シンガーの職業用ミシンLW103にしました
卒爾ながら、ワタシのパンツは破れている。
公衆浴場であったとしても、人には見せられません。
眠っているとき寝返りを打ってよじれると、
夢うつつに後ろに手を回しグイと引っ張るから、
後ろの縫い目が綻びて、そこから破れるのだ。
白いキャラコのパンツは、今では売っていない。
絶滅商品だけに、破れて困っているのであった。
そうだ、キャラコのパンツを、縫おう!
そうだ、ミシンで縫えばいいのだ、と気がついた。
しかし、家に2台あるミシンは、1台は不調で、
もう1台は動かない古いポータブルシンガーで、
高かったから捨てられなかった、と気がついた。
パンツ縫いのために、修理すべきか、買うべきか…。
このごろの電化ミシンは安いけど、すぐ壊れるから、
安いミシンでは、パンツ100枚は縫えんだろう。
ここは田舎町だからちゃんと直せる人居るンかいな。
探してみたら、縫製機械一級技能士サンが1人いた。
電話をしたら来てくれて「ちょっと診てみましょう」。
「不調のほうの1台は調整でなんとかなるでしょう。
動かない1台はギヤの割れで、おそらく部品が無くて、
見つかったとしても高くて3万円ほどかかります」
あのー、パンツ100枚くらい縫いたいンですけど。
「それは、直線縫いだけでイイんですか?」
できたら、帆布でカーゴパンツも縫いたいンですけど…。
「厚物が縫える、丈夫なミシンをお望みですか?」
それと知り合いに銘機と自慢できるようなミシンを…。
「あーそれでしたら職業用ミシンですねー」
2週間後、♪ ピンポーン ♪
「十勝ミシンサービスです、遅くなりましたー」
玄関に一級技能士のヤマネさんが立っていた。
お待ちしておりましたー、
さ、さ、どうぞお上がりを。
ヤマネさんは、ミシンを3台持って見えました。
預けたミシン2台と、なにやら良さげな1台です。
熱いコーヒーを沸かして、さ、さ、コチラへ。
いやー、技術専門家の話は面白いですねー。
一級技能士さんは、コーヒーも飲まずに説明です。
「コチラの不調ミシンは釜のタイミングがズレてました。
調整して、他の部分も点検掃除をしておきました」
と云いながら、試し縫いの布でタタタターッ。
キレイに軽快に縫って見せてくれました。
不調だった電化ミシン、出す前は機嫌悪そーだったのに、
里戻りして軽々とスキップ調子で縫って行きます。
ところで、もう1台のシンガーは、どーでした?
「アチラは、割れていたギア部品がありませんでした」
「メーカーは部品ストックの8年間保管義務があるんですが、
8年過ぎると在庫があっても有るとは云いたがりませんから」
やっぱりそうですか、30年前のミシンですからねー。
探せば有るのでしょうけれど、そこまで探す値打ちが有るか?
古いミシンから部品取りをしている修理会社なら、直せる?
いちど、そんな古いミシンの大手修理屋さんに電話したら、
「直ります、部品あります、3万円ほどかかりますけど…」
さて、どーしたものか、1級技能士さんと一緒に悩みます。
「3万円なら、程度のいい中古がありますからねー」と、
ヤマネさんはいいながら、ご持参の3台めのミシンを披露。
「これは職業用のミシンで、丈夫ですから…」
スタイルの良い綺麗なミシンを見せてくれました。
あのー、綺麗ですけどコレ新品ですかー。
「いえ、シンガー職業用ミシンの17年ほど前の製品です」
ちょっと持たせてもらったら、とても重くて、オッ良さそー。
職業用ミシンと云えば、直線縫いが高速でできて、
自動糸切りとか、糸通しとかがあって…、
「いえ、そーゆー機能が付く前の、直線縫いだけの機能です」
最近の職業用はコンピュータ搭載でいろいろできますが、
「機械だけですから、何にも無いといえば、
これは無いミシンと云えるでしょうねー」
ボクはシンガーの 188 が良いと思うンですけど…。
ネットで調べた頭でっかちの知識で質問しますと、
「あれも良いミシンですけど50年前の型ですので…」
ご持参のシンガーLW-103という職業用ミシンは、
ボクがネット情報を鵜呑みにして気に入っていた型の…
『188の構造はそのまま踏襲した電動ミシンで、
新デザインですけど、コンピュータが無い分古いです」
うーん、古くて丈夫で、電子化以前のミシンだー。
キャラコは勿論、しめしめ、帆布も縫えそうだぞー。
話を訊けば聞くほど、探していたミシン本体が、
ここを目指して、来てくれたように思えます。
あのー、この中古ミシン、おいくらですかー。
そのシンガーは、1級技能士さんのところでは、
整備済みで3万円の値段が付いていたらしいのですが、
「ワタシ、商売下手ですので、2万円でイイです」
彼は、昔、ジャノメミシンの会社にいて、
技術を修得して、技能試験を受けたそうです。
この地に、他にも技能士一級の人、居るんですかー?
