こんにちは、店通-TENTSU-編集部です。
いつも「飲食業界で生きる人」のための情報サイト『店通-TENTSU-』をご覧いただき、ありがとうございます。
普段は飲食業界で生きる方々に経営ノウハウや飲食店業界特集、グルメレポなどのお役立ち情報を提供しているメディアです。未だにプロのライターを雇えず、全社員強制参加型超低予算メディアとしてガンバっています。
さて、そんな店通-TENTSU-編集部ですが、今回は2017年に入り世間を騒がせている「グルメンピック開催中止問題」を取り上げたいと思います。
もうすでにご存じの方も多いかもしれませんが、テレビのニュース番組や新聞、ウェブメディアでも数多く取り上げられているフードイベント開催中止に伴う、イベント主催企業と出店者間のトラブルについてです。
この問題を店通-TENTSU-として取り上げた訳は、グルメンピック被害者の会代表の鈴木亮平氏から編集部に取材依頼の連絡を頂いたからです。その際、店通-TENTSU-がメディア協賛したフードイベント『〜食の祭典〜 美味シュラン★★★』(2016年4月開催)でグランプリを獲得した、創作鉄板「粉者(こなもの)」さんも被害にあわれたことを知ったのです。
それを知った時、正直初めてこの問題が“他人事ではない”という想いなりました。店通-TENTSU-にとっては重たいテーマですが、「飲食業界で生きる人のために」、そして「今後このような被害にあわないために」、この問題に対して私たちが発信をしていく必要性を感じました。長文となりますが、どうぞお読みいただければと思います。
グルメンピック2017開催中止問題とは
グルメンピックは2017年2月13日~17日、2月20日~2/24日に東京は「味の素スタジアム」にて開催を予定。大阪は2月17日~2月24日「舞洲スポーツアイランド」にて開催を予定していました。しかし、開催の約1カ月前の1月17日に『事前説明会および開催日の延期のお知らせ』がリリースされました。
これまで開催に向けて最大限の努力を務めて参りましたが、当初から予定していた設備リース、会場施工、会場運営等の請負会社の急なキャンセルや現状況で開催するには事故や災害を事前に防ぐことが困難となり、仮に発生をした際に極めて深刻な事態となることが判明し、開催日程の延期とさせて頂きました。
グルメンピックの公式ホームページによると、延期の理由をこのように掲載していました。同時に4月頃までに見直しを行い、最短で8月末、遅くとも9月下旬に実施する予定との内容が掲載しています。
今回のイベントは延期とさせて頂き、つきましては皆様よりお預かりしました出店料を、2月末日にてお支払いをさせて頂きますことを此処にお知らせさせて頂きます。
そして、1月23日『グルメンピック2017出店料ご返金のお知らせ』では、「出店者から預かった出店料を2月末日に返金する」と告知しています。
しかしながら、その後主催者であるグルメンピック実行委員会や、イベントの総合企画を行っている大東物産株式会社から正式なリリースは無いままに、出店者達は主催側と一切連絡が取れない状態に陥ります。それに業を煮やした出店者達がSNSで連絡を取り合い、被害者の会を結成しました。
そんな最中、イベント総合企画者の大東物産株式会社が2月20日、東京地裁に破産手続きの開始を申請し、破産手続き開始決定を受けました。この破産によって、2月末に約束されていた返金は無効となってしまうのでしょうか?被害者の会は、民事訴訟・刑事告訴両面から責任を問う構えで戦う姿勢を見せています。
“許せないことに泣き寝入りはしたくない。”という強い想い
この問題について、真相を確かめるべく、グルメンピック2017被害者の会代表の鈴木亮平氏に話を聞きました。
被害状況
◆2017年1月末頃から多くの報道が伝えられている中、3月末現在の被害規模はどのくらいなのでしょうか?
2017年3月末時点で把握している被害状況は、飲食店で508店舗、被害者の会に正式に参加しているのは225名ほどです。そのうち、150人以上が訴訟を起こすべく申し出てくれています。
不安が確信に変わった瞬間
◆さまざまな報道が伝えられる中、被害を確信したのは何だったのでしょうか?
