自称「靴を脱ぐ投資家」として、経営陣と対話しながら企業価値向上を目指す運用会社スパークス・グループが、初めて投資先企業への要望を大量保有報告書で開示した。同社は5%以上保有する帝国繊維株に対し、「資本を有効に活用していない」として、持ち合い株のヒューリック株を合理的な期間内に売却することなどを求めている。

  発表文では、帝繊維は事業とシナジー効果の薄い不動産投資会社ヒューリック株を保有したり、投資にも株主還元にも使われない現預金を蓄積していると批判。持ち合い株売却のほか、投資計画や株主還元計画を示すよう求めている。

  帝繊維は総資産580億円に対し、自己資本が75%相当ある。また総資産の3分の2を現金や有価証券など非事業用資産が占めており、うちヒューリック株は185億円。スパークスではこの持ち合い株を売却して株主還元に回した場合、株主資本利益率(ROE)は現行の6.9%から10.1%に上昇すると試算している。

  阿部修平社長は10日の記者説明で、これまで経営陣と資本効率をめぐり対話してきたが、帝繊維社内ではヒューリック株についての問題を認識しているものの「会社トップに問題意識がなく、特段のアクションが起きていない」と説明。合理的な保有であれば、「納得のいくように社長の名前で説明すべき」と指摘する。委任状争奪戦を繰り広げるつもりはないが「そんなに長くは待っていられない」と話す。

  こういうケースは「まだまだある」とし、必要に応じて今後も要望を開示していく方針という。帝繊維の株主はみずほフィナンシャルグループ、SOMPOホールディングス、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)、明治安田生命保険など大手機関投資家だ。阿部氏は投資先に対して「最後のチェックをするのが株主」といい、「その他株主に対して問題を提起して多くの方に考えて欲しい」と呼びかけた。

  関東財務局に10日提出した大量保有報告書では、子会社のスパークス・アセット・マネジメントを通じて帝国繊維株式を5.07%(6日時点)取得したと届け出た。帝繊維は防災関連用の耐熱合成繊維を製造しており、東日本大震災以降、需要増加が見込まれるとして、スパークスは14年4月から株式を保有しており、議決権行使では経営陣選任などで反対票を投じてきている。

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