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待機者が急減 「軽度」除外策、介護難民増加か

特養ホームの食事風景。入所者は要介護度の高い人ばかりだ=埼玉県北本市の特別養護老人ホーム「さくら苑」で2016年6月13日午前11時40分、稲田佳代撮影

 52万人が入所待ちしていた「特別養護老人ホーム」の待機者が、各地で大幅に減ったことがわかった。埼玉県で4割、北九州市で3割、東京都で2割弱など毎日新聞が取材した10自治体ですべて減っていた。軽度の要介護者の入所制限や利用者負担の引き上げなど、政府の介護費抑制策が原因とみられる。一方、要介護度が低くても徘徊(はいかい)がある人らが宙に浮いており、施設関係者らは「介護難民」が増えたと指摘している。

 特養ホームは建設時に公的支援があるため公共性が強く、低所得者や家族のいない人を優先的に受け入れている。希望者が多く、入所まで数年待つことも珍しくない。

 だが特養ホームで作る東京都高齢者福祉施設協議会が今年1〜2月、457施設に調査したところ(242施設回答、回収率53%)、2013年と15年で1施設あたりの平均待機者数は17・7%減っていた。

 都の待機者減が明らかになるのは初めて。待機者数を調べている自治体に毎日新聞が聞き取ると、13〜16年ごろにかけて埼玉県42%▽北九州市30%▽神戸市27%▽横浜市16%▽岡山市13%▽兵庫県姫路市11%▽高松市11%▽広島市9%▽長崎県5%−−と軒並み減っていた。

 協議会は原因に▽要介護1、2の人が昨年4月から原則、入所できなくなった▽有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅が激増した▽特養の自己負担額が高くなった−−をあげる。西岡修会長は「要介護度が低くても世話の大変な人の行き場がなくなった」という。中部地方の女性(60)の母(84)は認知症だが要介護2で、特養に入れる見込みはない。一切家事ができず1人にはしておけない母を「どこに入れるというのか」と悩む。

 厚生労働省高齢者支援課は「要介護3以上に(入所を)『重点化』したのは限られた資源を真に必要な人に使ってもらうためだ」と説明した。【斎藤義彦、榊真理子】

 伊藤周平・鹿児島大学法科大学院教授(社会保障法)の話 待機者減は深刻な実態を示している。自己負担の引き上げで家族の負担は重くなり、無届け施設に行かざるを得ない人も増えるだろう。介護ニーズがある人の切り捨てで、「介護棄民」を生む。厚労省は介護サービスの抑制を繰り返しており、国は公費負担を増やす必要がある。

 【ことば】特別養護老人ホーム

 寝たきりや認知症などで常に介護が必要で、自宅での生活が難しい高齢者を対象にした施設。社会福祉法人や自治体が運営する公的な施設で、生活全般の介護を受けながら、人生の最期まで長期間入所できる。2016年2月時点で全国に9498施設あり、14年3月の入所待機者は約52万4000人。複数の施設に申し込む人も含み、実際の待機者はこれより少ないとみられている。

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