マネージャーが社員の査定に費やす時間を年間10万時間以上削減したアドビ独自の人事評価制度「チェックイン(Check-in)」をオープンソース化
米国では企業の従業員の多くが、年に一度の人事評価を受けています。しかし、アドビが米国の1,500人の会社員を対象に実施した調査「Performance Reviews Get a Failing Grade(パフォーマンスレビューに不合格判定)」によると、人事評価の多くは時代遅れで、多くの時間を費やなくてはならないストレスフルなものと認識されています。調査では、従来型の人事評価が、従業員やマネージャーから、いかに非生産的で無意味だと思われているかを明らかにしています。
調査対象となった従業員の88%は、ランク付けや数値の評価をともなう文書によるレビューなど、体系的な従来型の人事評価を定期的に受けなければならないと答えています。そして、こうしたレビューが同僚間の競争を激化させ、人間関係上のストレスを増やしており、感情的なやりとりや退職にも繋がると回答しています。
主な調査結果は以下の通りです。
従来型の人事評価は、特にマネージャーにとって時間の無駄
- 従業員とマネージャーの多くが、人事評価の準備は時間の無駄であると考えている。(従業員:72%、マネージャー:88%)
- マネージャーは人事評価の準備に、従業員1人あたり平均17時間を費やしている。
- 従業員とマネージャーの3分の2近くが、人事評価は時代遅れと考えている。(従業員:64%、マネージャー:62%)
- 従業員の半数以上が、人事評価は仕事に対する影響力はない(59%)または、不必要である(58%)と考えている。
人事評価は男性の方がストレスに
人事評価によるランク付けや数値による評価は、同僚間の競争や感情的なやりとりを生み、ストレスの原因となる。
- 従業員の半分以上が、人事評価によって同僚との競争が生まれた(57%)、直属の上司が気に入った部下をひいきする(61%)と答えている。
- ミレニアル世代の3分の2近く(61%)が、給与と役職が同等であっても人事評価のない会社に転職したいと答えている。
- ミレニアル世代では、34%が人事評価の後に泣き、47%が別の仕事を探し、30%が即座に退職したと答えている。
- 特に男性が顕著にストレスを感じている。男性のうち4人に1人が人事評価の後に泣いている(男性25%、女性18%)。転職を考えた人(男性43%、女性31%)、会社を辞めた人(男性28%、女性11%)ともに女性より男性が多い結果となった。
従業員は人事評価に変化を望んでいる
従業員は頻繁に質の高いフィードバックを受けられるような協力的なプロセスを求めている。
- 大多数の従業員(80%)は数か月かけてまとめられたフィードバックを聞くより、すぐその場でフィードバックを受けることを望んでいる。
- 半数以上の従業員(55%)とマネージャー(66%)が、自分の会社が現行の人事評価を廃止するか、別の制度に変えてほしいと願っている。
- 従業員は、従来型の人事評価を廃止した会社のほうが、柔軟性が高く(46%)、従業員の幸福度も高く(44%)、協力的な企業文化になる(38%)と考えている。
アドビ、独自の人事評価制度である「チェックイン」をオープンソース化
アドビは、従来型の年次の人事評価早くから廃止した企業の一つであり、2012年には独自の評価制度となる「チェックイン(Check-in)」を導入しました。この新しい制度では、従業員とマネージャーが常に対話を行い、その中で明確な目標を決め、何度もフィードバックし合いながら、キャリアアップについて話し合います。
従来型の年次の人事評価を廃止する前は、数値による評価、ランク付け、評価を文書化して提出する厳格な手続きを行っていましたが、「チェックイン」導入後、以前のプロセスで必要だったマネージャーの所要時間を最初の1年間で8万時間(フルタイム従業員40人分)削減しました。従業員数が増加した現在、マネージャーが人事評価にかける時間を年10万時間以上削減していると推定しています。また、従業員に関しては、意欲、定着率が高まり、自らパフォーマンス管理ができるようになりました。
アドビのCustomer and Employee Experience担当エグゼクティブバイスプレジデントであるドナ モリス(Donna Morris)は次のように述べています。「この調査結果は、人事評価が多くの従業員にとっていかに時間がかかり、面倒で、やる気をそぐものであるかを示しています。2012年まで、アドビでも同じ経験をしていました。アドビでは従来型の人事評価を廃止し、代わりに従業員とマネージャーが自ら優先事項を決め、互いにフィードバックを与え、継続的にキャリアアップを考えることを重点目標にしました。その結果、従業員の仕事への意欲が高まり、離職率も下がり、会社の業績も向上しました。」
今年、アドビはwebサイトを開設し、独自の人事評価制度である「チェックイン」をオープンソース化しました。webサイトでは、マネージャーと従業員の対話で使われるワークシートを含む、ツールキットや素材を公開しており、同様の制度を始めたい企業が利用できるようになっています。また「チェックイン」に関するベストプラクティスと詳しいFAQが掲載されているほか、外部のケーススタディへのリンク集もあり、「チェックイン」式のプロセスを始めるための枠組みとなる情報がまとまっています。
オープンソース化された「チェックイン」の詳細は、以下のサイトをご覧ください。
http://www.adobe.com/check-in.html(英語)
『Performance Reviews Get a Failing Grade』レポートについて:
『Performance Reviews Get a Failing Grade(パフォーマンスレビューに不合格判定)』は、人事評価を1回以上経験したことのある米国の会社員1,500人を対象に行ったオンライン調査によるものです。調査期間は2016年11月28日から12月2日まで。調査はアドビの依頼によりGolin社が行いました。当該サンプルの許容誤差は ± 2.5パーセントです。
本調査の詳細は、以下のSlideshareをご覧ください。
※本ブログは、2017年1月11日に米国で発表されたプレスリリースを元に編集しています。