歯を磨いている最中に、思わず、喉の奥から何かがこみ上げてくる感じがして、ウッとなることはありませんか。どうしてそうなるのか、どうしたら防げるのか、なにか悪い病気の兆候ではないのか、調べてみました。
どうして、「オエッ」となるんでしょう
この、オエッとえずくことを、医学的には「嘔吐反射(おうとはんしゃ)」といいます。脳が、本来体の中に入ってきてはいけないものが入ってきたと認識して、反射的にその異物をはき出そうと、命令を出すのです。
医者で、口の中にヘラのようなもの(「舌圧子」(ぜつあつし))を突っ込まれたり、胃カメラを飲んだりしても、嘔吐反射が起きますね。
さらに、一度、歯医者の治療などで、こみ上げてきて嫌な思いをすると、それがトラウマになって、ますます過敏になります。
ストレスや緊張でも、えづきやすくなります。
人によっては、タートルネックが着られない・ワイシャツの一番上のボタンがとめられない・ネクタイが苦しいなどの症状が出ます。
歯を磨く時、オエッとならないために
次のようなことを注意しましょう
・歯磨き粉は、泡立たないもので、味や香りがなるべく少ないものを、少量使いましょう。
・歯磨き粉や唾液が、喉の奥の方に行かないように、下を向いて磨きましょう。
・歯ブラシのヘッドは、なるべく小さなものを選びましょう。
・お腹が空いているときや、反対に、お腹がいっぱいのときは、嘔吐反射が起きやすいので、歯磨きは避けましょう。
・奥歯の方を磨くときは、腹筋に力を入れて、手早く済ますようにしましょう。
普段から気をつけること
ニコチンには、嘔吐を促す作用があります。なるべく節煙しましょう。
口呼吸はやめて鼻呼吸をする習慣をつけておきましょう。
左右の鎖骨の真ん中の、くぼんだところにあるツボを「天突」(てんとつ)といいますが、ここを、下に向かって押すようにすると、嘔吐反射が抑えられます。喉を押すと苦しいので、間違わないようにしてください。
「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」という漢方薬も、嘔吐反射を和らげる作用があるので、必要に応じて使ってみましょう。
歯医者に行くときに気をつけること
歯医者に行くときは、あまり空腹だったり満腹だったりするのはよくありません。軽く何かを食べておく程度が良いでしょう。タバコは我慢しておきましょう。
嘔吐反射が心配なら、あらかじめ先生に伝えておくと良いですよ。これまでの、嘔吐反射の患者さんの治療経験から、いろいろ配慮してくれると思います。
たとえば、あまり椅子を倒さずに、座った姿勢に近い感じで治療をするとか、バキューム(唾液を吸い出すチューブ)の入れ方に気を配ってくれるとかが考えられます。
患者側としては、上に書いた天突のツボを押したり、腹筋に力を込めたり、みぞおちを手で抑えるなどの対策を取りましょう。
どうしても、嘔吐反射のせいで、治療が進まないときは、笑気ガス・麻酔スプレー・静脈鎮静法(静脈に麻酔薬を注入する)などの手段があります。
何かの病気のことも
嘔吐反射は、誰にでもある本能的なものですが、次のような病気が潜んでいることもあります。
・胃の疾患
・肝臓の疾患
・逆流性食道炎
病気ではありませんが、妊娠しているとえずきやすくなります。
気になる人は、早めにお医者さんに見てもらいましょう。