(英フィナンシャル・タイムズ紙 2017年4月6日付)
南アフリカの首都プレトリアで記者会見するジェイコブ・ズマ(Jacob Zuma)大統領(2013年10月14日撮影、資料写真)。(c)AFP/ALEXANDER JOE〔AFPBB News〕
南アフリカのジェイコブ・ズマ大統領は3月末、非の打ちどころがないプラビン・ゴーダン財務相を含め、閣僚の半分を解任したとき、これで政府が「抜本的な社会・経済改革」の仕事に取り掛かれると述べ、猛烈な内閣改造を正当化した。
ズマ氏の主張は理不尽だ。大統領の政策は――それが「政策」と呼ぶに値するのであれば――、アフリカ大陸の大部分を台無しにしてきた恩顧主義的な政策を復活させ、支持者の私腹を肥やすことだ。
ゴーダン氏の解任は、無謀な行為だった。解任を受け、通貨ランドは13%急落し、南アのドル建て債務は米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)から「ジャンク(投機的)」に格下げされることになった。これにより輸入品が値上がりし、南ア国民の借り入れコストも上昇する。言い換えると、ズマ氏が自分が仕えていると主張する当の国民に害を及ぼすのだ。
だが、ある意味では、ズマ氏は1つ、重要な真実にしがみついている。
同氏が言うように、アパルトヘイト(人種隔離)政策からの解放後、23年経った今になっても、多数派の黒人が置かれた社会的、経済的状況は十分に変わっていない。経済格差を測るジニ係数(税引き前の家計所得ベース)は、白人少数派の覇権的支配下にあったころと事実上同じだ。与党アフリカ民族会議(ANC)に投票する人の大半は、仕事に就いていない。若年失業率は50%を上回っている。
ズマ氏の発言は――不誠実だとはいえ――、同氏よりはるかに信頼できる人物の考えと重なる。ANCの元議長(党首)で、1981年にアパルトヘイト後のジレンマを予見してみせたオリバー・タンボ氏その人だ。アパルトヘイトからの解放は、経済的解放がなければ無意味だと同氏は言った。「既存の経済的勢力が利益をそのまま保持するのを許すことは、人種差別的な優位と搾取の根を育むことであり、解放の影にさえならない」。