今月6-7日に行われた米中首脳会談以降、北朝鮮問題をめぐっては非常に大きな動きが続いている。まず米国は空母カールビンソンをはじめとする戦略兵器を韓半島周辺海域に集中的に配備している。さらに中国の習近平・国家主席は首脳会談からわずか5日後にトランプ大統領に再び電話をかけ「平和的解決」を訴えた。トランプ大統領が習主席に対し「北朝鮮問題の解決を支援すれば、貿易問題で譲歩する」との考えを示していたこともすでに報じられている。いわば両国の間で非常に大きな取引が現在進行中というわけだ。このような中、中国の宣伝メディアは「北朝鮮が6回目の核実験を強行すれば、中国は北朝鮮に提供している原油をストップさせる可能性がある」という趣旨のニュースを報じた。このような内容が中国の政府系メディアに出たのは過去に例がなく、これだけでも韓半島を取り巻く状況は大きく変わったと言えるはずだ。
このような一連の変化を引き出したのはトランプ式の強硬戦略だ。先制攻撃に加え北朝鮮のミサイルを迎撃する可能性をも排除しないとする米国の考えが明確になったことで、これまで一切動こうとしなかった中国に変化の兆しが見え始めたのだ。韓国としては戦争を阻止することも重要だが、北朝鮮の核とミサイルも必ず廃棄しなければならない。しかしいつかある瞬間、韓国としてどちらの方により大きな被害が発生するかを冷静に判断し、決断を下すべき状況が来るかもしれない。そうなることは絶対に阻止すべきだが、いつも韓国の思い通りになるとは限らない。この複雑かつ危険な状況になったときに、候補者たちが語ったように電話をかけるだけで戦争を阻止し、問題を解決できることなど絶対にあり得ない。
人類の戦争の歴史を振り返ると、戦争を起こさず平和を維持できたのは結局は「恐怖のバランス」が機能しているときだけだった。また一方が恐怖心を抱いていても、もう一方が恐怖心を持っていなければ結果的にバランスは崩れる。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)集団もこの恐怖を肌で実感しなければならず、それは中国も同じだ。ところがこの恐怖のバランスについて一切何も考えることなく、ただ韓国だけが無条件「戦争反対」ばかりを叫んでいるようでは、これを最も喜ぶのは他でもない金正恩氏だ。