大韓民国の大統領はいわば非常に恐ろしく危険な地位だ。ところがこの大統領になろうと各党では今日も激しい競争が繰り広げられている。誰が大統領になるかは今のところわからないが、候補者たちは誰もが「自分だけは違う」と信じているはずであり、またそうあってほしいものだ。しかし誰でも大統領府に入ると政治家ではなく権力者になるのが韓国の風土だ。この風土は大統領1人の意志だけでは到底変えられないものだ。
朴前大統領の弾劾と逮捕は「大統領の悲劇の時代」の最後にしなければならない。どの党の候補者からも「当選すればあれをして上げます、これをして上げます」といった甘い公約は何度も聞いた。しかし大統領の弾劾によって行われる今回の選挙では、全ての候補が自ら構想する新しい政治の仕組みとそのビジョンを具体的に提示し、それについて国民の審判を受けなければならない。今のところほぼ全ての候補が2018年6月の憲法改正を約束しているが、実際に改憲によって大統領の権力を制度的に分散する以外に方法はないだろう。今回の大統領選挙とは関係なくこの議論は今後も続けなければならず、できれば投票日前にその試案だけでも国民に提示してほしいものだ。