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「アレッポを陥落させて、米国もアサド政権容認に傾いていた時に化学兵器を使う必要はない」といった論評が聞かれる。アサド政権側も一斉にそう行った論理を用いて述べ立てる。しかし中東の政治の現実を、上辺ではなく、社会の人間関係から見ていれば、実際にはそういった論理では動いていないことがわかる。実際は、米国が容認姿勢に傾いたからこそ、ここで化学兵器を使ってみせ、それでも米国が黙認することを反体制派に見せつけることで、どれだけ残虐な行為をアサド政権が行っても、もはやどこからも助けが来ないと思い知らせ、戦意を挫けさせる。たとえ米国が軍事行動に出たとしても、アサド政権を倒すほどの規模は考えられず、その後は「被害者」としての立場を主張し続け、その後の残虐行為を咎められなくなる。
イドリブは「アラブの春」の開始当時から一貫して反アサド政権であり、アレッポ陥落や米国のアサド政権容認姿勢などの環境の変化はほとんど影響しないことが予想されていた。あらゆる手段を用いて殲滅することが、中東の文脈では当然とされる。チェチェン紛争をまさに殲滅・焦土作戦で「解決」したロシアからも学んだ手法である。問題は、ロシアが少数派のチェチェン人を相手にして「うまくいった」手法を、シリアの多数派に対して行って本当に成功するかは怪しいところで、どうしても無理がでてくる。
前回の2013年の化学兵器使用疑惑でも、どこまで調べてもアサド政権が使用したという結果しか出て来なかった。しかし1年後の報告書の結果などほとんど誰も気にしないことをアサド政権とロシアは熟知している、最初の数日・数週間で大量のデマ情報を流し、「どちらとも言えない」と言わざるを得ない状況を作り、その場をしのぐ。検証前に攻撃を行った米国について非難してくれる人は必ず出てくる。陰謀論を言いたい人も出てくる。そういった、広い意味での人間の弱さを多面的に熟知している人たちである。
そうやって生きて来た政権であり、今後も生きていくのだろう。