仕事と育児の両立に試行錯誤

 子育てをする女性にとって、働くというのは一筋縄ではいかない現状を知り、慎子さんに息がつまることがないか聞いてみた。

「仕事の息抜きは子育てだし、子育ての息抜きは仕事だし、今はいい循環ですね」。

 母は強し。父親が1日子どもと一緒にいるとぐったりしている姿は想像に難くないが、慎子さんにとっては仕事も育児も人生で欠かせないとのことだ。でも本当に息抜きは必要ないのかと聞くとそうでもないらしく、週末に、夫婦2人でビールやワインを飲むのが楽しみだという。慎子さんも健作さんも週末のために、珍しいものや新しいものを見つけては、何をつまみにして飲むかと日々リサーチをしている。この瞬間だけは、時計の針がゆっくりと進むのを感じながら仕事も育児も忘れてグラスを傾けている。

 裁判官には全国転勤の可能性はある。子どもが大きくなれば日に日にその可能性は大きくなるだろう。だから今のような体制での子育てが、いつまでできるかわからない。しかし、慎子さんは、家族との時間も、裁判官としてのキャリアも大事にしていきたいと考えている。子育て中のママとしても裁判官としても、慎子さんの試行錯誤の毎日はこれからも続いていく。

◆中馬慎子(ちゅうまん・しんこ)
1985年生まれ。30歳。東京都出身。東京大学法学部、東京大学法科大学院、司法修習を経て、2012年に裁判官に任官。2014年に長男を出産し、育児休業を経て2015年に復帰。学生時代に野球部のマネージャーや東京ドームでビールの売り子をしていたほどの野球好き。茶道も趣味。

(文・山田恵介/THE EAST TIMES)