■中国メーカーがあおる「排他的愛国主義」
中国の消費者の多くが反韓ムードで韓国車の購入をためらう状況で、現地の自動車メーカーは商業的な「排他的愛国主義(ショービニズム)」をあおり、「THAADマーケティング」を展開している。中国の地場メーカーA社は、韓国車をいったん注文してキャンセルすると、芳香剤など「愛国プレゼント」を贈るキャンペーンを実施。B社は自社のモデルに「韓国ブランド反対」という旗を掲げた。ドイツのフォルクスワーゲン(VW)のディーラーは、韓国車を売却してVW車を購入すれば、3000~1万6000元(約4万8000-25万7000円)の割引を行う販促キャンペーンを開始した。
大林大自動車学科の金必洙(キム・ピルス)教授は「尖閣紛争当時、日本の自動車メーカーが販売台数を回復するのに6カ月程度かかった。現代・起亜自も当面の販売減に備えるべきだ」と指摘した。
■これといった解決策なし
現代・起亜自は緊急事態だ。中国は現代・起亜自の販売台数全体の23%を占める最大の市場だからだ。鄭夢九(チョン・モング)現代自グループ会長は3日、役員会議を開き、THAAD問題による影響について報告を受け、速やかな対策立案を指示した。現代自幹部は「これといった解決策がなく、これまでよりも危機感が大きい」と語った。現代・起亜自は今年、中国での販売目標(195万台)の下方修正が避けられない。ただでさえ3-4年前から中国市場でのシェアが低下しており、THAAD問題が与える影響は大きい。今年2月時点で現代・起亜自の中国市場でのシェアは5.7%で、好調だった14年の10%台に比べ半分にまで落ち込んだ。追い打ちをかけるように、第2の重要市場である米国でも販売台数が11%減少している状況で、中国市場の不振によるショックはなおさらだ。
産業研究院のイ・ハング上級研究委員は「THAAD問題は企業がコントロールできるものではないが、競争力がある製品の発売、顧客の信頼構築に向けた社会貢献活動の強化など克服策を立てる必要がある」と述べた。現代・起亜自は中国で先月発売した「悦動」を含め、今年は6つの新モデルを投入すると同時に、キャッシュバックを検討するなど、マーケティングを強化する方針だ。