北朝鮮 発射は新型中距離弾道ミサイルか

北朝鮮 発射は新型中距離弾道ミサイルか
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韓国軍は、北朝鮮が5日朝、東部のハムギョン(咸鏡)南道シンポ(新浦)付近から、弾道ミサイル1発を発射したと発表しました。このミサイルについてアメリカ太平洋軍は、新型の中距離弾道ミサイルの可能性があるとして、引き続き発射の詳しい状況などについて分析を進めています。
韓国軍合同参謀本部は、北朝鮮が、5日午前6時42分ごろ、東部のハムギョン南道、シンポ付近から、弾道ミサイル1発を発射したと発表しました。弾道ミサイルは、60キロ余り離れたところに落下したということで、韓国軍はその種類などについてアメリカ軍と連携して詳しい情報の収集を急いでいます。

この弾道ミサイルについて、アメリカ太平洋軍は、およそ9分間飛行して日本海に落下したとしたうえで、初期段階の分析結果では、新型の中距離弾道ミサイル「KN15」の可能性があると見ているということです。アメリカ軍では、引き続き発射の詳しい状況などについて分析を進めています。

弾道ミサイル発射の狙いは

北朝鮮が先月に続いて再び弾道ミサイルを発射した背景には、北朝鮮に対する政策の見直しを進めるアメリカのトランプ政権に、みずからの弾道ミサイル技術が向上していると印象づけるとともに、北朝鮮への対応をめぐる国際社会の連携を強くけん制する狙いがあると見られます。

北朝鮮は、アメリカが最新の迎撃ミサイルシステム「THAAD」の韓国への配備を進めるとともに、先月1日からおよそ2か月間の日程で韓国と合同の軍事演習を行っていることに反発しています。

北朝鮮は、ことし2月、SLBM=潜水艦発射弾道ミサイルを地上配備型に改良した、新しい中距離弾道ミサイル「北極星2型」の発射実験を行いました。先月6日には、在日アメリカ軍への攻撃を想定した訓練だとして、北西部ピョンアン北道のトンチャンリ付近から日本海に向けて、中距離弾道ミサイルの「スカッドER」4発を同時に発射しました。さらに先月22日には、東部のウォンサン付近からミサイル1発の発射を試みて失敗しました。

北朝鮮への対応を話し合うため先月、日本、韓国、中国を訪問したアメリカのティラーソン国務長官は、日米外相会談のあとの記者会見で、「これまでの20年間のアメリカの政策は失敗で、北朝鮮に核や弾道ミサイルの開発を許した。新たなアプローチが必要だ」と述べました。北朝鮮としては、政策の見直しを進めるアメリカのトランプ政権に、みずからの弾道ミサイル技術が向上していると印象づけるとともに、今月6日と7日に行われるアメリカのトランプ大統領と中国の習近平国家主席の初めての首脳会談に合わせる形で発射することで、北朝鮮への対応をめぐる国際社会の連携を強くけん制する狙いがあると見られます。

また今月は、11日にキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長が最高指導者になって5年、15日に祖父キム・イルソン(金日成)主席の生誕105年、それに25日に北朝鮮軍の創設85年と、相次ぐ節目を控えており、これに向けてキム委員長のさらなる権威づけや国威発揚を図りたい思惑もありそうです。

北朝鮮 核・ミサイル開発姿勢鮮明に

北朝鮮は去年、1月と9月の2回にわたって核実験を強行したほか、事実上の長距離弾道ミサイルに加えて、射程の異なるさまざまな弾道ミサイルの発射を繰り返し、自制を求める国際社会の声を無視して核・ミサイル開発を続ける姿勢を鮮明にしてきました。

キム・ジョンウン朝鮮労働党委員長が去年3月に、核弾頭の爆発実験とさまざまな種類の弾道ミサイルの発射実験を準備するよう関係部門に指示したと、国営メディアで伝えられたあと去年、発射が確認されたのは、新型の中距離弾道ミサイル「ムスダン」、SLBM=潜水艦発射弾道ミサイル、それに中距離弾道ミサイル「ノドン」や、短距離弾道ミサイル「スカッド」などで、その数は20発余りに上りました。

