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結界魔法
王都に着いた、ルスランは報告の為にいったん王城に戻る。
私はいったん家に戻った。母にお土産の胡椒を渡すと、とても喜んでくれた。
お気に入りのガラス瓶に紅茶を入れて状態保存の魔法をかける。
ポットに茶葉を5杯分入れて4人分の紅茶を入れる。弟には砂糖とミルクを入れて。
大人はシンプルに紅茶の風味を楽しむ。
家族団らんの時間はすぐに過ぎて、出発の時間になった。
集合場所の教会に行くと、デュエルが暗い顔をしている。
「海を使った騎士達が魔物に襲われ、進攻を断念した」デュエルが言う
「予想通りだな、もう少し頑張って囮になってくれてたら良かったんだが」ルスランが続けた。
海を使った軍勢は1000人規模…どれだけの犠牲者が出たのだろう。
犠牲者の死を悼む余裕もなく、私達は旅に出た。
準備に時間がかかった飛行艇団も、近いうちに出発するらしい。
携行食と薬草を馬車に積み込み、ランバルト王都の西にマエラン皇国に向かって進む。
マエラン皇国まで2週間の旅、このルートも魔物の襲撃が多い。
なぜか強い魔物が出ないのは幸いであるが、続くと疲労がたまる。
魔物は夜もお構いなしに襲撃してくる。
夜は交代で見張りをして睡眠時間を確保しているけど、いつ魔物が来るかわからないから熟睡できない。
魔物よけに火を焚いているけど、効果があるのか無いのかもわからない。
私の見張りの時間にも、2回魔物が襲撃してきた。
容赦なく覚醒魔法を全員に使って起こしてるけど。
全員疲れが隠せない状態が続いている。いや、ルスランだけは元気だ。
毎日、魔王領に向かって「ミラージュ姫、待っていてください。必ずルスランが助けに参ります」と叫んでいる。
マエランの皇都で食料品と薬草を買い込む。
本当は風呂とベッドと温かい食料が欲しかったが、ルスランが「すぐに雨雲の祠に向かう」と言った。
雨雲の祠への片道1日の道は厳しかった。魔物が次から次へと襲ってくる。
更に雨が降りしきる。雨と魔物の襲撃は確実に私達の体力を奪っていった。
雨雲の祠もやはり毒池に囲まれている。
女神の祠で覚えたトラマナを唱えるとピンク色の靄が私達を包み込んだ。
雨雲の祠にいる神父にルスランが太陽の石を渡す。
神父が祠の中の丸い枠に太陽の石をはめて祈りを捧げると、石がピンクと水色のマーブル模様に変わった。
神父が言った「さて、一泊60ゴールドですけど泊まっていかれますか?」
体力が限界だった私達は渋るルスランを全力で説得し、一泊する事にした。
温かい風呂、美味しい食事、温かいベッド、何より安心できる建物の中での睡眠。
ぐっすり熟睡出来た。
夢の中に美しいシスターが現れた。シスターが私の頭をさわる。
シスターの手を伝って暖かな光が私の中に伝わり満ちた。
「眠る前に結界を張れば、一晩安心して過ごせますよ」シスターが笑った。
次の日の夜、寝る前に馬車の外に立ち馬車を包み込む結界をイメージすると、
馬車を温かい光が包んだ。
その日から夜の魔物の襲撃は無くなった。
見張りの時間には起きなければならないが、熟睡できるのは嬉しかった。
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