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【いま読む日本国憲法】

(44)第70条 首相「欠ける」と総辞職

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 七〇条は、内閣が総辞職しなければならないケースとして、首相が「欠けたとき」と衆院選後の国会の二つを定めています。

 首相が死亡した場合、「欠けたとき」に当たることに議論の余地はありません。他の場合はどうでしょうか。

 二〇〇〇年四月二日、当時の小渕恵三首相が倒れ、意識不明になりました。政府は意識不明で回復が見込めない状態を、七〇条の首相が「欠けたとき」に当たると解釈。同四日、小渕内閣は総辞職しました。しかし、野党は七〇条に相当するのか疑問視し、国会でも議論になりました。

 自民党の改憲草案は七〇条に二項を新設し、「内閣総理大臣が欠けたとき、その他これに準ずる場合として法律で定めるとき」に首相の臨時代理が職務を行うとしました。草案Q&Aは、首相が欠けたとき、内閣総辞職を決定する閣議をだれが主宰するのか現憲法では規定がなく、「危機管理上も問題がある」などと説明しています。

 草案二項の「その他これに準ずる場合」については、意識不明になったり、事故で生死不明になったりして「復帰することがあり得るが、職務を一時的に全うできないような場合」とも解説しています。

 内閣総辞職は実際のところ、七〇条の「欠けたとき」ではなく、政局の混乱や選挙の敗北などにより、首相自らの意思で決断する場合がほとんどです。

 一方、七〇条が衆院選後に召集される国会での総辞職を定めているのは、首相を指名した衆院議員が改選されることで、新たに国会の意思を示す必要があるという判断からです。

     ◇

 「読むための日本国憲法 東京新聞政治部編」(文春文庫)をベースに、憲法の主な条文の解説を随時掲載しています。

◆自民党改憲草案の関連表記

(1)内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員の総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は、総辞職をしなければならない。

(2)内閣総理大臣が欠けたとき、その他これに準ずる場合として法律で定めるときは、内閣総理大臣があらかじめ指定した国務大臣が、臨時に、その職務を行う。

 

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