【写真で見る】操縦室から――パイロットが目にする光景
オランダのパイロット、クリスティアン・ファン・ハイストさんは、操縦室から目にする光景を撮影してきた。
パキスタンのデルタ地帯に川が刻む紋様から、アラスカ上空でまばゆい極彩色のオーロラまで、ファン・ハイストさんの写真はめったに真似ることのできない視点から、世界を捉えている。
ファン・ハイストさんはフライトのたびに写真を撮るわけではないが、月間100時間以上を空で過ごすだけに、10年以上前から続けている航空写真の腕を磨く機会は十分にある。
通常はコックピットのグレアシールド(遮光板)にカメラを載せて、レンズを窓に近づけたまま長時間露光する。しかし一度で成功するわけではなく、「ピントのあった写真を1枚でも撮るには、一晩に長時間露光で少なくとも5回から10回はシャッターを切らないとならない。それで成功すれば、運がいい方だ」とファン・ハイストさんは言う。
ファン・ハイストさんは、操縦士が3人以上いる長時間フライトで勤務することが多い。そのため、ボーイング737機の主翼とオーロラを1枚に収めた下の写真などが可能になる。オーロラの光が十分で、わずか数秒の露光で撮影できることもあるという。
下の写真はロシア北部で撮影した。日の出と一緒にオーロラがかすかに見えている。ほぼ真っ暗な状態で長時間露光で撮影した。
30秒も露出を続けると、機体がいつ揺れるか分からないだけに、写真がぶれてしまう危険が極めて高い。ファン・ハイストさんはむしろ「(うまくいかない可能性のあることは必ずうまくいかないという)『マーフィーの法則』は、成層圏でもあてはまるのだと、おかげで分かった」と笑う。「カメラを固定した瞬間に、飛行機は決まって揺れて振動し始めるので」。
下の写真は、カナダ・トロントが嵐に襲われている様子を上空から撮影したもの。乗客として機内にいたファン・ハイストさんは魚眼レンズを使い、まるで飛行機の外から撮影しているかのような画面を作り出し、人間が作った機械と自然の気象現象を対比させている。
最後の1枚は、ヒマラヤ上空からとらえた日没の様子。「こういう光景を見るたびに、自分の仕事と立場がいかに恵まれたものかを実感する」とファン・ハイストさんは言う。
写真はいずれも、クリスティアン・ファン・ハイストさん撮影。
(英語記事 A pilot's view of the world)