米国のトランプ政権とロシアのプーチン政権による初めての閣僚級対話は、両国関係の前途の険しさを浮き上がらせた。

 ロシアを訪問したのは、親ロ派ともいわれたティラーソン米国務長官である。オバマ前政権時代に「冷戦終結後で最悪」といわれた関係が好転できるかが注目されたが、結局、双方の溝の深さばかりが目立った。

 直接の原因は、シリア情勢の対応をめぐる対立だ。

 アサド政権が化学兵器を使ったとしてミサイル攻撃した米国を、ロシアは「違法」と非難。一方の米国は、アサド政権支援をロシアが見直すよう迫った。

 トランプ大統領は一時、ロシアとの関係強化を唱えていただけに、態度の急変ぶりにロシアは不信感を抱いたはずだ。

 さらに今週の主要7カ国外相会合が、米国の攻撃への理解で足並みをそろえたことで、ロシアは米欧との対立の構図を再認識せざるを得なかった。

 確かに化学兵器をめぐっては事実解明が手つかずである。国連安保理が対応を探るさなかに米国が起こした軍事行動には、国際法上の問題が残る。

 だが、そのロシアも、アサド政権に調査への協力を求めた安保理決議案に拒否権を行使し、事実解明に後ろ向きな姿勢をあらわにした。アサド政権を擁護するあまり、戦争犯罪の追及に目をつぶるかのようだ。

 今回の化学兵器問題はともかく、シリア政権軍が民間人も巻き込む無差別空爆を繰り返してきたのは事実である。ロシアはそれを黙認し、国連での責任追及の動きを阻んできた。

 米ロがいま最優先すべきは、互いの非難合戦ではない。今も続くシリア各地での流血の防止と、内戦終結へ向けた和平協議の成功へ向け、国際的な機運を高めるよう協調することだ。

 どの紛争地であれ、化学兵器は二度と使われてはならない。国際テロ組織の手に渡らせないためにも、国連を主体に今回の事件の調査を急ぐべきだ。

 過激派組織「イスラム国」(IS)を壊滅させるには、アサド政権と反体制派にロシアと米国が軍事的支援をするのではなく、むしろ双方を和平協議の席につかせる説得作業にこそ力を入れるべきだろう。

 今回の米ロの外相会談は、両国関係の改善の必要性では一致し、そのための作業部会を設けることで合意した。

 北朝鮮問題や核軍縮など、多くの問題の解決には米ロの協調と関与が不可欠だ。多極化世界の安定に向けて共有する重責を自覚し、対話を深めてほしい。