近大の研究用原子炉運転再開 新規制基準下で全国初
k10010946241_201704121807_201704121815.mp4
東京電力の福島第一原子力発電所の事故を踏まえた新しい規制基準への対応のため、運転を停止していた近畿大学の研究用原子炉が12日、3年ぶりに運転を再開しました。新しい規制基準のもとで、研究用の原子炉が運転を再開するのは全国で初めてです。
運転を再開したのは大阪・東大阪市の近畿大学原子力研究所にある研究用原子炉で、出力が1ワットと国内最小です。
原発事故を踏まえてできた国の新しい規制基準で、研究用の原子炉も、より厳しい安全対策が義務づけられたことから、3年前に定期検査に入ったあと、規制に対応するため運転を再開できずにいました。
12日は、制御室に8人の学生が集まり、このうちの1人がレバーを操作して核分裂反応を抑える制御棒を炉心から引き抜くと、「14時46分、原子炉を起動」と宣言しました。そして、およそ25分後の午後3時8分、核分裂が連続する臨界と呼ばれる状態に到達しました。
全国の研究用の原子炉はいずれも運転を停止していて、実際に運転を再開したのは近畿大学が初めてです。
参加した大学院生の中嶋國弘さんは「緊張しましたが、原子炉を運転することへの責任感がわきました。これからどんどん実習や実験を積み重ねていきたいです」と話していました。
また、近畿大学原子力研究所の伊藤哲夫所長は「この3年間、教育面では危機的な状況だったので感無量だ。今ある原発を安全に維持するためだけでなく、特殊な状況にある福島第一原発の廃炉を進めるには、1人でも多くの優秀な人材が求められている。ここからそうした人材を数多く送り出していきたい」と話していました。
原発事故を踏まえてできた国の新しい規制基準で、研究用の原子炉も、より厳しい安全対策が義務づけられたことから、3年前に定期検査に入ったあと、規制に対応するため運転を再開できずにいました。
12日は、制御室に8人の学生が集まり、このうちの1人がレバーを操作して核分裂反応を抑える制御棒を炉心から引き抜くと、「14時46分、原子炉を起動」と宣言しました。そして、およそ25分後の午後3時8分、核分裂が連続する臨界と呼ばれる状態に到達しました。
全国の研究用の原子炉はいずれも運転を停止していて、実際に運転を再開したのは近畿大学が初めてです。
参加した大学院生の中嶋國弘さんは「緊張しましたが、原子炉を運転することへの責任感がわきました。これからどんどん実習や実験を積み重ねていきたいです」と話していました。
また、近畿大学原子力研究所の伊藤哲夫所長は「この3年間、教育面では危機的な状況だったので感無量だ。今ある原発を安全に維持するためだけでなく、特殊な状況にある福島第一原発の廃炉を進めるには、1人でも多くの優秀な人材が求められている。ここからそうした人材を数多く送り出していきたい」と話していました。
規制委「ハードルが高すぎたかも」
近畿大学の研究炉は、審査を申請してから運転再開まで2年半かかっていて、これについて、原子力規制委員会の田中俊一委員長は12日の記者会見で、「新しい規制のハードルが高すぎたところがあったのかもしれない」と述べました。
そのうえで、国内の研究炉の老朽化が進んでいる点に触れ、「原子力利用を続けるのではあれば、きちんとした教育や勉強の場の整備が必要だ。人材育成のためには、10年か15年に1基ほど新しい研究炉を作り続けていくことがいちばんいいと思う」と述べました。
そのうえで、国内の研究炉の老朽化が進んでいる点に触れ、「原子力利用を続けるのではあれば、きちんとした教育や勉強の場の整備が必要だ。人材育成のためには、10年か15年に1基ほど新しい研究炉を作り続けていくことがいちばんいいと思う」と述べました。
大学院生「遅れを取り戻したい」
近畿大学原子力研究所では、研究用原子炉の停止が続いたことで、一部の研究が中断するなど研究や人材の育成に影響が出ていました。
このうち、大学院1年生の中嶋國弘さん(22)は、原子炉物理と呼ばれる分野を学んでいます。
将来は技術者や研究者として、原子力関連企業や研究機関で働きたいと考えていますが、これまで実際の原子炉に触れる機会はほとんどありませんでした。研究はコンピューターで核分裂反応をシミュレーションすることで進めてきました。
しかし、中嶋さんは原発の維持を担う技術や廃炉を安全に進める技術を身につけるためには、実際の原子炉で研究することが欠かせないと感じています。
中嶋さんは「基礎的な実験や訓練なしで、研究に入ってしまったことで、原子炉を理解するのに苦労しています。原子炉が再開したら、遅れを取り戻せるように実験や実習に励みたい」と話しています。
このうち、大学院1年生の中嶋國弘さん(22)は、原子炉物理と呼ばれる分野を学んでいます。
将来は技術者や研究者として、原子力関連企業や研究機関で働きたいと考えていますが、これまで実際の原子炉に触れる機会はほとんどありませんでした。研究はコンピューターで核分裂反応をシミュレーションすることで進めてきました。
