オウム事件で使われたサリンとVXですが、ともに毒性が強く速攻致死性の神経ガスですが、どのような違いがあるか御存知ですか?
まずサリンやVXで最大の特性は、無色無臭で呼吸で肺から体内に入る以外に、皮膚からも直接吸収されて、体内で猛烈な毒性を発揮します。だからサリンやVXからの攻撃には、防護マスク以外に全身を覆う防護服の着用が必要です。もちろんサリンやVXに汚染された食べ物を飲食しても速攻致死です。 さて用法の違いは、日本ではあまり報道されませんでした。しかし軍事の専門家を目指すなら、用法の違いについても多少の知識は必要です。大学で化学を教えている先生は、サリンやVXの致死量や中毒の症状を話しても、用法の違いについて知っている先生はまずいません。 この2種類の最大の特徴〔用法〕は、揮発時間という持続性の違いです。サリンの揮発度はほぼ水と同じ程度です。しかしVXはほとんど揮発しません。ということは、一定の閉鎖空間〔室内、集結中の部隊、地下鉄の車内〕などにはサリンが効果的に使われます。しかし広範囲な空間〔広い戦場全域や都市や工場地帯〕では、サリンは空気(風)によって拡散し、短時間で密度が薄くなって致死効果が得られません。 逆にVXはほとんど揮発しませんから、野外であっても地表面や物資や施設などに散布すれば、そこを除毒しない限り使用できなくなります。だから敵が通過しそうな場所に散布すれば効果があります。またテロリストが人が集まる駅や市場などで、密かに施設や食物に散布すれば、非常に怖い状況を生みだします。同量では、サリンより VXの方が約20倍の毒性をもっています。 神経ガスの除毒には、さらし粉を水に溶かして散布機で散布する方法が一般的です。韓国軍と米軍が神経ガスの攻撃を受けた際の演習を、先月実施しましたが、防毒マスクに防護服を着けた隊員が、トラックで水溶液を散布していたのは、除毒剤のさらし粉を水に溶いたものです。 軍事知識のレベルが低いと、ついミサイルや航空機からサリンを空中から散布する話しをしますが、その場合はVXのほうがサリンよりより致死効果が高くなります。またサリンやVX製造の化学技術は、現在では決して高いものではありません。もちろん北朝鮮のように科学技術の水準が低くても、サリンとVXは100トンを超える量を貯蔵しています。サリンはオウムの地下鉄サリン事件の後で、警察庁の科学捜査研究所で捜査資料として実際に製造を行なっています。 ちょっと長くなりましたが、サリンやVXは貧者の核爆弾だといういう言葉を覚えていてください。必ず再び世界のどこかで、サリンやVXを使ったテロや内戦が起こります。有毒ガスに使われる原料の管理は、化学兵器禁止条約で厳しく取り締まる必要があります。21世紀はそんな時代になりそうです。 |