昨日スティーブン・バノン首席戦略官国家安全保障会議(NSC)から外されました。

バノン排除に動いたのはマクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)です。

もともと国家安全保障問題担当補佐官はマイケル・フリン氏でしたが、ロシア問題で彼がクビになった後、トランプ大統領が急きょ起用したのがマクマスター氏です。

この仕事を受けるにあたって、マクマスター氏はトランプ大統領に対し「誰が国家安全保障会議に出席できるかは、オレが決めたい」と条件を提示していました。トランプ大統領はその要求を呑み、三顧の礼をもってマクマスター氏を招き入れました。

案の定、マクマスター氏は国家安全保障に関してしろうとのスティーブン・バノン首席戦略官がNSCに加わることを快くおもわず、彼の排除に動いたというわけです。

むかしカール・ローブがブッシュ大統領のストラテジストとして隠然たる影響力をほしいままにしましたが、そのカール・ローブでさえ、NSCに出席することは許されませんでした。

その事実を考えるとバノン氏がNSCから外されるのは、むしろ当然かもしれません。

しかし今回、バノン氏が「降格」されるにあたりトランプ大統領が全然バノン氏を擁護しなかった一因は、下院共和党ヘルスケア・プランでフリーダム・コーカスの一派と面談したとき、傲慢な態度でミーティングをぶちこわしにしたことを、いまでもトランプ大統領が恨んでいるからだと思います。

それに加えて、マスコミはバノン氏を「影の大統領」と持ち上げています。トランプ大統領はエゴの強い男なので、当然、下の者が自分よりスポットライトを浴びることを快く思っていません。

英語の格言に「Never Outshine the Master.」というのがありますが、バノン氏は、明らかに調子に乗り過ぎたわけです。


いまホワイトハウス内では二つの派閥が形成されようとしています。

ひとつのグループ(バノン派:Bannonites)は:

スティーブン・バノン首席戦略官
ジェフ・セッションズ司法長官
スティーブン・ミラー大統領補佐官
ケリーアン・コンウェイ大統領顧問
スティーブン・ムニュチン財務長官
ウィルバー・ロス商務長官


もうひとつのグループ(親族派)は:

イヴァンカ・トランプ補佐官(長女)
ジェアード・クシュナー上級顧問(娘婿)
ゲイリー・コーン経済担当大統領補佐官
ディナ・パウエル国家安全保障副補佐官


です。

下院共和党ヘルスケア・プランの頓挫は、トランプ政権の遂行能力に疑問を投げかけましたが、その責任のなすりつけ合いが、これら二つの派閥間の対立を煽っているのです。

投資家がこのエピソードから学ぶべき事は、「ビジネスマン大統領」として鳴り物入りで登場したトランプ大統領も、ひとたびワシントンDCの政治機構の中に入り込んでしまえば、そのしきたりや制約の中でしか動けないということだと思います。

もっとわかりやすい言い方をすれば、ラクショーで税制改革が成立する!というような甘い考えは、早く捨てた方がいいということ。

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