現存しないシダレザクラ 「見ごろ」と紹介

2012年4月25日誤報レポートメディア:ジャンル:

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【毎日】2012/4/10朝刊・茨城「シダレザクラ 見る角度で樹姿が変化」 茨城県指定天然記念物のシダレザクラが見ごろを迎えていると桜が満開になっている写真とともに報じられた。しかし、実際は、前年の台風で倒れて現存しておらず、写真は前年のものを使い回していた。

毎日新聞は、2012年4月10日付朝刊の茨城県版地方面で、「天然記念物を訪ねて」のコーナーで「シダレザクラ 見る角度で樹姿が変化」の見出しをつけ、翠巌山向上庵にある県指定天然記念物のシダレザクラが見ごろを迎えていると報じ、満開になった様子の写真も掲載した。

しかし、このシダレザクラは、2011年9月の台風で折れており、その後は切り株だけの状態になっていた。

毎日新聞は、2012年4月12日付朝刊で、写真と記事を削除するとのおわび記事を掲載した。

 


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シダレザクラ 見る角度で樹姿が変化

 

春がすみの漂う中を、小野小町伝説で知られる「小町ふれあい広場」から北東の山辺の道をたどる。訪れる先は1349(貞和5)年創建という翠巌(すいがん)山向上庵だ。進むにつれて北側に山地が迫るが、南側は緩やかな傾斜地で眺めがよい。

たどりついた寺院の境内は花見客でにぎわっていた。本堂のある台地へ行くには自然石の急な階段なので、一歩一歩足元に注意する。石段を上るにつれて、右手上方にそびえるシダレザクラの角度が違って見え、樹姿の向きと高さが変化するので面白い。

シダレザクラは台地上の本堂前に植えられていた。地上約3メートルから幹がう二つに分かれ、薄い紅色の花びらを付けた枝が南側の崖に向かって垂れ下がり屈曲した様子は、シダレザクラの典型的な樹姿を示す。高さ約10メートル、幹回り約3.1メートル、枝張りは約15メートルで、樹齢は約300年と推定。指定名は単にシダレザクラという。

開花の時期は気温などにより多少違いがあるが、4月上旬から中旬にかけて見ごろという。開葉に先だって花が小枝の先までびっしりと咲く。昔、旧新治村高岡の古刹(こさつ)法雲寺から移植したものと伝えられる。

【アクセス】(略)  文・写真 山崎 睦男

(毎日新聞、2012年4月10日付朝刊、茨城県版地方面)


evidence
  1. 翠巌山向上庵のシダレザクラは2011年9月の台風で倒れ、切り株だけになっている

  2. 記事執筆者が「現地を確認せずに執筆した」と話し、写真は2011年に撮影されたものであることを認めた

シダレザクラは、2011年9月21日、台風の影響で、地上約5センチのところから斜めに折れ、切り株状になっており、天然記念物指定解除が検討されている。

向上庵は、茨城新聞などの取材に対し、「記事を読んで来られる方がいて、お気の毒だと思う」「事前の取材はなかった」とコメントしている。(1)


source

<初掲載>
2012/4/25 04:50