2017年4月7日、韓国・朝鮮日報に「くたびれた青春のほろ苦い造語」と題する記事が掲載された。「幸福回路」というその造語、どんな意味なのだろうか?
中小IT企業の新入社員チョンさん(26)は残業続きで、毎日帰宅は午後11時過ぎ。しかしそんな時にはあえて「僕は幸せです」と大声で叫ぶという。「月給は少ないけれど残業手当をもらえるから幸せだ」という意味だそうだ。
「幸福回路」とは、チョンさんのように、つらく疲れ切った状況を逆説的に捉え肯定的に考えようと努力することを意味する語。「不幸な状況を精神的に克服するために、幸せな想像をさせようとする脳内の神経回路」のことだ。就職難にあえぐ若者たちの悲喜こもごもが反映されたような言葉だ。
韓国のSNSを検索すると、「幸福回路」が含まれる文章が数千件もヒットする。「女性と付き合うと、食事に映画にと交際費が月に少なくとも30万ウォン(約3万円)、でも週末に家でゲームだけしていれば毎月30万ウォン浮くことになる。両親も感心だと思ってくれるはず。幸福回路が燃え尽きるまで活用した」「SKY(韓国の名門大学であるソウル大・高麗大・延世大の頭文字)を出ても無職も多いのに、僕は高卒だけど就職した。幸福回路をフル稼働させた」といった具合だ。
大邱大学心理学科の林永津(イム・ヨンジン)教授は「恋愛、結婚、出産を諦めた世代には、これから未来の状況がより良くなる可能性は小さいという考えが広がっている中で、自嘲的な意味の造語ができたようだ」と話している。
この記事にも、韓国のネットユーザーからは「仕事がないから仕事しなくて幸せ!」「非正規雇用だから責任が軽くて幸せ」「交通費がないから歩いて通勤、運動になって幸せ」とまさに幸福回路を利用したコメントが寄せられている。
しかし、「不幸とか憂鬱も感情の一つ。幸せじゃないのに幸せだと自己合理化させるのはもっと悲しいよ」「現実を認めて代わりのものを探す方がいい。幸福回路はその時だけのこと、惨めになるだけ」「幸福回路を活用すれば、自己恥辱感が増すばかり…」と幸福回路の活用に否定的な意見や、「今は幸せになりたいと望んでるのではなく、これ以上不幸なことが起こらないよう祈るだけ」「私には幸福回路がないのかも。幸せだという感情がなくなってしまったみたい」「これは若者だけに起こった状況じゃないよ。本当に悲しいね」など、やりきれなさのにじむコメントも目立った。(翻訳・編集/真)