シリアは、北朝鮮の盟友である。米国のシリアへの攻撃は、北朝鮮に対する警告、脅しだ。中国が、米国の先制攻撃を非難せず、シリアへの攻撃を認めることは、北朝鮮に対する裏切りといえる。習氏の態度に、北朝鮮と旧瀋陽軍区の部隊は「習氏は裏で同盟国を売った。トランプ氏と密約した」と激怒した。進軍情報は習氏に対する脅し、とみられるのだ。
朝鮮半島危機が、中国に直撃し、習氏の権力基盤が危うくなっている。
私(加賀)は一連の連載で、米朝軍事衝突のXデーは、韓国で「従北」「反日反米」の次期大統領が誕生する、大統領選(5月9日投開票)前と報告してきた。これは、北朝鮮の核実験次第で確実に早まる。
実は、米情報当局関係者が、以下のように心配するのだ。
「日本政府が、朝鮮有事を見据えて、防衛・治安態勢を強化し、韓国にいる邦人救出シミュレーションを検討していることは知っている。だが、北朝鮮に拉致された日本人被害者の救出はどうするのか。安倍晋三首相は拉致問題の解決を世界に訴えてきた。彼らの奪還を考えているのか」
戦争は誰も望んではいない。だが、朝鮮半島で軍事衝突が起きたとき、拉致から何十年も祖国・日本を思い、涙に暮れ、絶望の中で救いを求めているわが同胞を救出しに行くのは、日本人であるべきではないのか。
緊迫した朝鮮半島情勢への対応とともに、国会では、こうしたことも議論していただきたい。
■加賀孝英(かが・こうえい) ジャーナリスト。1957年生まれ。週刊文春、新潮社を経て独立。95年、第1回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞受賞。週刊誌、月刊誌を舞台に幅広く活躍し、数々のスクープで知られている。