アンモニア分子の図。[写真拡大]
ハーバー・ボッシュ法というのをご存知だろうか?水素と窒素を反応させ、アンモニアを作る化学的技法である。アンモニアを何にするかというと、主には肥料を作る。「空気からパンを作る技術」とも呼ばれ、これが登場したことにより人類の歴史が新たなステージに到達したとさえ言われる、史上に最も重要な発明の一つだ。1906年の登場から長く現役だったのだが、効率的にこれを超えるかもしれない新たなアンモニア合成技法が、東京大学と九州大学によって開発されたという。
ハーバー・ボッシュ法では、鉄などを主体とした合成触媒を用いる。新たな技法では、モリブデン窒素錯体を用いる。このモリブデン窒素錯体というのは自然に存在するようなものではなく、今回の研究のために新たに分子構造から設計したものであるという。窒素をアンモニアに変換する反応を引き起こすのに適したPCPピンサー配位子を持つ。常温・常圧下で驚異的な効率のアンモニア合成を行うことができ、また寿命も長いという。
今回開発されたモリブデン窒素錯体は、過去に報告されているあらゆるアンモニア合成触媒を超える合成効率を示すことに成功している。
さて。そもそも、アンモニアが何のために必要なのか、という話をしよう。アンモニアは窒素原子1つと水素原子3つからなる。問題は窒素である。窒素はタンパク質にも核酸にも含まれている。生体にとって必要不可欠だ。地球大気の8割ほどを占めるというくらいで、ありふれてはいるのだが、気体の窒素は活性が極めて低い。そこで、窒素を活用するためには、窒素の活性が高まるアンモニアの状態にすることが必要なのである。
かつてマルサスという学者が、『人口論』という書の中で、「農業生産力は人口増大幅を越えることができないから、飢餓は必然である」と説いたことがある。ハーバー・ボッシュ法は、これをひっくり返した。人類の農業生産力は、ハーバー・ボッシュ法の登場によって革命的に飛躍したからである。
とはいえこれ以上詳しく論じていくと近現代史の総覧になってしまうので、このあたりにしておこう。今回の新しいアンモニア合成触媒についての研究は、「Nature Communications(ネイチャー・コミュニケーションズ)」オンライン版で公開されている。(藤沢文太)
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