【コラム】対北政策、米国が韓国に突き付ける損益計算書

 ではこのビジネスマインドに基づく新たな対北朝鮮政策とはどのようなものだろうか。まず最初に考えられるのは追加の費用を最小限に抑えることだ。そのような観点から考えると「先制攻撃」は優先順位においてかなり後回しになるだろう。軍事攻撃はその政治的、外交的な効果や影響はさておき、経済的な側面から考えれば短期的には最も金がかかる選択肢だ。2011年に米国がリビアを空爆した際、わずか3日間に発射したミサイルの費用は2500億ウォン(約250億円)以上に達した。もしその後全面戦争に発展していれば、その費用は文字通り天文学的な額になっていただろう。そのため米国は北朝鮮が米本土を狙った大陸間弾道ミサイル(ICBM)を実戦配備する最後の瞬間まで、「先制攻撃」のカードはずっと残しておく可能性が高いはずだ。

 またトランプ大統領が北朝鮮・朝鮮労働党の金正恩(キム・ジョンウン)委員長とのいわゆる「ハンバーガーを食べながらの交渉」に臨むこともまず考えられない。北朝鮮はビジネスという側面で考えれば詐欺前科10犯の最悪の信用不良国家だ。トランプ大統領がいくら交渉の達人だとしても、このような信用ゼロ国家との1対1の交渉がもたらすリスクを考慮しないわけにはいかないだろう。

 そう考えると現時点で最も有力な代案は「中国アウトソーシング」という結果に行き着く。中国の腕を締め上げ、北朝鮮に圧力を加えさせることが米国として費用もあまりかからず、また費用対効果も非常に高い。この中国アウトソーシングは、大枠で考えればオバマ政権が進めた政策とあまり変わらないようにも見えるが、トランプ大統領はオバマ前大統領がためらっていた「セカンダリーボイコット」つまり北朝鮮と取引のある中国企業への制裁を実行に移そうとしている。またそれに伴う中国との摩擦によって生じる損失は他の同盟国に負担させる可能性が高い。外信各社によると、トランプ大統領は対北朝鮮政策を再検討するに当たり「韓国と日本は自国の防衛のためにどれだけの費用を負担しているのか」を細かく問いただす方針だという。もちろん韓米両国の損益計算書が完璧に一致することはないだろう。しかしその差をできるだけ縮めることが、今韓国の外交政策に突き付けられた大きな課題ということになる。

政治部=イム・ミンヒョク次長
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