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マイオドールとお出かけ(2)
ニクのかわりに解放されたマイオドールがやってきた。
木陰で休んでいた俺の隣にハンカチを敷いて、座る。
「ふぅ……まったく、あの子たちは手加減がなくて大変です」
「まぁ、そういうものですよ」
そう言うマイオドールの声は弾んでいた。自分と同年代の子供と遊ぶのはやはり楽しいという事なのだろうか。
「ここの子たちは、大半が親が冒険者だった子たちなのです」
「へぇ……」
だった、ということは、孤児という事はまぁ、そういうことだろう。
もしかしたらウチのダンジョンの犠牲者の子供も居るかもなぁ……と、そう考えると少し複雑な気分だ。
少し休み、一息ついたところでマイオドールは俺に向かって訪ねてきた。
「……あの、ここはわたくしが支援している孤児院なのです。ケーマ様はどう思いますか? ただの人気取りと思われますか?」
「人気取りのつもりでやってるので?」
「いえ! わたくしはそのようなつもりはないです。ただ、そう言う人もいるのです」
「ならいいのでは?」
俺がそう言うと、マイオドールは少し安堵したようだ。
「孤児院自体は前からあったのですが、わたくしが支援してから御飯が増えたとあの子たちが笑顔で話してくれました」
「飢えないのは、子供達にも良いことですね。よかったじゃないですか」
「はい。……あの、ケーマ様。わたくし、結婚してもここへの支援は続けたいと思っているのです」
「すれば良いじゃないですか。何か問題でも?」
「その。……お金の問題なのです。今はお金を父に融通していただき支援しているのですが、結婚したら夫に頼むことになるでしょう? つまり、ケー」
「なるほど、人にお金を頼っているのは不安定ですね。では自分で稼げば良いのでは? むしろ孤児院を使って金を稼げばどうです?」
夫=俺とか言わせねぇよ?
よし、ここは俺の懐の狭さを見せつけてさりげなく嫌われておこう。ボンオドールから神の枕の情報を得るために、嫌われ過ぎない程度にさりげなくだ。
「孤児院を使ってお金を稼ぐのですか?」
「ええ、そうすれば仮にマイ様が支援ができなくなっても、孤児院側で勝手に金を稼いで生きていけるでしょう? 俺は無駄遣いはしたくないですからね」
「しかし、孤児院でお金を稼ぐとなると……孤児を、売る?」
いきなりその発想が出てくるあたり、なんだろうね。まぁ俺もそういう感じの考えはなくはないけど。
「別に奴隷を作れと言っているわけではないですよ。もっと正当に、商売の仕方を教えてやればいい。そうすればいちいち金を出さなくても良いですからね。……屋台でもやらせたり、小物を作らせて売らせたり。畑を耕すのもいい。それこそ勝手に生きていけるなら、なんでも」
「勝手に生きていける、ですか?」
「ほっといても孤児達が飢えなくなるなら、その方が楽でしょう? 元々支援が無くてもやってたんだし失敗しても死にはしませんって。けどわざわざ手段を考えるのも面倒ですね。……そうだ、ウチの村に居る商人なら『こいつらに商売を教えてやれ』とか言っとけばきっとうまい事やってくれますよ」
ククク、俺の「孤児とか放っとけ」っぷりを見て幻滅するがいい。
「なるほど! 商人を教師として雇うわけですね!」
「ええ? まぁそういうのもアリですね」
え? 今のでそうなるの?
……こうなったらがめつさをよりプッシュだ!
「初期資金を貸して、儲けたら回収するのもいいですね。上手くいけば利子がついて増える。もしそうなればウハウハですな。まぁ失敗したらその時はその時ですが」
「ふむふむ。失敗したらただの支援だったことにすればいいのですね。商売に必要な許可とかはわたくしの方で何とかできますし、面白そうです」
領主の娘が支援するんだからよっぽどのモノじゃなきゃ許可を取り放題。孤児たちを使うことを条件に好きな商売をできるとあれば、むしろ進んで金を出す商人が居てもおかしくないんじゃないか?
あれ? これもしかして失敗する方が難しい? はっはっはそんなバカな。商売はそう簡単なもんじゃないんだ、金を渡しておけば何とかなるのはうちの商人が優秀だったからだ。
でも万一成功しても嫌だしやっぱり引き留めとこ。
「えーと。単に子供たちを遊ばせておきたいとか、支援すること自体が目的で支援する姿を見せて人気取りがしたい、っていうならお金を渡すだけの今の方がいいかもですね」
「……」
「マイ様の好きになさればいいと思いますよ。俺の仕事じゃないし」
「……そうですね、ええ」
なにやらマイオドールは考え込む。
……うーん、これうまくいったのか? 失敗したか?
面倒だ。考えても仕方なさそうだし、そろそろニクを助けに行ってやるとするか。
って、おいそこのガキ! それは俺の抱き枕だ、鼻くそくっつけようとすんな!
*
孤児院を後にした俺たちは、治安のよさそうな表通りを歩いていた。
別にお忍びというわけでもないので隠れる必要もない。堂々としていればいいのだ。
「ケーマ様、あのお店に寄りませんか?」
「ん? ……八百屋ですか」
よく見るとだいぶ前にリンゴを買った店じゃないか? あのリンゴはすっぱかった。
「何か買うのですか? リンゴとか」
「ええ。店主さん、少しよろしいですか?」
「へいらっしゃ……ま、マイオドール様! ようこそいらっしゃいました!」
マイオドールの姿を見るや否や、びしっと姿勢を正す店主。顔が知れ渡ってるあたり、マイオドールは結構頻繁に散歩とかしてるんだろうか。
「今日はそこにある果物を貰えるかしら? これで買えるだけ」
「まいどありでごぜぇやす!」
マイオドールは店主に銀貨を1枚渡した。
店主は店先から離れて店の裏に在庫を取りに行った。
「へいおまちどう! ささ、どうぞ持って行ってくだせぇ!」
そしてバナナの入った樽を持ってくる店主。……そんなに買って、配るのか? それ、孤児院に行く前に買っといた方が良かったんじゃないかな。
というか、他に付き人が居ないし、それは俺が運ぶのか? ふと横を見るとニクが任せろと言わんばかりに尻尾をパタパタさせていた。
が、直後にマイが【収納】を使って樽を虚空にしまい込んだ。
そして自慢げに俺を見て言った。
「ふふふ、【収納】を使えるんですよ、わたくし。これはおうちで食べるのですが、食べ切れないので今度孤児院に行ったときに渡しましょう」
「ほぉ、そりゃ凄い。【収納】は時間も止まっているし、腐りやすい食べ物を仕舞っておくのに最適ですな。モノを運ぶのにも便利ですし」
「……あまり驚かないのですね、それに詳しいです。【収納】を見たことが?」
そりゃ普段から頻繁に使ってるからね。言わないけど。一応かなり高価な魔法スキルらしいし。
えーっと、よそ向けの設定で誤魔化そう。
「白の女神様が使ってるのを見てますから」
「……さすがケーマ様」
そこは、さすが白の女神様、というところじゃないのか?
ニクを見ると、樽を運ぶ気満々だったニクの尻尾がしゅんと揺れていた。
そんなにバナナ運びたかったのか、よしよし。1房買ってやるから元気出せ。
(だんぼるとは全く関係ないですが、ふと思いついたのでちょっと雑な短編かきました。成長したマイオドールっぽいのが出てきます。間に合っていれば同時投稿されているはずです)
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