積立NISA 金融庁がアクティブ型にダメ出しの理由 QUICK資産運用研究所 北澤千秋
2018年から始まる積立NISA(少額投資非課税制度)で投資対象となる投資信託の概要が決まった。柱になるのは指数に連動するインデックス投信。最長20年にわたる長期積立投資という制度の枠組みを考えれば、低コストのインデックス型が中心になるのはうなずける。一方、ファンドマネジャーが運用するアクティブ型には厳しい条件が付き、かろうじて「全面排除」を免れた形だ。背景には、既存のアクティブ投信に対する金融庁の根強い不信感がある。投信業界は今後、この不信に対する反証を、身をもって示していかなければならない。
■残ったファンドは6本だけ
対象投信の基準は下表のとおり。インデックス投信についてはコスト(信託報酬と販売手数料)だけが選別基準になっているのに対し、アクティブ型には事細かな制約が課せられた。特に厳しいのが残高、資金流出入に関する条件で、届け出時点で残高は50億円以上、設定来の3分の2以上の期間(決算期ベース)で資金流入超過となっている投信に限られる。
QUICK資産運用研究所がこの条件で3月末時点のデータを使ってスクリーニングしたところ、積立NISAの対象となるアクティブ型はひふみ投信、さわかみファンド、ニッセイ日本株ファンドなど、6本が残るのみだった(昨年11月時点のデータによる金融庁の検証では5本)。
なぜ金融庁はアクティブ型を厳しく選別するのか。表向きは「長期にわたり市場全体のリターンを上回るようなファンドは、事前に見分けられない」というのが理由だ。学者を中心に、「長期運用でアクティブ型はインデックスに勝てない」という説が強く主張されたのも一因だろう。
しかし、実際には積立NISAを使ってできるだけ投資家がリターンを確保できるよう、投資家のためになりそうにない投信は消去法で排除したい、というのが本音と思われる。そうした考えは、対象商品を議論した金融庁の「長期・積立・分散投資に資する投資信託に関するワーキング・グループ(WG)」の報告書にもにじんでいる。
いわく、「販売の主流になっている投信の特徴は、テーマ型のアクティブ投信や毎月分配型」「(テーマ型から次のテーマ型に)乗り換えを繰り返すようなことがあれば、短期の回転売買にほかならない」「手数料が高くなりがちで、金融機関には手数料稼ぎのインセンティブが発生する」「大半は組成されて数年で半分以下の資産規模に資金が流出してしまう」――。
■排除すべきは「もどき」ファンド
いちいちごもっとも、ではある。しかし、だからと言ってアクティブ型のすべてが悪いわけではないし、ましてやアクティブ型が投信市場からなくなっていいわけがない。風評被害とまでは言わないにしても、積立NISAの対象商品を巡る議論をきっかけに、投資家の間にコスト至上主義の投信選びや、アクティブ不要論のような風潮が広がらないか心配になる。
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