浜渦証言「偽証」認定へ 都議会百条委
東京都の豊洲市場(江東区)への移転問題に関する都議会の調査特別委員会(百条委員会)は6日、非公式の会合を開き、証人喚問した浜渦(はまうず)武生元副知事の証言を「偽証」と認定する方向で最終調整に入った。5日間で計20時間以上を費やした24人に対する喚問では、豊洲市場の用地取得の経緯について真相が解明されなかった。各会派には焦点を浜渦氏の偽証に移すことで、有権者の批判から逃れたいとの思惑がある。
偽証の疑いがあるとされたのは、東京ガスとの用地取得交渉を巡る3月19日の証言。浜渦氏は「私の担当は2001年7月の(東ガスとの)基本合意までで、そこから先は一切触っていない」と述べた。これに対し、部下だった前川燿男(あきお)元知事本局長は、4月4日の喚問で基本合意締結以降も「最高責任者は浜渦氏で、一貫して市場を所管していた」と否定した。
こうした証言に加え、4日の百条委では公明党が、都幹部が03年5月に浜渦氏宛てに提出した土壌汚染対策についての文書を提示し、「『相談にもあずかっていない』という浜渦氏の証言は偽証の疑いが濃厚」と指摘。共産党も同調した。
偽証認定は、百条委と本会議での出席議員の過半数の賛成で可決される。可決されると議会は捜査当局に告発する。都議会局によると、記録では百条委で告発に至った事例は確認できない。05年には副知事だった浜渦氏が「やらせ質問」の依頼を否定して偽証認定されたが、直後に更迭されたため告発は見送られた。
各会派が浜渦氏の偽証認定を急ぐ背景には、批判の矛先が議会に向けられることを避けたいとの意向がある。百条委の調査には約1500万円の公費が投入された。だが「水面下の交渉」とされた用地取得までの経緯は明らかにならず、「7月の都議選を前に『都議会は何をやっているんだ』と言われかねない」(自民都議)との危機感が募っている。
喚問では石原慎太郎元知事の「交渉は浜渦氏に一任していた」との証言も元部下に否定されたが、各会派に石原氏を偽証に問おうとする動きは出ていない。ある都幹部は「過去に議会と対立した浜渦氏をスケープゴートにして幕引きを図ろうとしているのでは。石原氏では影響が大きすぎる」と見る。
6日の会合では26日の百条委理事会までに、各会派が偽証の根拠をまとめることになった。一方、浜渦氏は10日に記者会見を開き、偽証を否定する見込み。
都議会の姿勢について、地方自治に詳しい江藤俊昭・山梨学院大法学部教授(地域政治論)は「百条委の目的は都政に関わる事項の責任を明確にすることで、調査結果もまとまらないうちに偽証に問うかどうか議論するのは本末転倒だ。『政争の具にしている』とのそしりを免れない」と指摘している。【森健太郎、芳賀竜也】