モダンジャズが流行した時代、二郎は当時の若者を象徴するような男です。お金はないけれど夢はあって、家庭環境と闘いながら、プロのドラマーを目指して生きています。
正直、僕のドラム経験はゼロ。触ったこともないし、リズム感には特に自信がなかったんですが、演出家の方に「君ならできる!」って言われたのがなぜかうれしくて火がつきました(笑)。撮影前の3週間、プロの先生にみっちり時間を費やしていただいて、ただ必死で……。ジャズの裏打ちのリズムが難しいですが、ちょっとずつ体になじんできた感じです。
ジャズ喫茶『ヨーソロー』は、迷える人たちのたまり場という感じがします。ママのたたずまいに、イヤなことを忘れたり、大事な人がいることを感じられたり。すずさんを演じる江波さんの器の大きさゆえですよね。
恋人の五月とは、心の寂しさを埋めながら、寄り添いあって生きている関係です。二郎は、男らしいとはいえ自分勝手さがあって、五月に甘えてるところもあるけれど、そこは若さゆえなのかなと……(苦笑)。
今回、役作りとして、石原裕次郎さん主演の映画『嵐を呼ぶ男』を観ました。決してうわべのマネをするわけじゃないけれど、あの時代ならではの純粋な心だったり、正直でまっすぐな表現ができればいいなと思います。
家庭環境に恵まれていない五月は、ひとりですべて抱え込んできた女の子。快活に見えるのは、自分の弱さを見せないようにしているからです。
周りに迷惑をかけたくない思いが強くて、周りのひとに頼れない。すごく不器用な子なんだろうなぁと思います。
恋人の二郎ちゃんとは、似たもの同士です。夢に向かってドラムをたたく姿はもちろんですけど、二郎ちゃんの心の寂しさみたいなものに、同じにおいを感じたはず。五月は誰よりも二郎ちゃんの人生を応援していて、ジャマするくらいなら、自分を犠牲にするようなところがあります。この先、五月の不器用さが出てくるシーンでは、“もっと甘えればいいのに”って正直思うくらいです。
そんな五月が、『ヨーソロー』という居場所を見つけたのは、すずさんのおかげ。すずさんは人の痛みが分かる、心の広い女性ですよね。
すずさんを演じる江波さんは、カメラに映らない細かい動作までスタッフさんと話し合っていらっしゃるんです。ある時、「優しさは心の中に隠して、あまり笑顔を見せないほうが五月らしさが出るんじゃない?」ってアドバイスをいただいて、一気に五月に近づけた気がしました。とにかく憧れです!江波さんのオーラを、ちょっとでもいいからマネしたいと思って演じています(笑)。