1月24日・25日に予定していた事前説明会直前に、質問サイトで『グルメンピック2017が延期、詐欺なのか?』という投稿と、それに対する“詐欺の可能性が極めて高い”などの回答を見かけて不安がよぎりました。その後いろいろと考えた結果、先方にキャンセルの依頼をしました。経理の関係で即日返金には応じてもらえず、1月末の返金に応じる約束を取り付けましたが、その数日後に延期が発表されたのです。この発表を見た時、被害を確信しました。
延期が発表された後、Facebookで出店予定者たちと情報交換を開始し、被害者同士のコミュニティが形成されました。延期を知らない出店予定者が説明会会場に来る可能性を危惧し、現地に足を運びました。その後会場を別に移し話し合いの場を設け、その数日後に私が代表者に就きました。
被害者の会、代表を務めた理由
◆これだけ多くの人が参加する被害者の会、相当大変な活動になることは間違いありません。なぜ、代表者を務めたのでしょうか。
泣き寝入りをして、このまま事件を風化させたくありませんでした。人を騙したけど何の罰則もなければ、それを模範した手法により、同様の被害がでる可能性があります。また、正しく開催している人が疑いの目で見られてしまうかもしれない。それが許せませんでした。
仕事を抱えながら活動することは簡単ではありませんでしたが、誰かがやらないといけない、誰かがやらないと始まらないと思ったので代表を務めることにしました。
被害にあってしまった原因
◆なぜ被害にあってしまったと感じていますか。
昨年(2016年)の夏頃、全国的にパンフレットの送付と電話での勧誘があり、“通常出店料40万円のところ、特別枠として20万円で出店しませんか?”との誘致が始まりでした。今までイベント出店の機会がなかったので、フードイベントに出店経験のある知り合いに聞いてみたところ“20万だったら安い”と聞き、出店しようと決心しました。おそらく、40万円だったら出店を決めていなかったと思います。
初めてなので、返金保証制度という甘い言葉にも乗せられたのが原因かもしれません。主催する会社がどんな会社か分からなかったのですが、資本金が1億1200万ある会社なので、“返ってくるだろう”という安心感と、”返金するって謳う位だから逆に成功させる自信があるんだろう”という思い込みが原因でした。“商品に満足できなかったら返金します”という、消費者の心理を突いていると感じました。
※出店者向け営業パンフレットには「イベント当日、売上が75万円に満たなかった場合は出店料を返金する」記載されていました。
今後、被害にあわないために
◆店通-TENTSU-として飲食業界全体に最も伝えたいのは再発防止です。今後、被害にあわないためにどうすればいいのでしょうか。被害の状況を振り返り、気をつけるポイントを伺えますでしょうか。
自分を含め、ほぼ皆さんが「ちょっとあやしいけど、大丈夫だろう」で進めてしまっていたことに対して、これからは「かもしれない」と考え、進めることが最大の再発防止になるのではないでしょうか。具体的には“イベント開催に対する情報の裏付け”を取ることが重要だと思います。
1.イベント開催について、開催地管轄の保健所に問い合わせをする。
2.イベント開催の後援・協賛として行政や自治体、もしくは国が入っているのか。
3.協賛会社が実績のある企業なのか。または大手企業でなければ実在するのか。
4.後援・協賛についている企業・組織・団体にイベント開催の確認が取れるのか。
5.関係企業・組織・団体がイベントの告知を積極的に行っているのか。
今後、フードイベントに出店する際は、これら5つに限らず不安や心配なことは1つ1つ裏取りしながら確認していくことが最大の再発防止策だと思います。
最後の質問「今後、フードイベントに参加しますか、しませんか?」
そして、最後に鈴木氏に聞いてみました。今回の問題がどうなるかは別として、今後フードイベントがあるとしたら『参加しますか?、参加しませんか?』という質問に対し、鈴木氏は迷うことなく答えました。
参加してみたいですね。自分自身のお店のウリは持っているので、勝負してみたいと思ってます。
当面は被害者の会の代表として、大東物産とその役員、グルメンピック運営、企画に深く関与していた関係者全員に対して、民事・刑事両面で判決を出すこと。その後、被害者の会のみんなと、今回できなかったフードイベントができたらいいかな?それが私の願いです。
そう語り、インタビューは終了しました。
今回の取材から伝えたいこと
ここまで、被害者の会代表である鈴木氏にインタビューしてきて、店通-TENTSU-編集部として改めて感じたことをお伝えして終わりにしたいと思います。
ここ数年、季節によっては毎週のように開催されるようになったフードイベント。今回のグルメンピック開催中止問題は未だ何も解決された訳ではありませんが、ここから学ぶべきはイベントに参加(出店)する目的や狙いは何なのか?を今一度、考えなくてはならないということです。
『お店をPR(アピール)すること』、『売上や利益を上げること』、『グルメ勝負で勝つこと』など目的は様々だと思いますが、「大きなイベントがあるから」という理由ではなく、そのイベントが目的にそっているものなのか?を考えると同時に、開催に至るまでの裏取りや開催されないリスクも踏まえ、『何かあるかもしれない』という気持ちでイベント開催その日を迎えてほしいと思います。
そして、フードイベントの誘致があった際は『特別枠』など、あたかも得するような提案は1度疑ってみて、周りの業界関係者に相談してみることが大切だと思います。また、フードイベントに出店を決めた際は、事前に裏取りが必要な5つのポイントを確認しながら準備を進めていくことで不安が安心に変わっていくかもしれません。
今後、このような問題が二度と起こらないことを願っています。
今回の問題がイベントを主催する側にとっても、非常に重要なファクターになることも間違いありません。逆に言えば、開催までにしっかりと情報を公開(告知)し、不安をクリアにすることが参加者から求められるのではないでしょうか。