政府の働き方改革で焦点だった残業時間の上限規制は、繁忙期に月100時間未満とすることで決着した。違反した場合、企業や担当者に罰則がある厳しい内容だ。経営側は妥当な判断とする一方、過労死の遺族らは労災認定基準に相当する100時間は長すぎると反対する。この上限規制をどう評価すべきか。労働問題に詳しい日本総合研究所チーフエコノミストの山田久氏と、過労死等防止対策推進全国センター共同代表幹事を務める弁護士の川人博氏に聞いた。(平尾孝)
――繁忙期の残業時間の上限が月100時間に決まったことへの評価は
「労災認定基準などを考慮すれば、100時間以上の長時間で労使が合意はできないのは明確だ。もちろん『月100時間未満なら許される』ということではなく、長時間労働を放置してはいけない。だが、日本の労働慣行として、長時間の残業が根付いているのも事実だ。いきなり理想的な短い残業時間にするのは、労使の取り決めとしても難しい。職場の状況を踏まえ、残業の上限をさらに短縮する協議を進めていくための出発点ととらえるのなら、今回の規制は極めて現実的な判断だ」
――課題は残っている
「規制に対し、大手企業は対応できると思う。急進的な変更は副作用も多い。中小企業や下請け事業者などに、そのしわ寄せがいくことが懸念材料だ。同時に短い労働時間の中でも生産性を上げる仕組み作りが重要になる。長時間残業の是正は、単に労働時間の上限を決めるだけで済む問題ではない。日本の労働の仕組みを変えることや人材育成の考え方▽生産性向上の取り組み▽失業のない労働移動−などを同時に変えていく必要がある」
――働き方改革は、経営側だけの問題ではない
「ヤマト運輸のドライバー不足問題で顕著になったが、日本はデフレ社会であると同時に、『サービスは無料』という考え方が根強く、顧客の要求がシビアだ。結果、高い業務水準を求められた職場はギスギスし、従業員の労働強化が進んだ。働き方改革は本来、(人口減での生産性や国際競争力向上など)マクロ政策的な考え方で進める必要がある。しかし、今回の改革ではミクロな問題にすり替えられている」
――過労死と同時にパワーハラスメントの問題も指摘されている
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