名車「ポルシェ911」、時代を超越したデザインの進化がわかるフォトギャラリー
50年以上も愛されてきたポルシェ911。たとえ技術や装備が現代的になったとしても、時代を超越したデザインは誰もがポルシェ911だと認識できる。その歴代デザインの進化をたどった写真集が発売された。
TEXT BY ALEX DAVIES
TRANSLATION BY MISAKO ASANO/GALILEO
WIRED(US)
-
1/71963~1973年:オリジナル・モデル。設計は、フェルディナント・アレクサンダー・ポルシェ。ポルシェが製造したモデルとしては2番目だが、重要性においては最初のモデルを上回る。その後の長い間に911の基本設計は進化したが、その独特の外観は失われていない。PHOTOGRAPH COURTESY OF GESTALTEN
-
2/71974~1989年:Gモデル。誕生して10年、911は名声を築き上げ、モデルチェンジの必要があまりなかった。Gモデルはバランスや内装にはほとんど手を加えず、余分なものを排除して優美な簡素さを追求した。PHOTOGRAPH COURTESY OF GESTALTEN
-
3/71988~1994年:964型。1980年代後半は、ポルシェにとってあまりよい時代ではなかった。ドイツは不景気に見舞われ、ホンダの「アキュラNSX」のようなライヴァルとの競争も激しくなっていた。そこでポルシェは911を一新して、四輪駆動、パワーステアリング、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)、それに、電動格納式で、時速50マイル(約80km)を超えると自動的に上がるリアスポイラーを装備させた。PHOTOGRAPH COURTESY OF GESTALTEN
-
4/71993~1996年:993型。当時のポルシェを率いていたハインツ・ブラニツキーは、964型が25年間でも売れ続けることを願っていたのだが、製造コストが高く、競合モデルに負けてしまい、そんなことはとても望めなくなった。そこでポルシェは1993年に993型を出した。ポルシェ最後の空冷エンジン・モデルは、最高出力285hpのスポーツカーで、ハンドリングが改良されてより快適になった。PHOTOGRAPH COURTESY OF GESTALTEN
-
5/71997~2006年:996型。新たな千年紀を迎えるにあたり、ポルシェは996型を投入して伝統主義者たちに衝撃を与えた。30年以上にわたる911の歴史の中で、オリジナルの外見からもっともかけ離れたモデルだ。ある993の所有者は、「経営者向けのリムジン」だと切り捨てた。良い車だったが911としては物足りなかった、とポーシャルトは書いている。さらに、空冷エンジンをやめて水冷にしたことも、保守的なファンの不評を買った。PHOTOGRAPH COURTESY OF GESTALTEN
-
6/72004~2013年:997型。問題の多かった996型の後継。だからといって元の姿に戻ったわけではないが、昔を懐かしむ人々の気持ちを宥めることはできた。997型は前のモデルよりパワーアップし、クラシックとして後世に残るだろうと評価された。PHOTOGRAPH COURTESY OF GESTALTEN
-
7/72011年~:991型。911の7代目となるこのモデルは、50年近く前にフェルディナント・アレクサンダー・ポルシェが設計したモデルと並ぶと、明らかに現代的な外観をまとっている。水冷エンジンはそのままで、角が丸くなり、フロント部が伸びた。だが見た人は誰もが、ポルシェ911だと認識するだろう。PHOTOGRAPH COURTESY OF GESTALTEN
ポルシェ911は、フォードのマスタングやシボレーのコルベット同様、どこから見ても現代的でいながら完全に時代を超えている、という巧妙さを備えたクルマだ。最近のモデルは、1963年の「フランクフルト・モーター・ショー」で披露されたオリジナルモデルによく似ており、自動車に興味のない人でもすぐにポルシェと見分けることができる。
このドイツ南部のシュトゥットガルトを拠点とする由緒正しきスポーツカーメーカーについて書かれた本を集めたら、それだけで小さな図書館ならいっぱいになるだろう。その最新の一冊が、ドイツの出版社ゲシュタルテンから刊行された『Porsche 911: The Ultimate Sportscar as Culture Icon(ポルシェ911:文化的象徴としての究極のスポーツカー)』である。この本にふさわしい名前をもつ著者のウルフ・ポーシャルト(Ulf Poschardt)が、ポルシェ911の進化の歴史をつづった。
スポーツカーの象徴とも言える地位を築いた911も、もとをたどればフェルディナント・ポルシェが設計したフォルクスワーゲンの「ビートル」にたどり着く。ビートルは、ポルシェが1948年に生産を開始したポルシェ356の源流ともいえる。356は空気力学の発想を取り入れ、最軽量を実現し、実用主義的な特徴を強調したデザインが特徴だ。このモデルをポーシャルトは「機能主義のかたまり」と呼ぶ。
『Porsche 911: The Ultimate Sportscar as Culture Icon(ポルシェ911:文化的象徴としての究極のスポーツカー)』。PHOTOGRAPH COURTESY OF GESTALTEN
そして911である。創業者の孫で、ブッツィー・ポルシェの愛称で呼ばれたフェルディナント・アレクサンダー・ポルシェが、356よりも快適でもっとパワフルなモデルとして開発した。2ドアで4シーター。フロントガラスからテールランプまでなめらかなスロープになったボディラインの後部には、エンジンが押し込められている。
ポーシャルトによると、911が1963年の「フランクフルト・モーターショー」でデビューしたときには、あまり注目されなかったという。しかし、その設計が素晴らしいものであることはすでに証明された。その後50年の間に、デザインこそ変更されてはいるものの、いまも50年前と変わらない美しさを見せているのだから。
SHARE