やすらぎの郷 #2 2017.04.04

任せてください。
皆さん頑張りましょう!セカンドステージ…。
孫も2人もいることだし。
サードステージも頑張りましょう。
サードステージも頑張りましょう。
とある海岸にかつてテレビや映画で活躍したスターたちが入居するやすらぎの郷があります
そこで繰り広げられる人間模様は時にもの悲しく時に滑稽時に感動的です
スターたちが年齢を重ねてたどり着いた海辺の老人ホーム
果たして何が待ち受けているのでしょう?
(菊村栄)
50年連れ添った妻が死んだ
テレビで活躍した女優だった
5年前から認知症を患い老老介護も限界に達した時見透かしたようにスッと逝ってくれた
残酷な言い方だが正直肩の荷が下りた気がした
私の名前は菊村栄
職業は脚本家
テレビの創成期からドラマを書き60年近くやってきた
肩の荷が下りたとひどい事を言ったが私は妻をこよなく愛していたし妻に死なれて書く気を失った
妻と並んでドラマを見る事が私のこれまでの生き甲斐だったからだ
見たよこの間の『大地の祭』。
おいもうその話はやめてくれ。
Jプロにいいようにいじられちまったよ。
でも視聴率そこそこいったみたいじゃないか。
そこそこって言ったって12パーセントだよ。
ゴールデンタイムの12パーなんてのは昔でいやあ打ち切り寸前だよ。
大体世の中が変わっちまって高齢化社会になっちまってんだ。
おまけに若い者はほとんどテレビ離れを起こしてる。
ところがテレビ局だけはいつまでたってもゴールデン神話から抜けだそうとしないんだ。
一体テレビっていうのはどこへ行っちまうのかね?実はね…。
ん?生活変える事にしたんだ。
変えるって?フフッ…。
この事はあまり人に知られたくないから誰にも言わないでくれるか?うん。
東京の家息子に譲ったんだ。
東京を離れるのか?ああ。
どこ行くんだ?老人ホームだ。
老人ホーム?うん…。
もう契約したのか?ああ。
どこの?やすらぎの郷だ。
やすらぎ…やすらぎの郷!?実はあさってそっちへ移る。
いやいやいや…ちょっとちょっと待てよその話…。
ああいやいやいや…。
侘助。
あいよ。
上空いてるか?移る?うん。
ああいいよ。
やすらぎの郷っていうのはあの…時々耳にするやすらぎの郷か?ああ。
噂だけだと思ってたのに本当にあるんだ。
ああ。
(中山)テレビ界に功績のあった人間だけが入れる老人ホーム。
なあ…ちょっとそれ最初からゆっくり詳しく教えてくれないか?まずその…どういういきさつからそういう事になったんだよ?いやそれより前にやすらぎの郷なんて本当にあるのか?どういう線からコネがついたんだ?どういう連中が経営してるんだ?無料っていうのはマジの話か?
(笑い声)そんなにいっぺんにいっぱい聞くなよ。
俺だってまだ全体像をつかんでるわけじゃないんだ。
文化庁とか文科省とか…それともテレビだから総務省とか政府の何かが絡んでるか?そんな国かよ。
じゃあどこかの大手企業とか…。
いやそれはないな。
中山…。
一つだけ教えてやるよ。
うん。
望んでも入れるところじゃないんだ。
あくまで向こうから指名してくるんだ。
それもかなり厳しい審査委員会があるらしくてな。
その委員会を通過した者だけに極秘に向こうから誘いがかかるんだ。
その誘いも実にさりげなくなんの事か最初はわからない形でだ。
その審査の基準っていうのは一体なんなんだ?テレビドラマの世界に対してこれまで真面目に尽くしたかどうかだ。
テレビに真面目に取り組んで少なくとも一時期視聴者の心を洗う事があったかどうかという事だ。
それが審査の基準だそうだ。
それなら俺にも資格があるな。
いや…あんた駄目だよ。
どうして?だってあんた局からサラリーをもらってたろ。
かつて一時期でも局にいた者は元々資格を持てない事になってるそうだ。
なんで?テレビを今のようなくだらないものにしたのはテレビ局そのものだからさ。
俺は違うぞ!知ってんだろ?俺は違うぞ俺は。
テレビの禄をはんだ者は局に食わしてもらったんだから局と同罪に扱われるわけだ。
理不尽だよ。
(玉子)失礼します。
はあ…。
はいお待ちどお。
おお。
いやありがとう。
ごゆっくり。
うん。
ハハッ…そうむくれるなよ。
少なくともあんたには退職金や年金があるだろう?ところが俺たちフリーの人間にはそんな保証は何もないのさ。
特に役者なんか見てみろよ。
旬の時はチヤホヤされて旬が過ぎればはいさよならだ。
大道洋子思い出してみろ。
