【ベルリン支局】欧州各国は7日、シリアの空軍基地に対する米国のミサイル攻撃に対し、理解や支持を示す見解を相次いで表明した。アサド政権による化学兵器の使用は容認できず、国連が対応策を打ち出せない現状ではやむを得ないとみているためだ。ただ、シリア情勢の混乱が深まれば欧州の難民問題にも悪影響が及びかねず、各国は警戒も強めている。
ドイツのメルケル首相とフランスのオランド大統領は7日朝の電話協議で、シリア情勢と米国によるミサイル攻撃を話し合った。両首脳は「(シリアの)アサド大統領にすべての責任がある」との声明を発表した。アサド政権による化学兵器の使用を強く非難し、国連への働きかけを強めていく考えを示した。
欧州連合(EU)のトゥスク大統領も7日、ツイッター上で「EUはシリアでの残虐行為を終わらせるために米国と協力する」と指摘した。
英国のファロン国防相はBBCの番組で「英国政府は米国のミサイル攻撃を全面的に支持する」と踏み込んだ。米国による攻撃を事前に知らされていたと明らかにしたうえで「かなり限定された適切な行動だ」と述べ、米の行動を評価した。
欧州各国は米国の行動に理解を示しつつ、先行きへの警戒も強めている。シリア情勢の悪化が、難民問題の深刻化につながりかねないためだ。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によるとシリアからの難民はこの6年で500万人を超えた。2015年にはトルコや地中海経由で欧州に押し寄せる難民が政治問題になり、各国で極右勢力が台頭する引き金にもなった。
難民問題のいわば起点であるシリアの停戦や和平に向けては、2月に国連主導の協議がようやく動き出したばかり。難民問題の沈静化への期待も少しずつ高まっていただけに、混乱が再び広がり始めたことへの警戒も大きい。
シリアからの難民問題が再び深刻になるリスクもある。フランスは4~5月に大統領選挙、ドイツは9月に議会選挙を控えている。仮に難民問題が蒸し返されるような事態になれば、反EUを唱えるポピュリズム(大衆迎合主義)政党の追い風にもなりかねない。
一方、中国外務省の華春瑩副報道局長は7日の定例記者会見で、米軍のシリア攻撃について「関係各国が冷静さと自制を保ち、情勢がさらに緊張するのを避けるよう希望する」と語った。「中国は一貫してシリア問題の政治的な解決を主張してきた」とも述べたが、米国を直接批判するのは避けた。