺のプロフェッショナルが、弱きを助け強きくじき義を欠くヤツをやっつける。下っ端として過ごした少年松蔵の視線からの話なので、見るもの感じるものが真っ直ぐで熱い。
何か物凄く大事な話をしてくれているような物語。
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痛快作に始まって、感動作で結ぶ。
ある日、安吉一家に現れた時代がかった老侠客。
幕末から生き延びた清水一家の小政。御一新以降、どんどん変わっていく世の中の中で、かたくなに江戸時代の仁義を守り通してさすらってきた小政。盗人とは違う、筋の通し方を貫く男の話。そしてその後は、目細の安の身内の話。恋愛話あり、無理難題の話あり、「筋をとおし」ながら、鮮やかに生き抜いていくしたたかな渡世人たちの話が生き生きと書かれている。
そんな中、主人公の松蔵。使いっぱしりのような仕事しか出来ない小僧だから仕方ないのかもしれないが、ただもう兄さん姉さんのやってることをすごいすごいと見るばかり。目細の一家のみんなのかっこよいこと♪♪そんな松蔵の「覚悟」の話が出てくるのが、最終話「春の形見に」。松蔵もよい少年になってきて次が楽しみヽ(*^^*)ノ
つまならい悪事に手を染めた半端な若造たちに聞かせ人生の重みが感じられる天切り松の闇がたり。
真正直な生き方が心に響く物語。。
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1巻、2巻も好きだが、この3巻が一番目細一家の良いところが出てるのでは(*´∇`*)
表題にもなっている「初湯千両」は説教寅こと寅弥の過去が語られ、寅弥の男気が心を打つ。 「共犯者」は書生常こと常次のペテンの技が冴える。 一体何人に変装したのか、親分の安吉の詰問にも答えない常次のプライドがカッコイイ。「宵待草」は振袖おこんと竹久夢二との、まさに夢のような出会い。
「大楠公の太刀」は黄不動の栄治と幼なじみの赤坂の小龍ことお宮の物語。 鴎外こと森林太郎まで登場し、お宮の安らかな最後を栄治が命がけの仕事で見送る。
寅兄の男気っぷり、書生常の飄々とした鮮やかさ、おこん姐のロマンス、黄不動栄治の優しさ、安吉親分の温かさ。
道化の恋文も好きだけど銀次蔭盃には泣かされた。
少しずつ成長する松蔵にも注目☆目細一家の一員らしく、まっつぐなことを言うようになる。
天切り松の3冊目。
ますます脂が乗ってかなり泣ける物語。 |
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| 天切り松闇語り(四) ~昭和侠盗伝~ |
蒼 穹 の 昴 (全4巻) |
珍 妃 の 井 戸 |
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当たり前の事だけど、松蔵が大人になるにしたがって、安吉一家は年をとっていく。とても物寂しく、どれも自然と誰かを思って涙が流れる。
時は昭和。戦争という「巨悪」を仕掛ける「お上」に江戸の矜持を持ち続ける夜盗一味が立ち上る。
この本の登場人物たちは、男も女も何て粋で格好良く、不器用なんだろう。時代は昭和に入ったが、戦争期も本格化する前のモダンな空気が蔓延していて往時の華やかさを偲ばせる。そこに登場する主人公たちの立ち振る舞いもよくよくモダンで垢抜けている。
こういう生き方って本当にかっこいい。けど、誰もがこれほどまでに強く生きる事は出来ない。だから憧れるのか。
・背筋が伸びているか?
・筋は通っているか?
・義理や礼節を軽んじていないか?
・その人なりの矜持はちゃんと持っているか?
