🔻一応この記事の続きになります。
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私と彼女は数カ月の交際を経て、
結婚を前提に同棲をする事になったのですが・・・・。
同棲初日に一つの『箱』を巡って
さっそく口論になってしまったのです。

その箱は、
元々は高そうな「おせんべい」が入っていた箱だったと思います。
しかし、いま入っているのは主に『鉄クズ』です。

ジャラジャラゴチャゴチャ
これは私が幼稚園の頃から拾い集めた・・・
『ガラクタのコレクション』なのです。

なんと言いますか・・・そう宝物でした。
私達が口論になっていたのは、
この缶の中に入っている『ガラクタ』を
捨てるか?捨てないか?
という事で揉めていたからです。

どうしても捨てたい彼女。
どうしても捨てたくない私。
話は完全に平行線でした。
すると彼女は私に
「なんでこんなモノを集めているの?」
と尋ねてきました。
(えっ・・・?集めてる理由?)
理由を聞かれてドキッとしました。

いや、モチロン集め始めた理由は覚えています。
そう・・・私は幼稚園の頃、
この鉄くずを拾い集めて
ロボットを作ろうとしていたのです。

しかしそんな理由を言ったら
彼女に「こいつは頭のオカシイ奴だ」と思われるのは明らかでした。

なぜなら私は、幼稚園を卒業してからも
小学生になっても中学生になっても
高校生になっても社会人になってもずっと・・・・
20年以上この『ガラクタ』を拾い集めていたからです。

これはオカシイと思われても仕方ない・・・。
ちなみに、このガラクタには収集スポットがありました。
地元の大きなカーブがある道に行くと、
沢山の金属のガラクタが落ちているのです。

金属が沢山落ちている理由は?
この道は金属を沢山積んだトラックが
定期的に猛スピードで走ってきて、
このカーブに差し掛かると、
ブレーキを踏んで、
積んでいる金属をポロポロと落としていくのです。

たまにこの場所に来て、
落ちている金属を拾うのが私の日課でした。

もちろん全部は拾いません、
お気に入りの金属だけです。
私が「ガラクタを拾っていた理由」を話せず、
ジッと押し黙っていると・・・

なんと彼女が
「もしかして・・ロボット作ろうとしてた?」
と一発で理由を言い当てたのにはビックリしました。

彼女は完全に私の性格を理解していました。
まぁ・・よく考えてみると彼女は
「名前が書ければ入れる高校卒」の私と違って、
国立の賢い大学を卒業していましたから、
やっぱり頭の出来が違ったのかもしれません・・・。

そして賢い彼女は、私を説得する為にこう話を切り出しました。
「でも・・・ロボット作れないでしょ?」

(そうだ・・・ロボットは作れない・・)

私も20半ばを過ぎた社会人ですから、
もちろん自分にロボットが作れない事は理解できました。
しかし・・・こう改めて言われると、
この年齢までロボットを作るために鉄クズを集めていた自分が
「頭のオカシイ奴」に思えてショックでした。

彼女と付き合い始めてから数ヶ月の間に・・・
こう・・自分がいかに「オカシイ人間か」
という事を思い知らされ続けてきました・・・。
小さい話ですが・・・
例えば私は「お箸の持ち方」すら知りませんでした。
彼女と付き合うまで・・それがオカシイとも思いませんでした。

フォークとスプーンがあれば食事は出来ますからね。
和食等を食べに行くと、
彼女はキレイにお箸を使って、サカナの骨をとるのです。
それは・・・まるで違う国の人間のように見えました。

そもそも彼女の家は、
貧乏な私の家とは違い、
大変なお金持ちで「大きなお城のような大豪邸」に住んでいました。

ちなみにお金持ちなのは、
お母様が不動産関係の会社を経営しているからだそうです。
彼女が言うには、小さい頃からピアノやら英語やら茶道やら、
色んなお稽古をして厳しく躾られていたのだとか・・・・。
私とはまるで別世界の住人・・・
ビックリしました。
そして意外でした。
彼女は男癖が悪く、何度も浮気を繰り返していましたし、
突然知らない男の子供を妊娠してきた事もありました・・・・

