2017年4月8日05時00分
安倍首相の妻昭恵氏付の政府職員が財務省に問い合わせ、籠池(かごいけ)泰典理事長(当時)にファクスで回答した行為は、職務として行ったものではない――。
学校法人「森友学園」への国有地売却問題で、安倍内閣がそんな答弁書を閣議決定した。
ファクスの発信元には「内閣総理大臣夫人付」と明記され、「本件は昭恵夫人にもすでに報告させていただいております」とも書かれていた。職員は内閣官房に常駐していた。
これが「職務」でないはずがない。だが事の本質は、それを職務と呼ぶか否かではない。
政府職員が首相夫人付の肩書で、一学校法人の要望を財務省に取り次いでいた。その背景に首相夫人、または首相官邸の影響力があったのではないか。問題の核心はそこにある。
職員の行為を「職務」と認めれば、昭恵氏の説明責任がいっそう問われる。それを避けたいがために「職務」と認めない。そういうことではないのか。
この件をめぐる首相の答弁は揺れた。職員が「勝手にやったということではない。妻に報告したと書いてあるからその通りだろう」と言う一方で、「(職員が)やるべきことを判断して行った」とも述べている。
昭恵氏についての政府の説明は無理に無理を重ねたあげく、支離滅裂になっている。
明らかに公的な存在である首相夫人を「私人」だと強弁するのもその一例だ。これも、公人として求められる説明責任から遠ざけたいがためだろう。
そもそも首相夫人が一学校法人に便宜を図るべきではない。それは首相夫人が公人だろうと私人だろうと同じことだ。
昭恵氏が昨夏の参院選で自民党候補の応援に行った際、夫人付の職員が同行していたことも明らかになった。
公私混同もはなはだしい。どうしても同行者が必要なら、たとえば安倍氏の議員事務所の秘書を伴えばいい。
昭恵氏の政治活動にも付き添い、昭恵氏の関係者の要望を官庁につなぐ。それが首相夫人付の仕事だった。実態は昭恵氏の秘書のようなものではないか。
憲法15条に基づき、国家公務員法は全職員に「国民全体の奉仕者として、公共の利益のために」働くことを求めている。
5人もの国家公務員が、安倍内閣の人事発令で「一部のための奉仕者」にさせられていた。
そうした状況のもとで、政治がゆがめられていたなら、早急に正さなければならない。
まず昭恵氏が説明責任を果たすことが、その第一歩だ。
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