4月になり、
「新社会人」のニュースを目にするようになりましたね。

この時期になると10年以上前に、
「スイミングインストラクター」をしていた時の
教え子たちの事を思い出します。
だいたい当時の教え子の年齢が
「3歳~12歳前後」でしたから、
今年社会に出て「新社会人」になった子もいるでしょうね!

みんな元気でやっているのだろうか?
月日が経つのは早いものですね・・・・・・。
あれは今から10年以上前、
子供達に水泳を教えていた私の目の前には、
「石像のように固まって」動かなくなった男の子がいました。

これは・・・なぜか・・・・突然「そう」なるのです。
理由はわかりません。
いつもは明るい男の子ですし、
いままで普通に喋っていたのに、突然「石化」するのです。

顔を覗き込むと、
その表情は笑っているようにも見えるし、
悲しそうにも見える・・・・。

なにやら「不思議な表情」をしていました。
この子が・・・何を考えているのかわからない・・・・。
「大丈夫?どこか痛いの?」と
心配して声をかけますが、全く反応がありません。
時々「こう」なるのですが、
これには参った・・・・。
まぁ放っておけば数分で元に戻るのですが・・・。
しかも、この子のお母さんは過保護な人で、
いつも外のガラス越しに心配そうに練習風景を見ているのです。

そして何かこういうトラブルがあると、
練習後に
「うちの子は大丈夫でしょうか!?」
と泣きそうな声でスクールに電話を入れてくるのです。

気持ちはわかるのですが、何度も電話されると困ります。
そしてそんな電話をもらって以来、
なんだかいつも背中に親御さんの
突き刺さるような視線を感じるような気がするのです。

なんだか妙にプレッシャ-がかかる。
しかし生徒はこの子だけではありませんから、
時間とられている場合ではありません。
「決められたメニュー」を
時間内にこなさなければいけないのです。

もしメニューをこなせなかった場合、
また別の親御さんからクレームが来る恐れがあります。笑
一生懸命「岩になった男の子」に話しかけますが、
相変わらず全く反応がありません。

もうそっとしておくしかない。
そうこうしているうちに、
「コーチ、おしっこ!!!!」と
トイレを要求する子供が現れます。

幼い子は一人で「おしっこ」に行けないのです。
(練習の前にトイレに行ったじゃないか・・・・)
そう思っても、子供たちの尿意は止められません。
一人が「おしっこ宣言」をすると、
「ぼくもー」「わたしもー」と
おしっこ志願者がゾクゾクと現れます。

この子達を連れて、今すぐトイレに駆け込みたい所ですが・・
それは出来ません。
なぜなら、
このクラスには「凶悪なモンスター」が潜んでいるからです。

このモンスターを残して、
私がクラスを離れるわけにはいかないのです。
もう・・・これは他のコーチに
トイレに連れて行ってくれるように頼まなければ・・・。
そう思って他のコーチを呼びに行こうとすると、
カラダの大きな男の子が
「ねえねえコーチ!きのうねぇー!」
と満面の笑みと、物凄い大きな声で話しかけてきます。

そして腕に絡みついてきます。(かなり力が強い)
タカシだ、
カラダの大きいタカシは小学校6年生の「自閉症の子」で
半年ほど前から私のクラスにだけ通っている子です。

彼はいつも無邪気にニコニコしています。
このタカシは年の割に「かなり幼い印象」を受けましたが、
天真爛漫で、とても良い子でした。
これは・・・・
この子のお母様が愛情深い立派な人だったからだと思います。
そう思ったのは・・・・
タカシのお母様が「タカシの服装を直している所」を見た時です。

こう・・・・うまく言えないのですが、
そのタカシの服装を直す仕草が、
妙に丁寧で優しく見えたのです。
その様子を見た時に、
(ああ・・・この人はタカシに物凄い愛情を注いでいるんだなぁ)
と思ったのです。

そしてタカシには、
お母様のように優しい妹が同じクラスにいます。
いつもタカシが私に絡みつくと
「こっちおいで」と
タカシの手を繋いで私から引き離してくれるのです。

タカシの妹もお母様と同じように、
タカシを呼ぶ声や仕草にも
「面倒くさそうな感じ」とか、
「イヤそうな感じ」は一切なく愛情が込められていました。
2人は本当に仲が良いのです。