一時はあんなに売れてたのに自分の部屋で死体で見つかったのは死後1週間経ってからだぜ。
どうだ?であんたに誘いが来たのはいつなんだ?中山。
うん?話していい事といけない事があるんだ。
だからあるとこまでしか俺もしゃべらないし聞いた事はすぐ忘れちまってくれ。
わかった。
この話が俺んとこに来たのは…。
律子の認知症がどんどん進んで徘徊を始めるようになってな…。
息子や孫娘は時々見に来てくれたけど嫁は全然来てくれなかった。
俺はちょうど連ドラを書いてた時でな。
(栄の声)打ち合わせに出る事も出来なかったよ。
ちょっと留守にするとふらふら表へ出かけちまうんだ。
近所の奥さんたちが連れ戻してくれた事もあったし交番の世話にも何度かなった。
一時なんか吉祥寺の向こうまで行っちまって井の頭線の線路に入って危うくひかれかけた事もあったんだ。
結局俺は連ドラを降りてな律子とつきっきりでいる事にしたんだ。
あいつはどんどん人が変わっちまって昔の律子とは別人になっちまった。
ある日昔のあいつがブレークした…。
あっそうだ。
あれあんたの演出だったよな?『陽だまりの時』。
あのDVDをあいつに見せたんだよ。
あいつ昔の自分を見て自分の事がわからなかったんだ。
ついでに俺の顔をまじまじと見てどちらさんでしょう?っておびえたように逃げようとしたんだぜ。
あの晩…初めてマジでこいつを殺して死のうかと思ったよ。
フフッ…。
だってそうだろう?俺たちだってそろそろやばい歳なんだ。
万一俺に何かあったらこいつ1人でどうするんだろうって。
そんな時突然電話が入ったんだ。
女性の声で「名倉と申します」って。
どちらの名倉さんですか?って聞いたら加納英吉の娘だって言うんだ。
加納英吉?そうあの加納さんさ加納プロの。
(中山)うんうん。
その人その娘さんだって言うんだよ。
しっかりしたしゃべり方のきれいな声だった。
やすらぎの郷ってご存じですか?っていきなり切り出したんだ。
奥様は大変な状態らしいですけどもよかったら先生もご一緒にうちへお入りになりませんか?うちは介護病棟もありますし介護する人間も常駐しております。
ですからいつでも歓迎します。
費用も全くかからないって言うんだ。
いやあ狐につままれたような気だったよ。
なんだか詐欺にでも遭ってるんじゃないかと思った。
突拍子もない話だからなあ。
大体そのやすらぎの郷って話はさ俺も時々耳にした事があったけど作り話だと思ってたんだよ。
今どきそんな夢みたいな話現実にあるわけないからな。
誰かがそういうものがあったらいいなって作ったおとぎ話だと思ってたんだ。
ところが翌日俺のところへその名倉って女性が訪ねて来た。
きちんとした身なりのう〜ん…50前後のきれいな人だった。
はあ…。
俺と律子のこれまでの仕事が細かいところまで調べ上げられてた。
ちょっと待ってくれ。
ああ?その話もう一度ゆっくり話してくれないか?こっちもなんか狐につままれたような気分だよ。
戦後の日本を明るくしてくれたテレビ。
それに賭けてくれた現場の人たちに自分がその恩に報いたいっていうのがどうも加納さんの考えらしいんだ。
(中山)夢のような話だね。
2017/04/04(火) 12:30〜12:50
ABCテレビ1
やすらぎの郷 #2[解][字]

倉本聰が同世代の大人たちに贈る、全く新しい帯ドラマ。物語の舞台は、かつてテレビ界に功績のあった者だけが入れる老人ホーム。名優がスターを演じる虚実入り混じった物語

詳細情報
◇番組内容
居酒屋「侘助」で、脚本家の菊村栄(石坂浩二)は親友の中山(近藤正臣)に、伝説の老人ホーム『やすらぎの郷』への入居の経緯を語り始める。
◇出演者
石坂浩二
風吹ジュン、小松政夫、近藤正臣
◇作
倉本聰
◇音楽
島健
◇演出
藤田明二(テレビ朝日)
◇主題歌
中島みゆき『慕情』(株式会社ヤマハミュージックコミュニケーションズ)
◇スタッフ
【チーフプロデューサー】五十嵐文郎(テレビ朝日)
【プロデューサー】中込卓也(テレビ朝日)、服部宣之(テレビ朝日)、河角直樹(国際放映)
◇おしらせ
☆番組HP
 http://www.tv-asahi.co.jp/yasuraginosato/

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
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