対シリア強硬政策に踏み切ったトランプ大統領は晩餐会後の6日夜の緊急記者会見で「シリアの独裁者アサド」と敬称抜きで強く批判したが、奇しくも北朝鮮労働党の機関紙『労働新聞』(7日付)は一面トップに金正恩委員長がアサド大統領に送った祝電全文を掲載した。
アサド大統領率いるアラブ社会復興党創立70周年への祝電である。
同祝電は「今日アラブ社会復興党はあなたの指導のもとに、内外の敵対勢力の悪辣な挑戦と侵略策動を果敢に粉砕し、国の自主権と領土完備を守るために断固闘争しています。私はこの機会に、アラブ社会復興党とシリア人民の正義の闘争に再び固い支持と連帯を送りながら反帝国主義のための共同闘争の中で、結ばれた私たち二党、両国人民の間の友好・協力関係が今後継続・強化・発展されるという確信を表明します。」と結ばれている。
何たる皮肉なのか。
よりよって金委員長がアサド大統領に祝電を送っていたのだ。まさに北朝鮮の核・ミサイル開発阻止が主要議題となるトランプ・習金平会談の真っ只中のシリア攻撃は、金正恩委員長への強烈なメッセージになったと言える。
こうした中で注目すべきは、日本の新聞、テレビ、通信社などマスコミ各社の約60人が4月11~21日まで北朝鮮の首都ピョンヤンを訪れることだ。4月15日の故金日成国家主席生誕105年記念式典取材のためである。
よもや北朝鮮は日本メディアがピョンヤン滞在中に核実験強行や大陸間長距離弾道ミサイル(ICBM)発射を行うとは思えないが、常識が通じない金正恩委員長相手だけに先行きの見通しは立てにくい。
仮に北朝鮮が25日の人民軍創建80周年式典(軍事パレードが実施される)直前に核実験かICBM発射を断行すれば、トランプ大統領が軍事力行使による「敵基地攻撃」か「金正恩斬首作戦」を決断する可能性が圧倒的に高くなった。
そして確実なことは、米国によるシリア攻撃のさらなるエスカレーションがあるなしに拘わらず、安倍晋三内閣の支持率が上昇するということである。
しかし、トランプ政権が対北朝鮮軍事力行使に踏み切った時には、安倍首相はトランプ大統領から間違いなく「応分の協力」を求められることを覚悟しなければならない。