何というか・・・そのやりとりを見ているだけでも
なぜか・・胸が打たれるのです。
そしてこの時、
私は完全に油断していました。
一人の女の子がスッと立ち上がり、
股間部分の水着を横にズラすと、

そのままプール溝の排水口に
股間から放水を始めたのです。

ジャバジョババーーー
(ヤバイ!トイレ忘れてた!)
プールに大量に「放水された尿」が流れ込みます。
それを見た子供たちは「あっはははは」と大爆笑をはじめます。

ぜんぜん笑い事じゃない!!!
緊急事態です。
私は手をパンパンッ!と鳴らして、
みんなをビートバンの上に座らせます。

そしてオシッコに行きたい人と、
放水した女の子を連れて、すぐにトイレに駆け込みました。

ピューン
すぐ女の子の水着を脱がせて、
シャワー室でシャワーを浴びさせます。
その間に私はオシッコまみれの女の子の水着を
ジャブジャブと洗います。

急がなければ・・・・・
子供たちを放置し続けるワケにはいきません。
しかし・・・・・・・
急いでみんなの所に戻ると、
案の定「モンスター」が暴れておりました・・・・・。

モンスターは、
小さな男の子の顔をプールに押し付けて遊んでいます。
目を離すとコレをやるのです。
モンスターの名前はタケル、
ぽっちゃりとした体型の小学5年生。

タテにもヨコにも・・とにかくカラダが大きい。
※ちなみに5年生にもなるタケルが、
私の請け負っていた初心者クラスにいた理由は、
私の上の階級を受け持っているコーチから
「絶対進級させるな!」
と釘を刺されていたからです。笑

(みんな問題児のタケルを受け持ちたくなかったのです。)

小さな男の子を溺れさせようとするタケルを見て、
私はすぐに「タケルやめなさい!」
と大声を出して止めに入りました。

私はめったに大声を出さないので、
みんなビクッとします。
タケルもとりあえずは止めてくれます。
しかし、タケルは私が目を離した瞬間に
人の足を引っ張ったり、突き落としたり、
どうにかして人を溺れさせようとするのです。

彼のそれはもう・・・・・
「子供の遊び」と呼べる範疇を超えていたと思います。
軽く言えばイジメっ子・・・・というんですかね?
モチロン目に入れば、しっかり注意はします。
しかしタケルは、私が口で注意するだけで、
(どうせコイツは何も出来ない・・・)そうわかっているから
イジメを絶対に止めてくれません。

彼はみんなが嫌がる姿を見るのを心底楽しんでいるのです。
その下劣な人間性を見ていると・・・・
殴りたくなってきます。

私は・・・・おかしいでしょうか?
教育に暴力はいけない事でしょうか?
私は彼の行為が、どうしても許せませんでした。
しかし・・・彼のイジメがエスカレートした時、
私が暴力を振るう事はありませんでした。
なぜなら・・・・
彼の耳元でそっと「魔法の言葉」を言うだけで良いからです。

「お母さんに言うよ?」
それを聞いただけで彼は、
小刻みに震えだし
「それは・・・・やめて・・・ごめんなさい」
と泣き出しそうになるのです。

これは先輩に教わった「タケルを止める魔法の言葉」です。
彼にそっくりな、
彼のお母様は恐らく、
彼に酷い暴力を振るっているのでしょう。

だからタケルも暴力を振るう。
いや・・・・・・暴力を楽しむ。
たぶん・・・・・それだけのシンプルな話です。
しかし、タケルの暴力を止めるためとはいえ、
この「魔法の言葉」を使うのは卑怯なやり方だったと思います。
なぜなら結局私も・・・
彼のお母様の暴力の力を借りているだけなのですから・・・。

自分の手を汚さずに、暴力を振るっているのと同じだ。
問題は何も解決出来ていない。
暴力で解決するのなら、自分の手で殴るべきだっただろうか?
いや、そもそも暴力はいけない事なのだろうか?
話し合えば解決できたのだろうか?
・・・・・・未だに私にはわかりません。
だから私には子供を育てる自信がありません。

そんな彼も、
もう・・・社会人として働き始めているのだろうか?
想像力の乏しい私は、
どうしても社会人になった彼が、
部下や後輩を虐める姿を想像してしまいます。

もしそうだとしたら・・・
その責任の一端は私にもあるでしょう。
彼が一人の責任ある社会人として、
今を生きている事を心から願っています・・・・・・。
おしまい