しかし、中嶋さんは原発の維持を担う技術や廃炉を安全に進める技術を身につけるためには、実際の原子炉で研究することが欠かせないと感じています。
中嶋さんは「基礎的な実験や訓練なしで、研究に入ってしまったことで、原子炉を理解するのに苦労しています。原子炉が再開したら、遅れを取り戻せるように実験や実習に励みたい」と話しています。
人材育成担う研究炉 依然“遠い”再開
原発を運転するにしても廃炉にするにしても、欠かすことができないのが安全を守る人材です。これまで、こうした人材の育成を担ってきたのが、大学や研究機関などが所有する国内の22基の研究用の原子炉でした。
しかし、福島第一原発の事故のあと、研究炉にもより厳しい安全対策が義務づけられ、運転できない状態が続いていました。
さらに、運転再開を目指して原子力規制委員会に審査を申請したのは9基だけで、このうち合格したのは近畿大学の1基と、京都大学の2基の、合わせて3基にとどまっています。
研究炉が直面する課題の一つが、対策にかかる費用です。
たとえば京都大学の場合、耐震性の確保や竜巻対策など、規制に対応するための工事にすでに1億円余りが投じられ、さらに増える可能性もあるとされています。予算が限られる中、研究現場からは、制度面や財政面での支援を求める声も上がっています。
もう一つの課題が、施設の老朽化です。
研究炉の多くは、運転開始から40年を超えています。例えば茨城県大洗町にある日本原子力研究開発機構のJMTRという研究炉は、いったんは運転再開を目指して審査を申請しましたが、運転開始から50年近く経って老朽化が進み、コストがかかりすぎるとして、廃炉にする方針に転換しました。
全国にあった22基の研究炉のうち、事業者が廃炉にすることを決めたり、検討したりしているのは、事故前に決めたところも含めると、半数以上の13基にのぼっています。さらに、研究炉はそれぞれ構造が異なるため審査に時間がかかり、これまでに合格した3基は最短でも1年半以上かかっています。
このため規制委員会は去年、研究炉の審査を効率化することを決めましたが、たとえ審査に合格しても工事や検査などが必要なため、近畿大学は運転再開までさらに1年近くかかったほか、京都大学は運転再開のめどさえ立たない状態で、人材育成を取り巻く厳しい状況は依然として続くことになります。
しかし、福島第一原発の事故のあと、研究炉にもより厳しい安全対策が義務づけられ、運転できない状態が続いていました。
さらに、運転再開を目指して原子力規制委員会に審査を申請したのは9基だけで、このうち合格したのは近畿大学の1基と、京都大学の2基の、合わせて3基にとどまっています。
研究炉が直面する課題の一つが、対策にかかる費用です。
たとえば京都大学の場合、耐震性の確保や竜巻対策など、規制に対応するための工事にすでに1億円余りが投じられ、さらに増える可能性もあるとされています。予算が限られる中、研究現場からは、制度面や財政面での支援を求める声も上がっています。
もう一つの課題が、施設の老朽化です。
研究炉の多くは、運転開始から40年を超えています。例えば茨城県大洗町にある日本原子力研究開発機構のJMTRという研究炉は、いったんは運転再開を目指して審査を申請しましたが、運転開始から50年近く経って老朽化が進み、コストがかかりすぎるとして、廃炉にする方針に転換しました。
全国にあった22基の研究炉のうち、事業者が廃炉にすることを決めたり、検討したりしているのは、事故前に決めたところも含めると、半数以上の13基にのぼっています。さらに、研究炉はそれぞれ構造が異なるため審査に時間がかかり、これまでに合格した3基は最短でも1年半以上かかっています。
このため規制委員会は去年、研究炉の審査を効率化することを決めましたが、たとえ審査に合格しても工事や検査などが必要なため、近畿大学は運転再開までさらに1年近くかかったほか、京都大学は運転再開のめどさえ立たない状態で、人材育成を取り巻く厳しい状況は依然として続くことになります。
人材確保にも厳しい現実
文部科学省によりますと、原子力関連企業の就職説明会に参加した学生の数は、福島第一原発事故の前の平成22年度には、およそ1900人いましたが、事故をきっかけに激減し、平成27年度にはおよそ340人となっていて、人材の確保は差し迫った課題となっています。
また、原子力分野が専門の大学の教員も減少傾向にあり、平成16年度には全国で440人近くいたのが、原発事故後の平成25年度には350人を切っていて、国は、安全を支える人材をどう育て確保するかについて、検討を重ねています。
また、原子力分野が専門の大学の教員も減少傾向にあり、平成16年度には全国で440人近くいたのが、原発事故後の平成25年度には350人を切っていて、国は、安全を支える人材をどう育て確保するかについて、検討を重ねています。