アサド大統領、シリアによる「化学攻撃」は「でっちあげ」
シリア軍が北西部の反政府勢力地区に化学攻撃を実施したと広く非難されている問題について、シリアのバシャール・アル・アサド大統領は12日、AFP通信との単独インタビューで、化学攻撃など「100%でっちあげだ」と反発した。大統領はビデオインタビューで、「攻撃の命令は何もなかった」と述べた。一方で、被害者の多くを救急手当したトルコは、患者から採取した物質を検査した結果、サリンが使われた可能性を指摘している。
北西部イドリブ県ハン・シェイフーンでは4日、80人以上が死亡、数百人が身体症状を示した。瞳孔が縮小し、口から泡を吹き、呼吸困難になるなど、神経ガスを浴びた時の症状に一致すると言われている。被害者の多くは、国境を越えたトルコで応急手当てを受けた。
状況を目撃した人たちは、戦闘機が町を攻撃するのを見たと主張するが、ロシア政府は攻撃されたのは反政府勢力が管理する化学兵器の貯蔵施設だったと反論している。
ハン・シェイフーンでの出来事について、アサド大統領はAFP通信に対して、欧米のでっちあげだと反発。7日未明に米国が実施したシャイラート空軍基地へのミサイル攻撃の口実が欲しかっただけだと、非難した。
「ソーシャルネットワークやテレビで目にしたお芝居は、第1段階だ。プロパガンダが続いて、第2段階の軍事攻撃へと進展した」とアサド氏は述べ、シリアは2013年に化学兵器をすべて廃棄したと主張。
「たとえ持っていたとしても、使ったりしない」と付け加えた。
化学兵器禁止条約に基づき設置された化学兵器禁止機関(OPCW)は13日、予備調査の結果として化学攻撃だったという指摘は「あり得る」ものだと表明している。
2013年以降、シリア政府と反政府勢力の双方が塩素やアンモニアを市民に使用しているとの指摘が繰り返されている。
トルコと英国は、ハーン・シェイフンではサリンもしくはサリンに似た物質が使われたことが検査で判明したと主張。事実なら、化学兵器禁止条約の対象物質がこれほど大規模に使用されるのは2013年以降初めて。
テリーザ・メイ英首相は13日、ハーン・シェイフン攻撃の背後にはアサド政権がいる可能性は「極めて高い」と言明し、「他の理由は別にして、このような攻撃をする能力がある唯一の政権だと考える」と説明した。
国境を越えて救急搬送された被害者の大勢を手当てしたトルコ政府は、使用されたのはサリンだという「確かな証拠がある」と言明。レジェップ・アクダグ保健相は11日、イソプロピルメチルホスホン酸(IMPA)が「被害者から採取した血液と尿の標本内で特定された」と発表している。サリンは空気と水に触れると、IMPAとメチルホスホン酸(MPA)に分解する。
国連安保理では12日、英米仏が提出したシリア非難決議案について、シリアを支援するロシアが拒否権を行使した。シリア擁護のためにロシアが安保理で拒否権を使うのはこれで8回目で、英米仏は強く反発している。
一方でトルコとロシアの両政府首脳は電話会談で、OPCWによる現地調査を支持すると合意した。
これについてアサド大統領はAFP通信に対して、「偏見のない国による」「中立公平」な調査しか受け入れないと発言。「政治的目的のための調査になってはならない」と強調した。
米政府はこれまでシリアにおいては、過激派勢力のいわゆる「イスラム国」(IS)を主要拠点ラッカから掃討することに専念し、IS施設のみを攻撃してきた。シリア紛争以来、米軍がイラク軍施設を攻撃するのは、シャイラート空軍基地が初めてだった。
一方で国防総省は13日、ラッカから40キロのタブカ南に対する11日の空爆で、米国が支援する反政府勢力、シリア民主軍(SDF)の18人を誤って死亡させたと認めた。ISの位置と誤認してSDFを空爆したという。
アサド政権への平和的抵抗が全面戦争へと拡大して以降、30万人以上が死亡し、数百人が住む場所を失った。
<解説>アサド氏の主張への反論――ジョナサン・マーカス、BBC防衛外交担当編集委員
自分たちは化学兵器を使っていない、先週の出来事はアルカイダや米政府によるでっちあげだと断言するアサド大統領の言い分は、いわゆる「検察の弁論」と大きく矛盾する。
しかも、反政府勢力の化学兵器倉庫がシリア戦闘機の攻撃で被弾したため薬品が漏れ出たのだという、ロシアの言い分にもあまり合致しない。
被害者の多くは国境を越えてトルコで手当てを受けた。その患者たちから採取した標本をトルコで分析した結果、サリンのような物質が使用された可能性が指摘されている。この事実も、アサド氏の反論と相反する。
加えて、攻撃を実施したとされる航空機が空軍基地から出発し、目的地まで飛行し、そしてまた基地へと戻る経路を追跡していた米政府による、詳細な説明もある。
そして、攻撃直後に公表された被害者のビデオが実にたくさんある。映像がいつどこで撮影されたものかは、客観的な研究者たちによって検証済みだ。