一昨年、日本の人口が統計開始以来初めて減少に転じた。特に15歳未満の子供の数は過去最低を記録したが、昨年1年間の東京都と大阪府でみると、転入が転出を大きく上回る「転入超」の自治体と、逆の「転出超」の自治体で激しい差がついている。どこに違いがあるのか。
総務省統計局が今年1月に発表した「住民基本台帳人口移動報告」は、昨年1年間の各自治体の転入者と転出者の差を示している。東京を例にとると、「転入超」の数が最も多い自治体は世田谷区で5841人だった。
ところが、0~14歳の子供に限ると、「転入超」は26人で、東京全体では25番目だった。
東京で子供の「転入超」が最も多い自治体は、郊外の町田市だった。全体では1946人の「転入超」で、0~14歳が808人にものぼる。
2位は町田市に隣接する八王子市。「転入超」は全体で672人。子供は488人に達している。
子供の「転入超」が多い理由について、町田市の担当者は「子育て世代に町田市の魅力を積極的にアピールした結果と考える。市外の保育園にパンフレットを設置し、電車内のデジタルサイネージ(液晶画面)で広告を流すなどの取り組みを行った」と話す。八王子市の担当者は、市内で近年、ファミリー層向けのマンションが盛んに建設されている点を挙げた。
東京23区内で最も子供の「転入超」が多いのが文京区だ。区内には東京大やお茶の水女子大などの教育機関が多数置かれる。「23区で犯罪発生件数が最も低く、交通の便もいい。加えて『文教の府』という区が持つイメージも、子育て世代が集まる理由となったと思う」と区の担当者は分析する。
半面、23区中17区は14歳以下の子供の数が「転出超」になっていた。以前は「校舎が足りない」とまでいわれた江東区は下から6番目で、最下位の江戸川区にいたっては1507人の「転入超」だったにもかかわらず、子供は734人の「転出増」という結果に。住宅ジャーナリストの榊淳司氏は「江戸川区は以前なら比較的安くマンションが購入できる土地柄だったが、資材の高騰などの影響で現在は価格も上昇している」とし、こう分析する。
「23区内でも、場所によっては治安が悪いところもある。加えて都心は収入の多くない子育て世代にとっては、賃貸にしても持ち家にしてもお金がかかりすぎる。そうした層が、町田や八王子の駅から離れた安い住宅を求めて移住しているのではないか」
一方、大阪府でも子供の「転入超」が最も多かったのは、郊外の箕面(みのお)市だった。市の担当者によると「子育てしやすさ日本一」を目指し、小中学校の通学路や公園すべてに防犯カメラを設置したり、保育園、幼稚園の受け入れ人数を積極的に増やすなどの施策が取り入れられているという。
東京同様、大阪市の区部の多くが下位に位置するなか、天王寺区と阿倍野区の子供の「転入超」が3ケタの伸びを示している点が興味深い。榊氏は「このエリアは便利で転勤族に人気がある。単身赴任ではなく、一家そろってやってくるようなパターンが数字に反映されているのではないか」と分析する。
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