ここから本文です

ドラマ「CRISIS」、新幹線格闘シーンの舞台裏

4月14日(金)15時11分配信 東洋経済オンライン

東海道新幹線N700Aの車内。ドラマでは新幹線車内の格闘シーンがあった(記者撮影)
拡大写真
東海道新幹線N700Aの車内。ドラマでは新幹線車内の格闘シーンがあった(記者撮影)
 新幹線車内での壮絶なバトルシーンがネット上で話題騒然となった。4月11日から関西テレビ制作、フジテレビ系で放映が始まった「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」というドラマのワンシーンだ。冒頭約15分にわたって、西島秀俊と小栗旬が扮する捜査員が、車内に時限爆弾を持ち込んだテロリストと新幹線車内で格闘戦を行う。まるでハリウッド映画のような壮絶なアクションシーンもさることながら、気になったのは、本物の新幹線を使って撮影したのか、それともセットなのか。

■本物を使ったアクション撮影は困難

 本物の新幹線車内で撮影された映画やドラマは数多くあるが、車内で大がかりなアクションシーンがある場合は、話は別だ。新幹線に爆弾を仕掛けるというパニック映画「新幹線大爆破」(1975年)では映画の内容と題名に難色を示した当時の国鉄が撮影協力を拒否。このため新幹線の車内はセットでの撮影を余儀なくされた。2013年公開の日本映画「藁の楯」では、新幹線車内で銃撃戦が行われるシーンのために、わざわざ台湾に出向き、現地の新幹線車両を使って撮影した。

 ハリウッド映画では、人気シリーズ「X-メン」のスピンオフ「ウルヴァリン:SAMURAI」(2013年)に、日本国内を走る新幹線車内で主演のヒュー・ジャックマンが暴力団と戦うシーンがある。側壁をぶち破って車外に飛び出す場面があるので、おそらくセットを使った撮影だろう。新幹線の屋根の上での格闘シーンは、現実では難しいのでCG合成かもしれない。そんな状況を踏まえると、本物の新幹線を使ったアクションシーンの撮影はやはり難しそうだ。

 ドラマ「CRISIS」では、まず、「小田原西」という架空の駅のホームに本物の新幹線N700系が入線する。新幹線の側面ラインが少しだけ違うが、まぎれもなく本物だ。ホーム上にいた登場人物たちが新幹線に乗り込む。「当社の駅で撮影しました」と、JR西日本の担当者が明かす。

新幹線の車内は本物なのか

 その後、カメラが切り替わると車内のシーンに移るのだが、その新幹線の車内が、本物そっくりなのだ。映画やドラマ、そして鉄道に詳しい人なら新幹線車内のアクションシーンはセットでの撮影という先入観があるかもしれない。だが、通路横の広告、荷物棚下にある空調の吹き出し口、床の模様などが総合的に醸し出す雰囲気は、ひょっとしたら本物のN700系を使ったのではないかと思わせる出来栄えだ。

 そうはいっても、録画を繰り返して見ると、普通車やグリーン車の座席の色が微妙に違っており、やっぱりセットなのでは? と思わせる部分もある。そこで、関西テレビに確認してみたところ、「セットです」という回答があった。大がかりなアクションシーンの撮影では、カメラアングルの配置など、セットを使ったほうが迫力を出せる場合が多いからだ。激しい格闘のあまり、座席の枕カバーが引き裂かれるシーンもある。こうした演出は本物の車両ではNGだろう。アクションシーンのさなか、新幹線がトンネルに入ったり出たりするたびに窓の外が暗くなったり明るくなったりする。それがアクションシーンの緊張感を高める。こうした屋外の光の描写もセットだからこそ可能な演出だといえる。

■女性販売員もアクションに絡む

 小栗旬がテロリストにプロレス技の一つ、腕ひしぎ逆十字固めを決めるシーンがあるが、「セット撮影といっても、技を決める場所が数センチでも違えば、座席にぶつかって大けがになりかねません」(関西テレビ宣伝部)。テロリストを演じる三元雅芸と何度もリハーサルを繰り返した。なお、三元雅芸は「和製ジャッキー・チェンと評されるほどのアクション巧者」(同)。もう一つのアクションシーン、西島秀俊とテロリストの格闘にも突然現れた女性車内販売員が絡むなど、こちらも迫力満点だ。

 それにしても、たった1回のアクションシーンのために、これだけのセットを造ってしまうとは驚きだ。座席だけでも100人分近くそろえる必要がある。グリーン席も合わせれば160席近くになる。さらに車端部のデッキやトイレ、手洗い所まで再現されているのは驚きだ。セットの製作費についても聞いてみたが、残念ながら「ないしょです」とのことだった。

橋の上で停止するのはOKか

 本物そっくりの車内セットには驚かされたが、走行シーンでは一点だけ気になる部分があった。非常ブザーが押され、新幹線が橋の上で緊急停止するシーンだ。

 JR東海によると、以下のようなプロセスとなる。「旅客が非常ブザーを押した場合は、運転士はすぐにブレーキをかける。ただ、高速走行する新幹線はブレーキをかけてから停止するまでに若干のタイムラグがあるので、その間に車掌かパーサーに車内の状況をPHS等で報告してもらう。火災の危険がある場合は、トンネル内や橋の上を避けて停止します」。つまり、この手順どおりであれば、非常ブザーが押された理由として、車掌かパーサーが運転士に車内で格闘戦が起きていることを報告しているはずだ。

■緊急停車は運転士のナイス判断? 

 なお、「改造車を含むN700Aタイプの車両については、非常ブザーを車内防犯カメラと連動させ、ブザーが押されたときには何が起きているかを運転士はすぐに把握できるようになっています」(JR東海)。だとすれば、運転士は非常ブザーが押された後に、防犯カメラで車内の様子を見ていたことになる。

 本来、車内で爆発の危険があれば橋の上で停止してはいけない。にもかかわらず運転士が橋の上で停止したのは爆弾に気づかなかったからなのか、あるいは車内の様子を防犯カメラで確認した結果、一刻を争うと判断したからなのか。結果的には運転士のナイス判断だった。

 このドラマのコンセプトは「国家を揺るがす規格外の事件に立ち向かう、規格外の男たちの活躍を描く!」だ。新幹線のアクションシーンも間違いなく規格外の迫力だった。鉄道を使ったアクションシーンが今後も描かれるかはわからないが、ぜひ視聴者の度肝を抜くようなアクションシーンをまた放映してほしい。
大坂 直樹

最終更新:4月14日(金)15時39分

東洋経済オンライン

 

【あわせて読みたい】

このカテゴリの前後のニュース

PR

不動産投資コラム(楽待)

ヘッドライン

お得情報[PR]

スマートフォンアプリ「トクプレ」で
プレモノ最新情報をキャッチしよう!
対象店舗に行くとポイントもゲット

その他のキャンペーン