また国営メディアは、ICBM=大陸間弾道ミサイルと見られるミサイルを視察するキム委員長や、弾道ミサイルが大気圏に再突入した場合を想定した模擬実験の写真を公開したほか、去年4月には新型のICBMのエンジンの燃焼実験に成功したと発表しました。さらに9月、事実上の長距離弾道ミサイルに使う新型エンジンの燃焼実験に成功したと発表し、その際、立ち会ったキム委員長が「人工衛星の発射準備をいち早く終わらせ、人民に勝利の知らせを届けよう」と述べ、去年2月に続く事実上の長距離弾道ミサイルの発射準備を急ぐよう指示したと伝えられました。ことしの元日には、キム委員長が、ICBMの発射実験の準備が「最終段階に入った」と演説して発射実験の可能性を示唆したほか、2月にSLBM=潜水艦発射弾道ミサイルを地上配備型に改良した新しい中距離弾道ミサイルを発射しました。

そして、先月6日、北朝鮮は「在日アメリカ軍基地への攻撃訓練だ」と称して、北西部ピョンアン北道のトンチャンリ付近から日本海に向けて、中距離弾道ミサイル「スカッドER」4発を同時に発射したのに続き、先月19日に、弾道ミサイルに使用する新型の大出力エンジンの燃焼実験を地上で行って成功したと発表し、みずからのミサイル技術を誇示していました。さらに先月22日には、東部のウォンサン(元山)付近からミサイル1発の発射を試みて失敗し、関係国はさらなる発射への警戒と監視を強めていました。

北朝鮮のSLBM開発

北朝鮮が開発を進めているSLBM=潜水艦発射弾道ミサイルは、発射の兆候を把握するのが難しいうえ、去年8月の発射では、飛距離がこれまでで最も長いおよそ500キロに達し、北朝鮮は、ミサイル技術が向上していると強調しています。

北朝鮮は、1990年代はじめに入手した旧ソビエト製のSLBMの改良を進めてきたとされ、おととし5月、SLBMの水中からの発射実験に初めて成功したと発表しました。飛距離は100メートル程度にとどまったと見られ、国営テレビは、その時のものと見られる映像をおととし6月に放送したほか、去年1月には、別の発射実験と見られる映像を放送しました。SLBMの発射実験はその後も繰り返され、4月には、東部ハムギョン南道のシンポ付近の日本海で、SLBMと見られる1発が発射されておよそ30キロ飛行し、北朝鮮は、「固体燃料エンジンのSLBMの発射実験に再び成功した」と発表しました。さらに7月にも、同じシンポ付近の日本海で、SLBMと見られる1発が発射されましたが、韓国軍は、潜水艦からの射出に成功したものの、飛んだのは数キロで、飛行に失敗したとする見方を示していました。しかし、8月の発射実験では、飛距離がこれまでで最も長いおよそ500キロに達し、北朝鮮は、翌日に映像を公開してミサイル技術が向上していると強調しました。

一方、国際的な軍事情報を分析している「IHSジェーンズ」は、去年7月、衛星写真を分析した結果、北朝鮮がシンポから南に2キロ余り離れた場所に、潜水艦2隻を収容できるドックを新たに建設していることを明らかにしました。また、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の研究グループは9月、北朝鮮東部にある造船所の衛星写真の分析結果を公表し、北朝鮮がこれまでより大型の新たな潜水艦の建造に着手した可能性があると指摘していました。

北朝鮮のSLBMについて、韓国国防省は去年8月、「遅くても3年で実戦配備される可能性がある」という見方を示しました。さらに去年12月、北朝鮮がSLBMの発射技術の試験を陸上の実験施設で行ったことがアメリカの監視活動で確認されたのに続いて、ことし2月には、SLBMを地上配備型に改良した、新しい中距離弾道ミサイルを発射したことから、SLBM技術の向上や応用に、関係国の警戒が一段と強まっています。

韓国「国際社会の脅威」

韓国外務省のチョ・ジュンヒョク(趙俊赫)報道官は、5日の記者会見で、「国連の安全保障理事会による制裁決議への明らかな挑戦であり、朝鮮半島だけでなく国際社会全体の平和と安全に対する脅威だ」と強く非難しました。そのうえで、「無謀な挑発を行えば、国際社会が北に対する制裁をさらに強化することになり、結局は北の自滅を早めるだけだ。アメリカとの間で抑止力を高め、揺らぐことなく安全保障を守っていく」として、同盟国アメリカとの緊密な連携を強調して、北朝鮮をけん制しました。