などを考え直させてくれる。
背筋が丸まってるなと感じたら、読み返したい物語。
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中国最後の王朝である清の時代。
一見すると登場人物たちがおのれの意志とは無関係に、大きな意思の流れによって突き動かされているかのような印象。そんな中にあってただひとり、李春雲のみが「天命」をただ与えられるのではなく、みずからの手でその天命をつかみとるために行動を起こしている。それは、周りの人物がことごとく「天命」によって縛られているだけに、じつに劇的であり、また特別なものでもある。
どうしようもない貧困のはてに、家族はおろか自身の男としての象徴さえ自らの意思で捨ててしまったひとりの少年が、宮廷や諸外国による醜いまでの権謀術策に翻弄されながらも、なお他人を思いやるという人としてのやさしさを失わず、天下が他ならぬ人の力に託されていく――そのダイナミズムを、ぜひとも。
が、読み始めるのにちょっと気合がいる。。。(^▽^;) 読んだあとの達成感と脱力感は凄いね。
人間の限りない弱さと強さを改めて教えてくれる物語。 |
蒼穹の昴の続編と言うか、番外編のようなお話。
戊戌(ぼじゅつ)の政変のあとの混乱がひと段落着いた清朝末期、紫禁城で起きた光緒帝の最愛の側室、珍妃が井戸に突き落とされた事件の犯人を捜す。謎を解くために、日英独露の高官が、「蒼穹の昴」の登場人物にそれぞれ話を聞いてまわるが、十人十色違う犯人像を述べ難航する。犯人はこいつに違いないと言われるものが次々に現れ、皆が嘘と誠を混ぜこぜに語るので何が真実かわかないままに話は進み、ついに光緒帝によって語られる衝撃。
インタビューされる側の話し口で進むのが面白い。最後は登場人物や時代背景を引き継ぎながら、天子と妃の純愛を切なく悲しく綴る。せつなく、やるせない。
これも読む前に気合が必要だった(^_^;)
更に続編の『中原の虹』にはまだ手が出せていない・・・。
欧米列強が蹂躙していく中で、真実を探る物語。
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| きんぴか(1) ~三人の悪党~ |
きんぴか(2) ~血まみれのマリア~ |
きんぴか(3) ~真夜中の喝采~ |
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世間に見捨てられた三人の男の話。
勘違いからカチコミに繰り出して敵対する組の親分のシルシを挙げたにもかかわらず、十三年勤め上げてみれば組織に放置されてしまった伝説のヒットマン、ピスケン。
自衛隊のことを考えて九条堅持することをまず第一として湾岸地域へのPKO派遣を自分の命に代えても待ったを掛けようとした筋金入りの最凶の自衛官下士官、大河原勲。
義父のことを考え、政治家の泥を被った元大蔵官僚の議員秘書は周到に計画された切り離し計画で妻と子供たちを失った広橋秀彦。
三人が三人とも失望と居場所を無くした犬のように彷徨して知るところに現れたのが、警視庁の第四課、つまりはマル暴で知らぬ者の居ないマムシの権左、向井権左ェ衛門は始末書と共に生きてきた様な警官、オヤジ。まわりに迷惑はかけるがその分有能。しかし、あまりにも被害が大きいので相殺されている為に出世とは無縁だった。
そんな男が正直すぎる三人のつまはじき者たちに声を掛ける。向井はちょうど自分の退職をめどに警察に出来ない世直しを三人にさせようとする。
くだらなさが滑稽さと相まって絶妙な物語。
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なんとピスケンが恋をした(ノ ̄□ ̄)ノお話。
お相手は、「血まみれのマリア」こと阿部まりあ。あ、彼女はプリズンホテルにも出てくるね。泣く子も黙る救急救命センターの看護婦長で、今まさに息絶えんとする重体患者を救うこと数知れずの、奇跡を呼ぶ女だ。あまりに意外な組み合わせに、驚きのあまり絶句する軍曹とヒデさん。二人に構わず、一途で不器用なピスケンは、マリアのもとに通いつめる。はたして、この恋は実るのか!?
どこかご近所的で、身近なものがテーマとなっているような気がする。やってることは悪いのに、どこか正義の雰囲気を感じるのは、三人の男たちが義理と人情に厚く、困っている人を放っておけない性格だからだろう。ほんの少しだけ私利私欲に走りながらも、どこかつめが甘いあたりが好感がもてる部分でもある。特に、ピスケンと軍曹はとてもいい味をだしている。この二人がいるおかげで、なんでもないエピソードがとてもユーモラスなものに変化していく。
自衛隊が、極道が、そして警察までもが彼らに振り回される!命をかけて生きる、タフで純情な三人組の眩しいほどにストレートな世直し稼業は終わらない。
等身大の三人を垣間見ることができる物語。 |
シリーズ完結。終わっちゃった・・・と思わずつぶやいてしまいそうになる話。
3人組と周辺人物のドラマの泣き笑いに加え、今回は終劇の寂しさも加わって余韻が後を引く。
広橋をスケープゴートにした大物政治家・山内龍三の悪行を報道した、気鋭のジャーナリスト草壁明夫が殺された。訃報を耳にした広橋は凍りつき、草壁に伝え忘れたセリフを口にするために立ち上がる。一方、ピスケンと軍曹は、ヤクザと悪徳政治家が自己弁護と保身に走るなか、正義の暴走を敢行する。
最後のセリフ「天に恥じる行いはただのひとつもしておらん。恥辱はすなわち身の穢れである。身に一点の穢れない俺は、常に正々堂々、笑顔の絶えることはない。俺の人生は俺の誇りだ」・・参った(。>0<。)
知らないうちに涙が流れる。
読んでいる内に、何時の間にか三人の仲間になったような気持ちになる。だから何だか取り残された気分。でもまたどこかで会えるような気がするね。
続編を期待する半面、このまま爽やかな風に吹かれるような心地で終わりたいとも思う。大切にしたい気持ち。
真っ直ぐ前を向こうと思える物語。 |