そのため現状で問題を平和的に解決できる鍵は中国しか持っていないため、結局は中国の大きな方針転換を期待するしかない。中国共産党の機関紙・人民日報の姉妹紙は「北朝鮮が追加の核実験に踏み切れば、北朝鮮への原油供給中断を検討せざるを得ない」という趣旨の社説を掲載した。中国がパイプラインを閉じれば、北朝鮮はおそらく数日でまひし、どうすることもできなくなるわけだが、それでも北朝鮮は「中国はそのようなことをしない」と確信している。「核兵器を持った北朝鮮だとしても、中国にとってないよりはまし」とする中国の考え方は今後も変わらないと北朝鮮は信じているからだ。そのためまずは北朝鮮のこの考えを変えなければならない。中国は米国による先制攻撃を懸念しているのであれば、北朝鮮向けの原油パイプラインを閉じ、北朝鮮が最後に持っている信頼を崩壊させることで、北朝鮮の戦略あるいは計算を強制的に見直させなければならない。そうでもしなければ今後は中国の国益も危うくなってくるだろう。それがまさに「トランプ時代」ではないだろうか。中国がパイプラインを通じて北朝鮮に原油の供給を続け、中朝国境における密貿易を放置し、北朝鮮住民の奴隷労働で金正恩氏に外貨を持たせ続けたままでは、中国が主張する「平和的解決」は単に解決に向けた障害以外の何物でもない。
現在の韓半島情勢はわれわれが知らないところで重大な山を迎えているかもしれない。しかも今は大統領が不在で、大統領選挙が前倒しで行われるという完全な無防備状態だ。このような状況では一部の勢力が「戦争か平和か」といったスローガンで国民を脅迫し、政治的利益を手にしようとするかもしれない。2010年に韓国の哨戒艦「天安」が沈没した直後に行われた選挙では実際にそのようなことが起こった。現在、大統領選挙に出馬している候補者たちは国民に恐怖心を与えて票を得ようとする考えを捨て、国民を一つにまとめる指導者としての資質を示さねばならない。戦争を覚悟せず、またその備えを怠る国民は最後は戦争を防ぐことはできない。これは人類歴史が示す真理だ。