「どうもワタシ一人みたいなんです」
どこかのミシン会社と契約してるんですかー?
「ココにはブラザーの販売店しかありませんけど、
ワタシはまったくのフリーで修理を受けてます」
その職業ミシンの使い方の説明を受けますと、
直線縫いだけに、意外と簡単なんですねー。
試し縫い用に分厚い布を出して、コレ縫えますぅー?
トラックの幌に使う緑色の分厚くて固い帆布です。
以前、道具袋を手縫いして手こずった難物の帆布です。
「ちょっと貸してください、縫えますヨ」
薄布を縫った糸と針で、タタターッ、ササーッ。
うンまー、なんと軽々、縫っちゃうンだなー、キミは。
あまりにも呆気なさすぎて、ヤバいんじゃないソレって。
大びっくりしながら、内心、大ホクホクです。
コレ、使い方間違えて、壊れそうな箇所はありますか?
「職業用ミシンは丈夫ですから、特に無いですねー」
あのー、カレーライス食べます?
ご飯は玄米ですけど、いかが。
「いやー、申し訳ないです、いただきます」
カレーで昼食しながら、ミシンの事、ネット販売の事、
メーカーのお家事情など、根掘り葉掘り訊きます。
ミシンメーカーの栄枯盛衰の話、面白かったですねー。
そんなワケで、シンガーの職業用ミシンLW103が、
本来ならプロの仕立て屋さん御用達の銘機が、
キャラコのパンツと帆布のカーゴパンツを縫うために、
このたび、ワタシの所へ来てくれたのでした。
………夏のある日、北海道で……、
帆布のカーゴパンツを穿いているワタシを見たら、
紳士淑女諸君、ぜひお声を掛けていただきたい。
ワタシはよろこんで、
キャラコのパンツを見せるであろう。
.


むかしつくった句を思い出した・・
「下着ダサくてきょうは死ねない」
もういっちょ
「こんなに晴れてゆるゆるパンツだ」
長生きしそーで、よかったよかった。
追伸/りっぱなメモ帳とどきました。ありがとうございました。銀座のイトーヤのまえで風呂敷広げて是非売ってください。新幹線乗って買いにいきます。請求書が入ってないので、ちょっと借りておきます。ついでに、パンツはいりません。
麻布を扱っている店見つけたので、
キャラコに次は麻で作りますが、
気色良さそうなソレも要りませんか?
真っ白の無地のトランクスで前が開いたタイプを愛用していますが、
昨今、これを見つけるのが難儀です。やっとのことでネット販売の
自衛隊員ご愛用を取り寄せましたが、生地がごわごわしており大失敗でした。
エジプト綿のLLサイズができましたらぜひ買わせていただきますので、
よろしくお願いします。
エジプト綿がよろしいのですね。
そのLLですね、メモしときます。
初めまして。
近所で働いているフィリピン人の研修生から、帰国の際のお土産に中古ミシンを買ってくれと
お願いされました。彼の地では昔からSingerミシンが一般的なので、188なら丈夫だろうと思い
いろいろ調べているうちに、こちらに辿り着きました。停電が多く電圧の違いなどがネックで
電動は避けようと思いましたが、億万ページさんの記事を読んでLW103も良いかな?と・・
先ほどヤフオクでLW103を検索しましたら、マイナーチェンジしたのか?同じような型のが
何台か出ていました。問題はアフターケアなんですが、アメリカの属国フィリピンなら問題無い
でしょう??
研修生に聞いたところ、マニラなどの中古市場には日本メーカーのミシンも多いらしいのですが、
部品調達に不安らしく、有名で信頼のおけるSingerなら喜ばれるだろうとのことでした。
田舎の質屋には、質流れのビンテージSingerが沢山あるらしいです。
今でもフィリピンの田舎の仕立て屋さんでは、足踏み式の古いミシンが普通みたいです。
日本とは逆で、オーダーメイドの服は既製品より安く、貧乏人の見方だとか。
自分も経験ありますが、現地でジーンズを縫ってもらい好きなブランドのロゴを付けてもらい
値段はオリジナルの1/3以下でした。10年以上たった今でも使っていますw