それに私と付き合うような女性ですから・・・・
きっと・・・私と同じように低学歴で・・・
私と同じように貧しい家庭の生まれだと
勝手に思っていたからです。

ところが・・・貯金だけを見ても、
彼女は新社会人にもかかわらず、
数千万円の貯金を持っていたのです・・・・・。
長く付き合う程、
私は彼女とのあまりの差に、
強い劣等感に襲われました。

学歴、教養、家柄、貯金、
どれもあまりにも差がありすぎる・・・。
もちろん彼女のお母様とお父様は
そんな「差のある」私達の交際に断固として反対してきました。

「いまどき高卒なんてありえない!」なんて事も言われました。
ああ・・・あと一番の大誤算がありました、
彼女のお父様が警察官だったという事です。

いや・・・・これは・・・何とも言えませんね。
お父様の家系は兄弟もお爺さんも、みーんな警察官。
警察官一家だったのです。
お父様はむしろ、
最初は私達の交際に寛容だったのです。
しかし・・・私が経歴を聞かれてた時に、
正直に半年で警察官をクビになった話をした所・・・
「警察学校を辞めさせられるヤツなんて
ろくなヤツじゃない!!!」
と逆に猛反対するようになってしまったのです。

いや・・まぁそれは確かに・・・仕方がありませんね笑
そんなご両親を何とか何とか、
説得してはじめたのがこの同棲なワケです。

説得できた・・というより
「もう好きにしろ!!!!」
と吐き捨てられたダケなのですが・・・笑
そう・・・そういう経緯があったので、
彼女が「ガラクタを捨てて欲しい」と言ってきた時、
そもそも劣等感と負い目を感じていた私が、
断れるハズがなかったのです。ムダな抵抗でした。

結局、捨てる事になった決め手は彼女が言った
「結婚するんだよ?もう大人になろう?」
という言葉でした。
そうだ・・・・これから彼女と結婚して子供が出来て、
これから一人の大人の男として、
しっかりしなければいけないのです。

それに何となく、
この『ガラクタの詰まった箱』を捨てれば、
自分が少し大人になって、
彼女との差も少しは縮まるような気がしたのです・・・。

私は彼女の「箱を捨てて、大人になって欲しい」という要望に
「ウン」と頷きました。
・・・・・・そして数日後、家に帰ると、
私の『箱』はどこかに捨てられていました。

私も彼女も『箱』について何も言う事はありませんでした。
しかし・・・結局『箱』を捨てても、
私は彼女や彼女のご両親の望むような
『大人』にはなれませんでした。
2年ほど交際したのですが・・・両親の猛反対は止まず。
結局彼女から
「やっぱり高卒の人とは結婚は考えられない」
「家柄が違いすぎる」
と言われてしまい、2人は別れる事になってしまったのです。

わかっていた結末です。
実はあの『ガラクタが詰まった箱』を捨てさせられた時から、
何となく・・いつか自分も捨てられるような気がしておりました。

あの箱は私の分身のようなモノでしたからね・・・・。
でもこれで良かったのだと思います。
彼女は、いつでも自分の気持ちに正直な女性なのです。
そして私は彼女のそんな所を愛していましたから・・・。
実際はそう素直に思えるまでに・・・・
相当な時間がかかりましたが・・・。

えーと・・それで・・・彼女はその後、
すぐに地元の優良企業に務める男性と結婚をしました。
やっぱり都会にある有名な大学を卒業した方だそうです。
結婚となると、どうしても
「気持ちだけでは埋められない部分」があるのかもしれませんね。
ああ・・ちょっと・・・・私には難しすぎる話なので・・・
それは何とも言えませんが・・・・。
今はただただ、彼女の幸せを心から願っております。
おしまい
