積立NISAとは?
金融庁主催の積立NISA説明会に行ってきました。金融庁内で説明された内容を、簡単にまとめておきます。
年間投資上限 | 40万円 |
保有期間 | 20年 |
開始年 | 平成30年1月 |
投資対象商品 | 投資信託・ETF |
現行NISA併用 | 年ごとの選択可能 |
ズバリこういうことです。年間投資上限は40万円です。保有期間は20年ですが、途中で売ることもできます。つまり現行NISAとの年ごとのスイッチングが可能です。今年は積立NISA、来年は現行NISA、また次の年は積立NISA、というような運用ができます。
ですから、現行NISAで買っている商品を解約あるいは売却しなくても始められます。
開始年は平成30年1月1日からです。
積立NISAの投資対象商品
投資対象商品は投資信託・ETFです。個別株は対象外です。
元本を食いつぶすような毎月分配を行っていたり、債券中心の投信は投資適格になりません。株式市場での資産運用、資産増加を目指すものだからです。また、毎月分配の元本毀損は複利に大きな悪影響を及ぼすので妥当です。
インデックス投資信託の場合
- 金融庁指定のインデックスに連動している
- 株式を含む投信
- 販売手数料が無料(ノーロード)
- 信託報酬・経費率が明らか。国内株投信0.5%、海外株0.75%以下。
現段階でこれに該当するインデックス投資信託は数十本しかないということです。
アクティブ投資信託の場合
- 純資産額が50億以上
- 5年以上の運用歴がある
- 株式を含む投信
- 販売手数料が無料(ノーロード)
- 信託報酬・経費率が明らか。国内株投信1%、海外株1.5%以下。
現段階でこれに該当するアクティブ投資信託は5本程度しかないということです。
インデックス投信、アクティブ投信、何千本もあるうちの数十本しか適合しないというところに投信の特徴が如実に表れています。つまり、トレンドに合わせて組成して、買わせ、すぐに売却させて、新しい商品を組成して、また買わせる。こういう商品が多すぎたということです。
金融庁が明確にこういう投信を排除したところに「思い」を感じます。
ETFの場合
- 指定されたインデックスに連動している
- 株式ETF
- 販売手数料1.25%以下
- 信託報酬・経費率0.25%以下
- 最低取引単位が1000円以下
最低取引単位が1000円という要件があります。これは、積立NISAでは米ドルで購入できるETFが殆ど無いことを意味します。米国市場上場のETFは積立NISAでは買えないということです。
万一対応した商品、1000円以下のETFが販売されれば米ドルでも買えます。しかし、米社がわざわざ日本の積立NISAに適応した商品を開発するとは思えません。また、SPYの東証上場版の1557も20000円を超えていますから、対象外です。
既存の質の高い商品が買えないという、「最低取引単位が1000円以下」という要項は意図がいまいちつかめません。この要項は無いほうが良いです。特に米ドルで買える海外株ETFはほとんど無いと思って良いでしょう。
積立NISAから伝わる金融庁の思い
資料のキャプチャーはダメ、と言われていますのでテキストで書きます。
アメリカやイギリスに比べて家計金融資産の貯金に占める割合が圧倒的に多いのが日本です。実に50%以上が現預金です。約1700兆円といわれる家計金融資産のうち、約900兆円が現預金ということになります。
この900兆円が投資に回り、経済の持続的成長につながるようにしないと日本の将来は無いと金融庁の方が言われていました。私もそう思います。もし、900兆円の現預金が投資に移行していけば、
- 中長期的に安定的なリターンが実現すれば、家計金融資産が増加する
- 株式市場への資金流入、外貨買い需要が生まれ、株式・為替市場が安定する。これは成長資金の安定供給を意味する。
ということです。
この20年で現預金や株式などの家計金融資産はアメリカが3倍超、イギリスが2倍超です。それに対し、運用リターンの乏しい日本は1.47倍でしかありません。勤労と預金以外の資産獲得手段を持たないと、このような現状になるのは必然です。
ただし、日本の場合はアメリカやイギリスに対してあまりに金融商品が酷すぎました。また、個別株にしても株主利益が守られないケースが多々あったので現預金以外に運用先が見つからなかったという側面もあるでしょう。
今後はなるべく多くの人に投資に親しんでほしい、持続可能な資産運用をしてほしいという願いが確定拠出年金や積立NISA創設に繋がっていることはいうまでもありません。この数年の金融庁の消費者への働きかけは出色です。
その最前線の関係者のお話を伺い、熱意に触れることができたのは価値あることでした。積立NISAに関わる各種の制限はそういう熱意の表れ、良い商品を消費者に購入してほしいという願いの表れの1つだと解釈しています。
日米の投資信託の残高上位5本を比べて分かること
販売手数料 | 信託報酬/年率 | 収益率/年率 | |
日本 | 3.20% | 1.53% | ▲0.11% |
アメリカ | 0.59% | 0.28% | 5.20% |
※金融庁資料から作表
アメリカが販売手数料も信託報酬も低いのに対し、日本はいずれも5倍以上もかかります。一方、収益はマイナスです。アメリカは年率5.20%です。これは日米株取引をしてきた私からすると実感通りの数字です。
配売手数料と信託報酬で収益を上げ、運用で勝負ができない。それが、今までの日本の大多数の金融機関でした。初心者ほど米国株のほうが簡単だという根拠がここにあります。
今回金融庁がこうしたデータを多く示してきたというところに意味があります。消費者と金融機関にとって良い方向へいくきっかけに積立NISAがなると良いと思います。
金融庁で懇親会もあった
そのまま会議室で懇親会がありました。説明会のとりまとめをされた虫取り小僧さんに深謝します。個人凍死家テリーさんやtakachanさんとお話できたことも貴重な体験でした。
そのあと、帰り道が一緒だったアメリカ株ブロガーのはちどうきゅうどうさんと新橋で2人で飲みました。ハイボール3杯、素晴らしい出会いと話に感謝です。話の中身は驚くほど軽くて、金融庁内での話とガラリと変わりました。
新橋米株研究会を立ち上げ、継続していこうという話になりました。ただ、私たちはゆるいところがあるので具体化するか分かりませんけどね。
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複雑な保険商品は信託報酬が明示されないことで内容がお察しです。
懸念は的中しましたが、今後の改善に注目しています。
近年の金融庁はフットワークが軽く、柔軟な印象を受けます。
ここで示された考えが踏襲されています。