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 放射線は人体にどんな影響を与えるのか。その調査を目的とした原爆傷害調査委員会(ABCC)が広島に設立されて70年。朝日新聞社は、研究を受け継いだ日米共同運営の機関「放射線影響研究所」(放影研)の許可を得て、通常は見られない健康調査の様子や、試料、診療録など被爆者の膨大なデータが集積された非公開のエリアを取材した。

 広島の市街地を見下ろす比治山山頂に、かまぼこ形の建物がいくつも連なる。広大な放影研の敷地は約2万3千平方メートルに及ぶ。

 1月下旬、広島市東区の被爆者、河野昭人さん(90)はここで、2年に1回の成人健康調査を受けた。がん以外の病気の発症と放射線量の関係を調べるのが目的で、身長や体重の測定、X線や超音波の検査をする。通常の健康診断とほぼ変わらないが、職員が調査内容を書面で示し、血液や尿を保存して調査に使うことなどに理解を求める。

 「血液から遺伝子を取り出して解析させていただきます」

 河野さんは採血などの後、「診察室1 EXAMINATION ROOM1」などと書かれた部屋が並ぶ健診エリアに入った。同意を得て採取された血液や尿は、2015年春に導入された超低温保管庫「ロボット式フリーザー」(長さ12・6メートル、幅3・5メートル、高さ2・8メートル)で長期保存される。

 ロッカーのような保管スペースがずらりと並ぶ庫内に、試料入りの容器トレーを入れると、容器に記されたQRコードに従ってロボットがトレーを運び、該当の場所へ。ロボットの移動スペースは零下20度、保管庫内は零下80度に設定されている。

 これまでは放影研内の研究部門…

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