宗教法人を介した不動産取引などで法人税約1億円を脱税したとして、名古屋地検特捜部は2日、不動産会社「ジーザス」(名古屋市東区)の社長、黄元圭容疑者(55)=名古屋市天白区=ら3人を法人税法違反(脱税)容疑で逮捕した。特捜部は同日、名古屋国税局と合同で同社や黄容疑者の自宅など関係先計16カ所を捜索。特捜部は押収した資料を分析するなどして全容解明を進める。
ほかに逮捕されたのは、同社経理部門の責任者、成慶得容疑者(42)=愛知県江南市=と、ジーザスの取引先であるインターネット関連会社(東京)社長、小林良身容疑者(52)=東京都調布市=の2人。特捜部は3人の認否を明らかにしていない。
黄容疑者の逮捕容疑は、2015年5月期の1年間に約4億2700万円のジーザスの法人所得を隠し、法人税約1億820万円を脱税した疑い。
関係者によると、黄容疑者は、自身が代表役員を務める静岡県の宗教法人にジーザス所有の土地建物を売却。その際、第三者への転売益を売り上げから除外したほか、架空の外注費を計上してウソの申告をしたという。
法人税法では、宗教法人はお布施などの宗教活動は非収益事業として、収入に税金がかからない。一方、不動産や物品販売などの事業は収益事業にあたるとして課税対象となる。
関係者によると、黄容疑者は非収益事業による収入として、税務申告しておらず、特捜部は、こうした不動産取引が、収益事業に当たると判断した。
登記などによると、ジーザスは1990年12月設立。不動産の売買や賃貸借などを手掛け、売上高は数千万円規模とみられる。
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「ジーザス」などに2日、名古屋地検特捜部などによる捜査のメスが入った。
名古屋市天白区の住宅街にある同社社長、黄元圭容疑者の自宅に捜索が入ったのは、同日午前。地検の係官や名古屋国税局職員らは夜、押収した資料などを入れた袋を、車に積むなどした。