昨日米国がトマホーク巡航ミサイル59発をシリアのシャイラト空軍基地に撃ち込みました。

シャイラト空軍基地はロシア製SU-22の2分隊が駐留しており、この部隊が4月4日の化学兵器(サリン)による攻撃を実行しました。

今回の米国の攻撃では空軍基地にダメージを与えたものの、シリアの洗練された地対空ミサイルは攻撃の対象ではありませんでした。そのことはアメリカが戦闘機などによる第二派の攻撃をする意図が無いことを示唆しています。

また化学兵器貯蔵庫への攻撃も控えられました。

これらのことから、トランプ政権は攻撃をエスカレートする意図は無く、あくまでも抑止のためのシグナルを送る、限定的な攻撃にとどめておきたい意思が伝わってきます。

今回の攻撃は、スティーブン・バノン首席戦略官の影響力の低下を物語っています。なぜならバノンは経済ナショナリズム(=すべての労力を、アメリカの労働者を最優先することに投入する)の立場から、無益な国際紛争への介入に反対の立場を取っているからです。

4月7日にバノンは国家安全保障会議(NSC)から外されました。これでマクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)がフリーハンドで動けるようになったわけです。

4月4日の化学兵器攻撃が起きた時、トランプ大統領の長女イヴァンカは「何の罪もない女、子供が標的にされてかわいそう!」と訴えました。

また娘婿のクシュナーは中東問題に精力を傾けています。

そんなクシュナーをバノンが「あいつはグローバリストだ」と批判し、バノンとクシュナーの間の軋轢がとても大きくなっていました。

今回、トランプ大統領がバノンの進言を無視して、サッサと巡航ミサイルによる制裁を決断したことは、トランプ政権の中でグローバリストの影響力が高まっていることを感じさせます。

それではトランプ政権内のグローバリストとは、一体、誰? ということですが、それは:

イヴァンカ・トランプ補佐官(長女)
ジェアード・クシュナー上級顧問(娘婿)
ゲイリー・コーン経済担当大統領補佐官
ディナ・パウエル国家安全保障副補佐官


などになります。特にゲイリー・コーンに関しては、「バノンが解任され、トランプ政権のNo.2に任命されるのではないか?」という観測が飛び交っています。

トランプ大統領は、下院共和党ヘルスケア・プランの交渉におけるバノンのチョンボを今でも恨んでいると言われます。またラインス・プリーバス首席補佐官の働きぶりにも不満を持っています。従って、この両方をクビにして、ゲイリー・コーンを昇格させる、ないしはケビン・マッカーシー下院多数党院内総務を首席補佐官に抜擢するという人事を検討中だそうです。

ディナ・パウエル国家安全保障副補佐官の存在もだんだん目立ってきています。



彼女はブッシュ政権で活躍した後、ゴールドマン・サックスではゲイリー・コーンの部下でした。もともとエジプトのカイロ生まれで、幼少のときにテキサス州ダラスに家族で移住しました。彼女の宗派は異端キリスト教のひとつ、コプト教徒です。

29歳のときジョージW.ブッシュ大統領のホワイトハウス人事局長に抜擢され、ブッシュ大統領、ディック・チェイニー副大統領、カール・ローブ、コンドリーザ・ライスと仕事をしました。