現在、様々なアーティストやイベントのバックバンドで一際目立つスキンヘッドのベーシスト。通常のベースよりも2本弦が多い6弦ベースを超絶技巧で操るBOH氏は、ニコニコ超パーティーでの超バンドでもベースを務め、自らのニコニコミュニティを持ち、不定期でニコ生「BOHの大暴走!!!」を生配信もしており、最近では、仮BANDという新たなバンドでの新作ミニアルバム【仮音源-DEMO-】をレコーディングし、4月26日に発売を控えているという。
そんなBOH氏に、セッションミュージシャンとしての活動、ニコ生、仮BANDの新作についてなど、ロングインタビューを行った。
取材・文/サイトウタカシ
東京に出てセッションミュージシャンを目指した
——最初にBOHさんがミュージシャンを目指したきっかけを教えてください?
BOH:
僕は北海道の旭川出身で、最初に東京に出てくるのは音楽学校に入るのがきっかけだったんですけど、中学校の終わりぐらいからベースを始めて、高校ではバンドを組んでいました。それで東京に行って、メンバーを探してバンドをやったら有名になれるんじゃないか?というワケの分からないことを言っていたんです。
ただ、ウチの親が「そんなバイトしながら音楽をしに東京になんて行ったって遊んで帰ってくるだけだから、ちゃんと音楽学校入りなさい」というふうに言ってきて、で母親も音楽の教師だったりして、親父も職業としては市場を経営していたんですけど、市の合唱団で指揮をやっていたりしたんです。そうなってくると、学校も講師の方にスタジオミュージシャンが多い学校を選んで、そうした環境に身を置くうちに、バンドでメジャーデビューということよりもスタジオミュージシャンを目指そうと。
——当初はバンド指向だったのが変わったのでしょうか?
BOH:
いや、それまでバンドしか方法が無いんだと思っていました。それが学校に入ってスタジオミュージシャンをやっている講師に出会って考え方が変わったんです。
例えば、一つのバンドで5人いたら誰かが諦めたらダメだし、途中で他のコトもやりたいといった時に、このメンバーだとできないというコトもあります。あとは、ひねくれた考えですけど、いつか解散した後に、昔あんなに有名だったバンドの人たち、今は何やっているのか分かんないと思って、自分もそうなるのはヤベェなとか、「あの人は今?」とかテレビで出たくないとか色々思ってしまって……。
そういうのが嫌だったので、とにかくスタジオミュージシャン、バックバンドの仕事をやれば色んな人と音楽ができる。仕事で呼ばれるとなったら、人との繋がりもそうですけど、やっぱり自分を買われて呼んでくれるので、責任感もあるし、長く続けていけるんだろうなと考えて、どんどんそっちの方向にシフトしていきましたね。
6弦ベースを演奏する理由
——専門学校にいた時に講師の方から6弦ベース【※】を勧められたそうですが。
※6弦ベース
通常は4本の弦をもつエレクトリック・ベースだが、更に低い音を出すために低音域用に1弦増やされたものが5弦ベースとなり、それに加えて、更に高い音を出すために高音域用に1弦が増えた、6本の弦をもつベースのこと。
BOH:
それまでは4弦で、最初は6弦ベースなんて嫌いだったんです。 でも18歳の終わりぐらいの時に、まだ6弦ベースをメインで使っている人が日本では本当に少ないから、今からやれば絶対に弾けるようになるから、「弾いてみろ」って講師の人に言われたんです。
——BOHさんの中の動機としては6弦である必然性というのは全くなかったんですね。
BOH:
全くなかったですね。最初はやっぱ苦労して、最初の1年くらいはやっぱり4弦の方が良いなと思いながら弾いていましたよ。弾くのは弾けるんですけど、弦が多い分、弾いていない弦をキチッと触って音を止めておかないと、無駄な音が出ちゃうんですよ。それにかなり慣れが必要でした。
——慣れない6弦を演奏するコトをどうやってご自身に納得させていったんでしょうか?
BOH:
スタジオミュージシャンという方向にシフトする時が2000年位の頃で、アニメだとかがちょうど流行ってきた時だと思うんです。そういう音楽を聴いていると、4弦ベースでは対応できない低い音が出てきたりだとか、同じ時期に打ち込みとかもガンガン流行っていた時期なので。そういうものをライブでやるとなった時に、普通だったら5弦ベースだったら足るのですが……。
——6弦は上の音域にも増えるわけですよね。
BOH:
上にも1本増えて、それが絶対に武器になる、他人じゃ簡単に弾けないようなものを弾けるのは一つの武器だから、やってみろとアドバイスをいただきました。
——そういうところをお聞きすると、今のキャリアに繋がっているのが良くわかりますね。
セッションミュージシャンとは?
——今ではBOHさんはセッションミュージシャンとして、多岐に渡ってご活躍されていますが、かつては主にスタジオミュージシャンという言い方がされていたのが、最近ではセッションミュージシャンと呼ばれているようですが。
BOH:
セッションミュージシャンという言葉の方が多くなってきましたね。昔の人はまだスタジオミュージシャンと言いますが、なんで変わってきたかというと、スタジオワークもライブの仕事も同じセッション【※】なんです。でも、スタジオに呼ばれてレコーディングの仕事をするというのが昔と比べて圧倒的に少なくなっているんですよ。
自宅にコンピューターがあればそれでレコーディングをして、データとしてクライアントに送ったりできる。最近は音楽ソフトがもの凄く進化しているので、レコーディングスタジオにあるソフトと全く同じもので、本当にスタジオのクオリティと変わらないクオリティで音を録ることが出来るんです。
※セッション
音楽用語で、複数のミュージシャンによる演奏のこと。レコーディング時であれば、レコーディング・セッション、即興演奏などではジャム・セッションなどと呼ばれる。
——スタジオという場所から離れる活動も多くなったので、セッションミュージシャンという呼ばれ方になって行ったんでしょうか?
BOH:
どんどん誰かしらが言ってきたんですよね。最初、日本ではチョッパーベース【※】と言っていたのが、今はみんなスラップというような、そういうような感じで、スタジオミュージシャンもセッションミュージシャンと呼ばれるようになっていますね。
※チョッパー / スラップ
ベースの奏法の一つで弦を叩きつけるように音を鳴らすことで、独特のパーカッシブな音色を出すことができる。