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【社会】

平和つくるルール守るよ 8歳の思い、大空襲経験87歳の「希望」

「外国語を勉強して、日本と戦争をした国の新聞にも投稿したい」と話す水野真琴さん=兵庫県川西市で

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 平和をつくる「六つのルール」を守ってください−という、八歳の少女が書いた本紙発言面の投稿に、読者から「心を揺さぶられた」などの反響が相次いだ。その一人、東京大空襲を経験した八十七歳の女性は「平和の大切さをはっきり言えるお嬢さんに、お礼を言いたい」と手紙につづった。紙面を通じ、世代を超えて平和を考える心の交流が生まれた。 (上田融)

 この少女は兵庫県川西市の小学三年、水野真琴さん(8つ)。家庭で本紙電子版を購読している。

 投稿は、「あいうえお」に当てはめた六つのルールを守れば平和につながるかもしれません、という内容。主な部分は、三月まで通っていた同県猪名川町立大島小の標語だ。「あいさつをする。いのちを守る。うそをつかない。えがおですごす。おもいやりの心」。真琴さんは標語が「戦争をせず平和を守ることにもつながる言葉だと思う」と考え「平和のルール」にした。

 六つ目の「わる口を言わない」は自ら加えた。「国と国が悪口を言い合うと、戦争になるかもしれないから。テレビで見た(原発避難者が)いじめられたニュースもきっかけになった」

 平和について考え始めたきっかけは「幼稚園のころ『かわいそうなぞう』を読んだこと」。戦時中えさを食べられず死んでしまう動物園のゾウの話を描いた絵本だ。今年二月には家族で広島平和記念資料館にも出掛けた。母親の知美さん(39)によると「曲がったことが嫌いな性格」という。

 標語は、大島小の八尾滋樹校長が、児童の生活指導に使う言葉として考えた。「もっと広い目で見ていたことに驚いた。平和につながるんだ、ということを教えてもらった」と八尾校長。

 投稿は三月十六日の本紙発言面に掲載。これを読んだ茨城県古河市、山中侑子(ゆきこ)さん(87)は数日後、本紙編集局に手紙を寄せた。

「平和をつくる6つのルールに心を揺さぶられた」と話す山中侑子さん=茨城県古河市で

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 「私たち大人の心を揺さぶりました」

 東京・浅草出身の山中さんは一九四五年三月、東京大空襲に遭い、多くの同級生を亡くした。炎の中を逃げた翌日、街中に死体の山ができている中を歩いたのを忘れられない。戦後に古河へ転居し、模型屋を経営。地元の子どもが毎日のように訪れた。二〇〇九年から、戦争や平和を題材にした詩を書き続け、ノート八十六冊に及ぶ。

 「戦争は絶対にいけない。真琴さんには、成長しても平和を思う気持ちを持ち続けてほしい、と伝えたい」と山中さん。手紙を読んだ真琴さんは取材に「おばあさんにぜひ手紙を書きたい」と目を輝かせた。

 

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